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預託法では原則禁止! 販売預託商法を弁護士が解説。
このような被害を防ぐため、現在は「預託法(預託等取引に関する法律)」の改正により、販売預託商法は原則として禁止されています。総理大臣の確認を受けた場合のみ例外的に事業は可能ですが、現時点で確認を受けた業者はおらず、実質的に新たな販売預託商法は行えない状態です。
ただし、預託法の規制に抵触しないようなスキームを利用するケースもあるため、「だまされたかもしれない」と感じたときはすぐに専門家に相談することが大切です。今夏は、販売預託商法の基本スキームや過去の有名な事件、弁護士や相談窓口ができることなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、販売預託商法とは
販売預託商法とは、商品を買わせた上で事業者がその商品を預かり、運用益やレンタル料を支払うなどと説明する取引手法のことです。高利回りが得られると強調される一方、その実態が不透明であることから、これまで多くの消費者被害を生んできました。
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(1)販売預託商法の基本スキーム
販売預託商法(オーナー商法)とは、消費者が商品を購入し、その商品を業者に預けることで、業者の「運用益」や「レンタル料」という名目で収益が得られると説明される商法です。
一見すると投資商品のように見えますが、商品を購入する形式を取るが特徴です。販売業者は、「あなたは商品を買うだけでいい」「あとは業者が運用するので毎月配当が得られる」「一定期間後には元本を保証する」といった魅力的な文句で勧誘します。
しかし、実際には- 商品の運用実態がない
- 新規契約者からの資金を既存の配当に回す自転車操業
- 利回り、元本返済が虚偽
といったケースも多く、過去に大規模な消費者被害が頻発しました。
このような問題が繰り返された結果、現在は預託法によって販売預託商法は原則禁止となっています。 -
(2)過去の有名な事件
販売預託商法は、過去に多数の大規模トラブルを引き起こしており、いずれも「商品を預けて配当が得られる」という共通の手口を持ちます。以下では、販売預託商法に関する代表的な事件を紹介します。
① ジャパンライフ事件|磁気ネックレスのオーナー商法
消費者に磁気治療器具を高額で販売し、「会社が預かってレンタルするので利回りが発生する」と説明していた事案です。
実態は新規契約者の資金を既存契約者へ配当する自転車操業で、最終的な被害総額は2,000億円規模とされています。
② 安愚楽牧場事件|和牛オーナー商法
消費者に「黒毛和牛のオーナーになれば高利回りが得られる」と勧誘していた事案です。しかし、牛の頭数と販売契約数が実態と懸け離れており、事業が破綻し、約7〜8万人が被害を受ける大規模事件になりました。
上記のように、「商品を買って預ければもうかる」とする商法で大規模被害が続発したため、国は、従来の規制では不十分と判断し、預託法を改正して規制を強化しました。
次の章では、この預託法について、禁止される行為や被害回復方法を詳しく説明します。
2、預託法とはどんな法律? 禁止されている行為や被害回復方法とは
販売預託商法は、現在、預託法により原則として禁止されています。確認手続きを受けた上での運営が可能ですが、現在認められているものはありません。
以下では、預託法の概要と禁止されている行為、被害回復方法について説明します。
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(1)預託法の概要|販売預託商法は原則禁止
預託法とは、販売預託商法による消費者被害を防ぐために制定された特別法です。
販売預託商法が社会問題化し、大規模な被害が繰り返されたことを受けて、令和4年に改正が行われ、規制が一段と強化されました。① 販売預託商法は「原則禁止」
預託法では、事業者が商品を販売し、それを預かり運用して利益を分配するというスキーム(=販売預託取引)を原則として禁止しています。
これは、消費者が「毎月一定の収益が得られる」「元本保証」などと誤解しやすく、過去の事件のように、実際には運用実態がなかったケースが多いためです。
② 例外:消費者庁の確認を受けた事業のみ可能
預託法では、特定の要件を満たし消費者庁の「確認」を受けた場合に限り、販売預託取引を実施することができます。
しかし現状、確認を受けた企業は1社も存在しません。
そのため、事実上、販売預託商法は全面的に実施できない状況となっています。 -
(2)預託法で禁止されている行為
預託法では、消費者を守るため、販売預託商法に関して以下の行為を禁止しています。
① 販売を伴う預託等取引(販売預託)の原則禁止
もっとも重要な禁止行為は、商品を販売し、同じ業者や関連業者がその商品を預かって運用し、配当を出すという取引自体を原則禁止としている点です。
例外的に、消費者庁の確認があれば可能ですが、現在、確認を受けた業者はゼロですので、実質的に全面禁止となっています。
② 不当な勧誘行為の禁止
販売預託取引に関連して、以下のような勧誘行為も禁止されています。- 重要事項に関する不実告知(配当額、運用方法、元本保証の有無などでうそをつく)
- 故意の不告知(破綻寸前であるなど都合の悪い事実を隠す)
- 威迫・困惑行為(強引に契約を迫る、脅す、精神的な圧力をかける)
これらは販売預託商法で典型的に行われるため、厳格な規制が設けられています。
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(3)預託法による被害回復方法|クーリングオフ・中途解約
預託法は、消費者を守るため、以下の救済制度を用意しています。
① クーリングオフ制度
契約から一定期間内であれば、消費者は、理由を問わず契約を解除できます。
違約金も不要で、支払い済みの代金も返金されます。
② 中途解約制度
クーリングオフ期間を過ぎても、消費者は、預託契約をいつでも中途解約できます。
中途解約の場合には、違約金が発生する可能性がありますが、違約金には上限が設定されていますので、不当な請求を受ける心配はありません。
3、預託法に該当しないケースだったら、どうすればいい?
販売預託商法は、原則禁止とされていますが、実際のスキームが預託法の定義に形式的に当てはまらないケースがあります。その場合、預託法による規制は及びませんが合法とは限りません。過去には、預託法は適用されなかったものの、内容が極めて悪質で「詐欺」と判断された事案も存在します。以下では、その代表例や注意すべきポイントを説明します。
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(1)預託法の適用外でも詐欺と判断されたケースがある|ケフィア事案
ケフィア事業振興会による「干し柿オーナー制度」や「マンゴーオーナー制度」では、表向きは「商品を予約購入し、一定期間後に代金や利益が戻る」という仕組みが採られていました。この形式は、預託法で規制される「商品を販売し、業者が預かって運用する」という典型的な販売預託とは微妙に構造が異なっていたため、形式的には預託法の対象外と判断されました。
しかし、その実態は、実際の事業収益では配当を賄えず、新規契約者の資金を既存契約者に回す自転車操業の状態でした。利益が確実に得られるかのように説明していた点なども踏まえ、裁判所は「預託法に該当しないからといって適法とは言えない」と判断し、詐欺に当たると結論づけています。
つまり、販売預託に形式的に当てはまらなくても、悪質な資金集めであれば、別の法律に基づいて違法となりうるという典型例です。 -
(2)詐欺に該当する条件
民法上の詐欺は、事実と異なる説明によって相手方を誤信させ、その誤信に基づいて契約を締結させた場合に成立します。具体的な成立条件は、以下のとおりです。
① 虚偽の事実を告げること
事業者が、本来存在しない利益や実態とかけ離れた収益性を「本当に得られるかのように」説明した場合、虚偽の事実を告げたことになります。
たとえば、運用実態が乏しいにもかかわらず、「毎月必ず〇%の利益が得られる」といった利回り保証的な説明などが典型です。
② 事実を誤認して、だまされた状態に陥っていること
消費者が、事業者の説明を真実だと信じてしまい、誤った理解のまま契約の判断をしている状態です。
ケフィア事案のように、あたかも安定した事業収益があるかのように説明すれば、一般消費者はそれを信じてしまうことが多く、誤認が生じることになります。
③ 誤信に基づいて契約が締結されること
虚偽の説明を信じた結果、契約を締結してしまった場合、詐欺が成立します。
以上の3要件を満たすと判断されれば、民法上の詐欺として契約の取り消しが可能となり、消費者は損害回復を求めることができます。
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(3)被害を受けたと思ったらすぐに相談することが大切
預託法に該当しない場合でも、ケフィア事案のように民法上の詐欺に該当するケースがあります。また、特定商取引法・消費者契約法・金融商品取引法など、ほかの法律が適用される可能性もあります。
つまり、預託法の対象外=適法では決してありません。
少しでも不自然な説明や元本保証的なトークがあった場合は、早めに専門家や消費者相談窓口に相談することが大切です。
4、販売預託商法について弁護士や相談窓口ができること
販売預託商法で被害を受けたかもしれないと感じたときは、できるだけ早い段階で専門家や公的機関に相談することが重要です。以下では、弁護士や消費生活センターができるサポート内容を説明します。
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(1)弁護士|被害回復方法のアドバイスや販売預託者との交渉・裁判までできる
弁護士は、販売預託商法に関わる被害について、依頼者の状況に応じた最適な回復方法をアドバイスできます。
販売預託商法が問題になるケースでは、預託法違反が認められる場合だけでなく、詐欺や不法行為が成立しうるケースなど、複数の法律を横断して検討する必要があるため、専門的な判断がかかせません。
弁護士に依頼することで、以下のような対応が可能になります。- クーリングオフや中途解約の可否の判断
- 返金請求・損害賠償請求の戦略立案
- 販売預託業者との交渉を代理で行う
- 任意交渉が難しい場合は民事訴訟を提起する
- 多数の被害者がいる場合には集団訴訟の検討も可能
消費生活センターの相談とは異なり、弁護士は、代理人として法的な交渉や裁判を行える点が大きなメリットです。
ただし、弁護士費用は有料となるため、事前に費用体系を確認することが望ましいでしょう。 -
(2)消費生活センター|無料でアドバイスが受けられる
販売預託商法に関する相談は、消費者ホットライン「188(いやや)」に電話することで、最寄りの消費生活センターにつながります。相談は無料で利用でき、以下のようなサポートが受けられます。
- 契約内容や勧誘状況をヒアリングし、法的な問題点を整理
- クーリングオフ制度や解約手続きについての助言
- 行政処分が必要と考えられる場合には、関係機関へ情報提供
- 必要に応じて、事業者へのあっせん(苦情処理)を行うケースもある
ただし、消費生活センターはあくまで助言機関であり、事業者と交渉したり、代理人として手続きを行ったりすることはできません。
そのため、深刻な被害が生じている場合や、事業者が連絡に応じない場合、契約書類が複雑な場合には、有料ではありますが弁護士へ相談される方が解決の可能性が高まると言えるでしょう。
5、まとめ
販売預託商法(オーナー商法)は、預託法の改正により現在は原則として禁止されています。高い利回りや元本保証をうたう勧誘には危険が伴い、実態のない運用や自転車操業により大きな被害が生じるケースも少なくありません。
「被害に遭ったかもしれない」「不安な説明を受けた」と感じた段階で、早めに行政の相談窓口(188)や弁護士へ相談することが重要です。
消費者トラブルへの知見が豊富な消費者問題専門チームの弁護士が問題の解決に取り組みます。
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