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投資詐欺にあったので返金を求めたい! 時効はある?
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)実際に被害にあってしまうと、「だまし取られたお金を取り戻せるのか」「返金請求に期限はあるのか」といった不安を抱える方も少なくありません。残念ながら、投資詐欺の返金は容易ではなく、犯人が資金をすぐに移動させてしまったり、所在がつかめず訴えようにも相手が見つからなかったりと、現実的なハードルが多くあります。さらに、時間が経過することで「時効」が問題となり、返金請求自体ができなくなるケースもあるため注意が必要です。
今回は、代表的な投資詐欺の手口から、返金請求が難しい理由、そして民事・刑事それぞれに存在する「時効」の仕組みについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、投資詐欺とは
投資詐欺とは、投資に関してお金をだまし取る行為を指します。「必ずもうかる」「短期間で資産が倍になる」といった甘い言葉で信じ込ませ、実際には投資先が存在しなかったり、途中で資金を持ち逃げしたりしてきます。
近年はSNSやアプリを悪用したケースも多く、誰でも被害に遭う可能性があります。
以下では、投資詐欺の代表的な手口を紹介します。
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(1)SNSを起点とした投資詐欺
SNSやマッチングアプリを通じて知り合い、信頼関係を築いたうえで「実は有望な投資案件がある」と持ち掛ける手口です。
異性や外国人を装って相手に近づくなどの「ロマンス詐欺」では、恋愛感情を利用して被害者を信用させ、高額な投資に誘導することがあります。
画面上では利益が出ているように見せかけ、追加投資を促されたり、出金するための手数料の支払いを求められたりした後、ある程度支払うと出金ができなくなるパターンもあります。 -
(2)劇場型の投資詐欺
複数人で役割を分担し、あたかも信頼できる投資案件が存在するかのように演出するのが劇場型詐欺です。たとえば、「有名企業の社員」「専門家」「金融機関の担当者」といった複数の人物が登場し、被害者を信用させて投資をすすめてきます。
組織的・計画的に行われるため、被害額も高額になりやすく、返金請求も困難になるのが特徴です。 -
(3)未公開株や架空事業を利用した投資詐欺
「近く上場予定の未公開株を特別に購入できる」「最先端の新規事業に参加できる」といった誘い文句で資金を集める手口です。実際には株式が存在しなかったり、事業自体が架空であったりする場合がほとんどです。特に、電話勧誘やDMによって高齢者が狙われることが多く、被害総額が数百万円から数千万円に上ることも少なくありません。
2、投資詐欺の返金請求が難しい理由とは
投資詐欺の被害にあった場合、被害者は当然「お金を取り戻したい」と考えます。
しかし、実際には返金請求がスムーズにいくケースは多くはありません。詐欺師は、最初からだまし取ることを目的に行動しているため、証拠を残さず、資金を隠すなど返金を妨げる行動をとるからです。
以下では、投資詐欺の返金請求が難しいとされる主な理由を見ていきましょう。
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(1)詐欺師がすぐにお金を移動させてしまう
投資詐欺の加害者は、被害者から受け取った資金をすぐに別口座へ移動させたり、海外口座や暗号資産に変換したりして痕跡を隠そうとします。特に、暗号資産を利用した詐欺は、追跡が困難で、資金の流れをたどることが非常に難しくなります。
また、詐欺で振込先として指定される預金口座は、個人名義の口座であることが多いです。その口座は、詐欺に加担している加害者自身の口座ではなく、基本的には別の闇バイトなどで違法に収集した別の個人の預金口座であり、加害者はそういった口座を多数用意しているため、その口座間で振り込まれた資金をすぐに移動させてしまいます。
そのため、被害に気づいた時点で迅速に対応しなければ、返金の可能性はどんどん低くなります。 -
(2)詐欺師の所在が分からず、返金請求ができない
詐欺師は、偽名や架空の会社、実在の会社に類似した名前を使い、住所や連絡先を隠して活動することが多いため、相手を特定できないまま返金請求が滞るケースも少なくありません。特に、SNSやマッチングアプリを利用した投資詐欺では、加害者が海外在住を装っていたり、連絡手段がアカウントのみであったりするため、実際に裁判を起こすことすら難しい場合があります。
なお、詐欺師の所在が分かっておりお金を返すよう求めても、「投資にはリスクがあること」を盾に返金請求に応じない可能性もあります。この場合、投資詐欺であると主張するに足りる証拠が必要となるでしょう。 -
(3)時間がたっているとさらに返金請求が難しくなる
詐欺に気づいた段階で時間がたっていると、証拠が散逸したり、加害者が逃げてしまったりして返金の可能性は一層下がります。さらに注意しなければならないのが「時効」です。一定の期間が過ぎると、法的に返金請求が認められなくなる可能性があります。
このように、投資詐欺の返金はスピードと証拠が重要です。特に、「時間がたっている」という要素は、証拠の確保や加害者追跡を難しくするだけでなく、時効の問題にも直結します。
次章では、この「時効」について、民事と刑事の両面から詳しく解説していきます。
3、そもそも時効とは何か
投資詐欺の返金請求にあたって重要となるのが「時効」です。
時効とは、一定の期間が経過することで一定の法律効果が発生する制度であり、民事では法律上の権利を行使できなくなったり、刑事では刑事事件として訴追できなくなったりする制度をいいます。
民事(お金の返還請求など)と刑事(詐欺罪としての処罰)ではそれぞれ異なる時効があり、被害回復の方法を検討するうえでは、両者の違いを正確に理解することが大切です。
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(1)民事における時効|消滅時効
投資詐欺によりだまし取られたお金を取り戻すのは、「民事事件」にあたります。
民事事件では、一定期間が経過するとお金を取り戻す権利が消滅してしまう「消滅時効」という制度がありますので、投資詐欺に気づいたときは、放置するのではなく迅速な対応が重要です。
民事における時効(消滅時効)は、どのような法律構成によって加害者に返金を求めるかによって、時効期間が変わってきます。
以下では、主な3つの手段ごとの時効期間を説明します。
① 不法行為に基づく損害賠償請求権
詐欺行為によって損害を受けた場合、不法行為に基づく損害賠償請求が可能です(民法709条)。
この場合、損害と加害者を知ったときから3年で消滅時効が成立します。また、投資詐欺の被害に遭ったときから20年が経過すると、損害や加害者を知らなくても時効により請求できなくなります。
② 不当利得返還請求権
被害者が支払ったお金を加害者で受け取る法律上の原因がないという場合、 不当利得返還請求権を行使することでお金の返還を請求することも可能です。
この場合の時効期間は、以下のいずれか早い方とされています。- 権利を行使できると知ったときから5年(例:投資詐欺に気づいたとき)
- 行使できるときから10年(例:投資詐欺の被害に遭ったとき)
③ 詐欺による契約取消権
投資契約そのものが詐欺に基づく場合、民法96条に基づいて契約を取り消すことができ、契約が取り消されると契約する前の状態に戻ることになるため、支払ったお金の返金を求めることができます。ただし、取消権には行使期間があり、投資契約を追認できるときから5年、または契約から20年で時効となります。
このように、民事上の請求権には複数の選択肢があり、それぞれ時効の期間が異なるため、どの方法をとるかの判断は弁護士の助言を受けることが重要です。 -
(2)刑事における時効|公訴時効
詐欺師を刑事事件として処罰したい場合には「公訴時効」が問題となります。
詐欺罪(刑法246条)の法定刑は、10年以下の拘禁刑であるため、公訴時効は7年です。
つまり、犯行から7年を経過すると、検察は、事件を起訴することができなくなります。
被害の回復に加えて、犯人の処罰を望む場合には、民事上の時効だけではなく、刑事上の時効も意識して行動することが大切です。
ただし、公訴時効の経過前であれば必ず刑事事件として受理され、必ず加害者が起訴されるというわけではありません。 -
(3)時効期間の進行がリセットや一時停止するケースとは?
時効期間が経過すると原則として、投資詐欺による被害回復は困難となりますが、一定の事由があれば時効の更新や完成猶予がされることがあります。
時効の更新とは、一定の事由がある場合に、新たに時効期間が進行を始めるものです。イメージとしては、時効がリセットされることです。例として以下のような事由があります。- 裁判上の請求(訴訟の提起により時効が完成せず、確定判決によって時効の更新)
- 強制執行(強制執行の申立てにより時効が完成せず、申立の取り下げ等以外で終了した時から時効の更新)
- 債務の承認(例えば、加害者が「お金を返す」など債務を認めた時から時効の更新)
時効の完成猶予とは、一定の事由がある場合に、一定の期間は時効が完成しないものです。イメージとしては、時効が一時停止されることです。例として、以下のような事由があります。
- 催告
これらを行うことで時効の進行をリセットしたり、一時的に停止できたりしますので、時効期間が迫っているときには有効な手段といえます。
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(4)時効が迫っているときの対応のポイント
「返金請求したいけれど、もう何年もたっている」という場合でも、まずは弁護士に相談することが重要です。
弁護士は、どの請求権を使えばまだ時効にかからず請求できるのかを検討し、必要に応じて内容証明郵便や訴訟提起などで時効を止める対応をとることができます。
投資詐欺の被害を取り戻すには、いかに早く行動できるかが鍵です。
時効を放置すると返金の道が完全に閉ざされてしまうため、時間がたっている場合でもまずは法律の専門家へ相談することを強くおすすめします。
4、投資詐欺で弁護士ができること
投資詐欺の返金を目指す場合、被害者が自力で詐欺師に返金を求めるのは非常に困難です。そこで重要となるのが弁護士のサポートです。弁護士は、法的知識と交渉力を生かし、被害者が返金を得られる可能性を高めます。以下では、投資詐欺において弁護士ができることを紹介します。
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(1)相手が誰か調査できる
詐欺師は、偽名や架空の会社を使って活動していることが多く、相手の実態を突き止めることが被害回復の第一歩となります。
弁護士は、取引記録や送金先の口座情報、通信履歴などをもとに返金請求の相手の所在や実態を調査することができます。 -
(2)ケースによって最適な法的解決法を提案できる
投資詐欺の返金には、状況に応じて複数のアプローチがあります。
- 法的根拠を持って交渉する:不当利得返還請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権などの法的根拠に基づいて交渉することで、返金の可能性を高められます。
- 民事裁判を提起する:訴訟を通じて返金請求を行い、判決を得ることで強制執行につなげられます。
- 刑事告訴を行う:詐欺罪として告訴することで警察・検察が捜査に動き、返金の糸口が生まれる場合もあります。
このような複数の手段から、どの方法が事案の解決に有効かを判断し、適切な手段を選択するのが弁護士の役割です。
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(3)代理人として相手方との交渉ができる
詐欺師に直接連絡をとるのは精神的にも大きな負担ですし、法律的な知識がないと不利になってしまう危険もあります。
弁護士が代理人となれば、窓口を被害者本人から引き継いで、法的根拠を示しながら交渉でき、被害者自身が危険にさらされるリスクを避けることができます。 -
(4)弁護士に相談する際に準備すべき証拠
弁護士に依頼をお考えなら、できる限り証拠をそろえておくとスムーズです。投資詐欺の証拠となり得る主なものとしては、以下のとおりです。
- 詐欺師とのメールやSNSのやり取り
- 送金記録や振り込み明細
- 投資契約書や勧誘のチラシ・資料
- 画面のスクリーンショット(利益を装った取引画面など)
このような証拠は、相手を特定したり、裁判で主張を立証したりするために欠かせません。
5、まとめ
投資詐欺は、被害に気づいた時点で迅速に動くことが何よりも重要です。
時間がたてば証拠が散逸し、詐欺師の居所も不明になる可能性が高まり、さらに時効によって法的請求自体が不可能になる場合もあります。返金を目指すためには、できるだけ早く弁護士へ相談し、時効を止める手続きや適切な請求方法を検討することが欠かせません。
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