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業務提供誘引販売取引とは何か? 問題点や契約をやめる方法を解説
「仕事を提供する」と持ちかけて消費者を勧誘し、商品やサービスの契約をさせる手法は、法律では「業務提供誘引販売取引」と呼ばれ、法律によって消費者を保護する制度が設けられています。法律上、契約取り消しや返金を求められる可能性もあるため、早めの対応が重要です。
本コラムでは、業務提供誘引販売取引の仕組みや典型的なトラブル事例、クーリングオフをはじめとする契約をやめる方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、業務提供誘引販売取引とは?問題になりやすい契約形態
業務提供誘引販売取引は、一見すると通常の求人募集や副業募集のように見えるため、問題のある契約だと気づかないまま申し込んでしまうケースがあります。
ここでは、業務提供誘引販売取引の仕組みや、トラブルになりやすい理由について解説します。
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(1)業務提供誘引販売取引とは
業務提供誘引販売取引とは、事業者が「仕事を提供する」「収入が得られる」などと勧誘し、その業務に利用する商品や役務(サービス)を購入する契約をさせる取引形態をいいます。
たとえば、- 「動画編集の仕事を紹介する」
- 「データ入力業務を継続的に発注する」
- 「在宅ワークで月20万円の安定収入が得られる」
などと勧誘したうえで、その動画編集の仕事やデータ入力業務、在宅ワークなどに利用する教材や情報商材、専用ソフト、サポートサービス、オンライン講座などの契約を勧めるケースが典型例です。
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(2)トラブルになりやすい理由
業務提供誘引販売取引が問題となりやすいのは、消費者の「副収入を得たい」「在宅で働きたい」という心理につけ込んだ勧誘が行われることがあるためです。
勧誘時には魅力的な条件が提示されたにもかかわらず、契約段階になって、- 「仕事を始めるためには教材購入が必要」
- 「サポート契約への加入が必要」
- 「資格取得講座を受けてもらう必要がある」
などとして、高額な契約を求められるケースがあります。
消費者としては、「仕事をすればすぐに元が取れる」と考えて契約してしまいがちですが、- ほとんど仕事が紹介されない
- 条件が厳しく報酬が得られない
- 「基準を満たしていない」などとして業務を発注されない
- 教材の内容が説明と大きく異なる
といったトラブルに発展することがあります。
結果として、高額なローンやクレジットの支払いだけが残ってしまうトラブルも発生しています。 -
(3)業務提供誘引販売取引によくある具体例
業務提供誘引販売取引では、次のようなケースがみられます。
① データ入力・副業商法
「在宅で簡単に稼げるデータ入力の仕事がある」などと勧誘し、その業務に必要であるとして、パソコンや専用ソフトを契約させる
② 情報商材・SNS副業商法
「SNS運用で稼げる」「AIを使った副業で高収入を得られる」などと説明し、情報商材やオンラインサロン、コンサルティング契約を結ばせる
③ 内職・技術習得商法
「アクセサリー制作」などの内職を紹介すると勧誘し、仕事を始める条件として、通信講座や教材の購入を求める
④ モニター商法
「商品の感想を投稿すれば報酬を支払う」などと勧誘し、モニター登録の条件として、商品購入をさせるいずれのケースにも、「仕事で収入を得られる」と説明しながら、そのために必要であるとして高額な商品やサービスの代金の負担を求めるという共通点があります。
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(4)特定商取引法が定める3つの成立要件
業務提供誘引販売取引に対しては、特定商取引法という法律で規制と消費者保護が設けられています。
具体的には、次の3つがそろう場合に、業務提供誘引販売取引にあたる可能性があります。① 業務提供利益
「仕事を紹介する」「毎月一定額の収入がある」など、購入する商品やサービスを利用する業務に従事することで利益を得られると説明して勧誘すること
② 特定負担
教材費、登録料、システム利用料など、利益を得る事業をするのに必要な商品やサービスであるとして、消費者にその購入代金や利用料などの金銭的負担をさせること
③ 商品・役務の提供
利益を得る事業をするのに必要であるとして商品の購入やサービス契約を結ばせること
2、業務提供誘引販売取引の契約をやめる方法
契約をしてしまった場合でも、特定商取引法などの法律に基づくクーリングオフや契約取り消しによって、契約をやめられる可能性があります。
ここでは、契約をやめるための代表的な方法について解説します。
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(1)クーリングオフ制度の仕組みと期限
業務提供誘引販売取引は、特定商取引法によってクーリングオフが認められています。
クーリングオフとは、一定期間内であれば、理由を示すことなく、消費者が一方的に申し込みを撤回し、契約を白紙にすることができる制度です。
特定商取引法で規制する取引形態によってクーリングオフ期間は異なりますが、業務提供誘引販売取引の場合は、法律で定められた事項が記載された契約書面を受け取った日から20日間とされています。
クーリングオフのポイントは、以下のとおりです。① 起算日
法律で定められた事項が記載された契約書面を受け取った日を1日目として数えます。
② 行使の効果
期間内であれば、理由を問わず契約をやめることができます。
違約金などを支払う必要はなく、返金を求めることも可能です。
③ 手続き方法
クーリングオフを行使する旨を記載した書面の送付または電磁的記録(メール、ウェブの専用フォームなど)の送信により行うことができます。
クーリングオフを行ったことを後から証明できるよう、証拠を残しておくことが重要です。
書面で送る場合は、特定記録郵便や簡易書留など、発送履歴が確認できる方法を利用しましょう。また、送付した書面のコピーや、メール・フォーム送信時のスクリーンショットなども保存しておくと安心です。
クレジット払いや分割払いを利用している場合には、販売業者だけでなく、クレジット会社にもクーリングオフを行った旨を早めに連絡しましょう。 -
(2)クーリングオフ期間が過ぎた場合は「取り消し」を検討
法律で定められた事項が記載された契約書面を受け取ってから20日以上が経過している場合でも、事業者の勧誘方法に問題があれば、契約を取り消せる可能性があります。
たとえば、特定商取引法では、次のような勧誘行為が禁止されています。① 不実告知(事実と異なる説明)
- 「スキルに関わらず確実に稼げる」
- 「発注が途切れることはない」
② 不利益な事実の不告知
- 「業務の発注時には厳しい審査がある」
- 「実際には業務発注の実績が乏しい」
このような勧誘によってメリットを誤認し、契約してしまった場合には、契約取り消しを主張できる可能性があります。
取り消し権にも期間制限があり、一般的には、「誤認に気づいた時から1年間」または「契約締結時から5年間」のいずれか短いほうとされています。 -
(3)契約書に不備がある場合は、クーリングオフできる可能性も
クーリングオフの20日間という期間は、法律上必要な事項が適切に記載された契約書面を受け取った場合に進行します。
そのため、事業者が交付した契約書面に不備がある場合には、そもそもクーリングオフ期間が進行していない可能性があります。
たとえば、次のようなケースです。- クーリングオフの方法や期間が適切に記載されていない
- 提供される業務内容の記載が曖昧
- 商品や役務の内容、価格、支払い時期などが十分に記載されていない
このような不備がある場合には、契約から日数が経過していても、クーリングオフを主張できるケースがあります。
契約書の内容や取引の経緯によって結論が変わることもあるため、安易に判断せず、書面をよく確認し、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
3、業務提供誘引販売取引に該当しないケース
トラブルの中には、法律上の定義に当てはまらないケースも存在します。
ここでは、業務提供誘引販売取引に該当しない代表的な事例について解説します。
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(1)金銭的負担がないケース
事業者から仕事を紹介されるはずだったにもかかわらず、実際には仕事が紹介されなかった場合でも、教材費や登録料などの金銭的負担をしていないケースでは、業務提供誘引販売取引に該当しない可能性があります。
たとえば、- 「在宅でのデータ入力募集」に応募したが、仕事が紹介されなかった
- 無料登録をしたものの、案件が一切提供されなかった
といったケースです。
これらは悪質な求人募集など別の問題が疑われることもありえますが、商品購入やサービス契約などの負担をさせておらず、業務提供誘引販売取引には当てはまらないと考えられます。 -
(2)業務提供利益がないケース
資格取得スクールやスキル講座を受講したものの、期待したように仕事につながらなかったケースです。
たとえば、「就職や転職に有利」とか「独立や副業に役立つ」と説明されたケースでも、事業者側が「仕事を提供する」「収入を保証する」とまでは説明していないケースがあります。
このような場合には、単なる学習サービスや就職支援と評価され、業務提供誘引販売取引には該当しない可能性があります。 -
(3)他の法律による救済がある場合も
仮に業務提供誘引販売取引に該当しない場合でも、泣き寝入りしなければならないとは限りません。
事業者の説明内容や勧誘方法によっては、消費者契約法など別の法律を根拠に、契約取り消しや返金を求められるケースもあります。
「自分のケースは対象外かもしれない」と自己判断せず、契約書や勧誘時の資料を保管したうえで、消費生活センターや弁護士へ相談することが重要です。
4、業務提供誘引販売取引のトラブルに遭った場合の相談先
「契約をやめたいが、事業者と直接やり取りをするのは不安」「相手の説明が強引で、自分だけでは対応できない」と感じる方もいるでしょう。
そのような場合は、消費生活センターや弁護士へ相談することをお勧めします。
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(1)消費生活センター
身近な相談先として、各地の消費生活センターや国民生活センターがあります。
消費者ホットライン「188」に電話すると、最寄りの相談窓口につながります。
消費生活センターのメリットは、無料で相談できる点です。
同種の被害事例を踏まえたアドバイスを受けられる可能性があるほか、事業者との間に入って「あっせん」を行ってもらえる場合もあります。
一方で、消費生活センターは中立的な立場の機関であり、相談者の代理人として交渉するわけではありません。
そのため、事業者が返金や解約に応じない場合には、解決が難しくなるケースもあります。 -
(2)弁護士
返金交渉を本格的に進めたい場合や、事業者とのやり取りに不安がある場合には、弁護士への相談が有効です。
弁護士へ相談するメリットとしては、- 業務提供誘引販売取引に該当するか法的に確認できる
- クーリングオフや契約取り消しなどの法的判断や具体的な対応方法について相談できる
- 事業者との交渉を代理してもらえる
といった点が挙げられます。
特に、弁護士が代理人として交渉することで、事業者側の対応が一変するケースも少なくありません。
また、弁護士が交渉の窓口となるため、事業者からの連絡や請求への精神的な負担の軽減にもつながります。
もっとも、弁護士へ依頼する場合には費用が発生します。
被害額によっては、費用倒れになる可能性もあるため注意が必要です。
5、まとめ
業務提供誘引販売取引とは、「仕事を渡す」「収入を得られる」などと勧誘し、そのために商品やサービス購入の契約をさせる取引形態です。
問題のある契約をしてしまった場合でも、クーリングオフや契約取り消しによって解決できる可能性があります。
また、業務提供誘引販売取引に当たらない場合でも、消費者契約法など別の法律によって対応できるケースもあります。
なお、特定商取引法では、業務提供誘引販売取引以外にも、訪問販売や電話勧誘販売、連鎖販売取引(マルチ商法)など、消費者トラブルが生じやすい取引形態が規制されています。
「自分のケースは対象外かもしれない」と自己判断せず、少しでも不安を感じた場合には、契約書や勧誘時の資料を保管したうえで、消費生活センターや弁護士へ早めに相談しましょう。
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