弁護士コラム
点検商法
2026年03月04日
点検商法

これって点検商法? 不本意な契約を結んでしまった場合の対処法とは

監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
これって点検商法? 不本意な契約を結んでしまった場合の対処法とは
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
「無料で点検しますから」と突然自宅にやってきた業者に対応したところ、「このままだと家が崩れるかもしれない」「シロアリ被害が深刻です」などと不安をあおられ、高額な工事契約を結ばされてしまった……。

このような手口は「点検商法」と呼ばれ、全国で多くの被害が報告されています。特に一人暮らしの高齢者や住宅の知識が少ない人が狙われやすく、「必要ない工事だったのに契約してしまった」「キャンセルできないと脅された」といった相談が後を絶ちません。

点検商法の被害にあった場合、適切な対応をとれば契約を取り消したり、被害を回復できる可能性がありますので、万が一被害に遭ってしまったときは、落ち着いて適切な行動をとることが重要です。

今回は、点検商法の典型的な特徴や契約してしまった場合の対処法、取り消しの可否などについて、弁護士が解説します。

1、点検商法とはどういうもの?

点検商法とは、業者が家庭を訪問して、あたかも正規の点検の振りをしながら断りきれない状態にしておいて、不必要又は法外な価格のリフォーム工事や商品交換、駆除作業等を行う契約を取る商法です。国民生活センターや各地の消費生活センター、弁護士にも、毎年多くの被害相談が寄せられています。

以下は、点検商法の典型的な特徴です。

① 業者が突然訪ねてくる
「近所で工事をしているので無料で点検します」などと声をかけ、アポなしで訪問し、あたかも正規の点検の振りをします。

② 必要のない工事の契約をさせようとする
「危険」「被害が広がっている」などと告げ、断れない状態にして、不必要又は高額な工事を契約させようとします。

③ 不安感をあおるセールストーク
「このままだと倒壊します」「すぐにシロアリ駆除が必要です」などといった強い言葉で心理的に追い詰め、冷静な判断を奪います。

④ 点検対象は多岐にわたる
屋根や外壁、床下、シロアリ発生など点検の名目は多岐にわたります。

⑤ 複数の契約を結ばされる場合もある
最初の点検で小規模工事を契約させ、その後「追加工事が必要だ」と繰り返し契約を迫るケースもあります。

このように点検商法は、消費者の不安を利用して本来不要な契約を結ばせる点が最大の特徴です。
特に、一人暮らしの高齢者や住宅の知識が乏しい人が狙われやすいため、注意が必要です。

2、「契約したのは点検商法だったかも?」と思ったらやるべきこと

「もしかしてこれは点検商法だったのでは?」と気づいたとしても、焦りや不安から適切な行動ができなくなる方もいらっしゃるでしょう。そのようなときは自分だけで対応するのではなく第三者に相談することが重要です。以下では、点検商法の疑いがあるときにとるべき行動を説明します。

  1. (1)点検商法の特徴にあてはまるか確認

    まずは、自分が結んでしまった契約が点検商法に該当するかどうかを整理しましょう。

    • 突然訪問してきた業者に勧められて契約したか
    • 「家が危ない」「シロアリがひどい」など、不安をあおる説明があったか
    • 実際に必要性があるのか疑わしい工事を契約してしまったか
    • 複数回にわたり追加契約を求められているか

    これらにあてはまる場合、点検商法の可能性があります。

    ただし、すべての特徴にあてはまらなくても、契約を取り消すことができる可能性がありますので、自己判断で諦めないことが大切です。

  2. (2)第三者に相談

    点検商法かどうかの判断や契約の取り消しが可能かどうかは専門的な知識を要するため、速やかに専門機関へ相談することが望ましいです。

    点検商法の主な相談先は、以下のとおりです。

    ① 消費生活センター(188番)
    全国共通の消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながります。専門の相談員が、契約の取り消し方法や今後の対応についてアドバイスしてくれます。

    ② 住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)
    住宅の点検やリフォームに関するトラブル専用の相談窓口です。リフォーム工事の専門知識を持つ相談員が対応してくれるため、工事契約に関する相談に適しています。

    ③ 弁護士への相談
    契約の取り消しや損害賠償請求を検討する場合は、弁護士に相談するのが確実です。特に、金額が高額な工事や、業者からの強い圧力があるケースでは早めに弁護士へ依頼することが望ましいです。

3、点検商法での契約は取り消せる?

点検商法の被害に遭い、実際に事業者と契約をしてしまったとしても、契約を解除または取り消せる可能性があります。以下では、点検商法の被害に遭ったときの主な法的対処法を紹介します。

  1. (1)訪問販売であればクーリング・オフの可能性あり

    点検商法の契約は、多くの場合、特定商取引法上の「訪問販売」に該当します。訪問販売で結んだ契約は、契約書面を受け取った日から8日以内であれば、理由を問わず無条件で解除(クーリング・オフ)することができる場合があります

    クーリング・オフの通知は、内容証明郵便で送付するのが確実です。
    工事がすでに始まっていても、期日内に通知すれば原則として費用負担なく契約を無かったことにできます。

    ただし、個別事情によって例外が生じる場合もあるため、早めに相談することが重要です。また、クーリング・オフの期限は短いため、点検商法にあったかもと気づいたときは、速やかに手続きを進めることが重要です。

  2. (2)消費者契約法による契約の取り消し

    クーリング・オフ期間を過ぎてしまった場合でも、消費者契約法によって契約を取り消せる可能性があります。

    典型例としては、「このままでは家が崩れる」といった不安を過度にあおる説明、「今すぐ契約しないと割引がなくなる」といった断定的な勧誘、または「絶対に得をする」と誤認させる不当なセールストークなどです。

    これらは消費者の合理的な判断を妨げる行為とされ、契約の取り消し事由にあたる可能性があります。誤認に気づいたときや困惑状態を脱したときから1年または契約締結から5年が経つと時効により取消しが出来なくなってしまったり、時間が経てば経つほど証拠の収集が困難になるなどの理由により被害回復が困難になりますので、早めに相談することが大切です。

  3. (3)民法による契約の取り消し

    契約が民法上の「詐欺」(だますこと)や「強迫」(強く迫ること)にあたる場合、または消費者が「錯誤」(いわゆる勘違いのこと)により契約をした場合には、民法を根拠にその契約を取り消せる可能性があります。

    たとえば、業者がうその説明をして契約させた場合は「詐欺」(民法96条)に該当し、契約を取り消すことができる可能性があります。
    また、「契約を断れば裁判になる」などと強く迫られ、冷静な判断ができない状態で契約した場合は「強迫」にあたる可能性があり、これも契約を取り消すことができる可能性があります。
    さらに、工事の必要性があるなどと誤認させられ、その誤認に基づき契約した場合には「錯誤」(民法95条)を理由に契約を取り消せる可能性があります。

    状況に応じて適用できる法律は異なるため、弁護士に相談して最適な方法を検討することが重要です。

4、点検商法の被害に遭わない! 予防法について解説

点検商法は、消費者の不安や知識不足につけこんで契約を迫る悪質な手口です。
しかし、事前に心構えをしておけば、被害を未然に防げる可能性は高まります。

以下では、業者が今まさに訪問している場合の対処法と、普段からできる予防策を紹介します。

  1. (1)今まさに業者が来ていて帰ってくれないときは

    業者が玄関先からなかなか帰らない場合、無理にひとりで対応しようとせず、その場で第三者に電話することも有効です。
    警察相談専用電話「#9110」にかけるのも選択肢のひとつでしょう。

    強引な勧誘や長時間の居座りは法令に抵触する可能性もあり、はっきりとした態度で「契約しません」と伝え、録音等で会話の記録を残しておくことも後の対処に役立ちます

  2. (2)被害を未然に防ぐ方法

    点検商法の多くは、消費者が即断してしまうことを狙っています。そのため、「契約は誰かに相談してからにする」など、あらかじめルールを決めておくことが大切です。

    また、即断せずに業者の名刺や資料を受け取り、複数の業者に見積もりを依頼して比較することで、不要な工事を見抜ける可能性が高まります。

    さらに、自治体や消費生活センターの注意喚起情報を定期的に確認することも有効です。特に、高齢の家族がいる場合は、家族間で「業者がやってきて、契約するよう言われても、ひとりで判断しない」と話し合っておくことが被害防止につながります

5、まとめ

点検商法は、突然の訪問や「家が危ない」といった不安をあおる言葉によって、消費者の不安を利用した悪質なケースが多く、法的に問題となる場合があります。「自分も被害にあったかも」と気づいたとき、不安を感じる方も多いようです。

このような点検商法の被害に遭ったとしても、クーリング・オフや消費者契約法、民法といった救済手段があり、契約を取り消せる可能性があります。被害を回復できる可能性を広げ、今後のトラブルを防ぐためにも、自分ひとりで抱え込まずに誰かに相談することが大切です。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
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