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太陽光発電の訪問販売はクーリングオフ可能! 弁護士が詳しく解説!
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)こうした不本意な契約を取り消す手段として活用できるのが「クーリングオフ制度」です。クーリングオフを行えば、一定期間内であれば理由を問わず契約を白紙に戻すことができる可能性があります。
今回は、太陽光発電に関する訪問販売におけるクーリングオフの基本ルール、期限や手続きの流れ、期限を過ぎた場合の対応策、弁護士に依頼するメリットなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
出典:「太陽光発電システムの点検商法が急増!-「点検が義務化された」などと言われても、安易に契約せず、まずは点検の要否を確認しましょう-」(独立行政法人国民生活センター)
1、太陽光発電システムの訪問販売は、法律で規制されている取引形態に当たり得る
太陽光発電システムそのものを自宅に設置することを自宅に飛び込みで営業することや、自宅を訪問して、点検が必要であるなどとして高額な契約の勧誘を行うことなどは、特定商取引法という法律で、訪問販売という取引形態として、消費者保護の観点から法律で厳しく規制されている取引形態です。以下では、なぜ訪問販売が規制されているのか、不本意な契約を取り消すためのクーリングオフ制度の概要を解説します。
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(1)特定商取引法で訪問販売が規制されている理由
訪問販売は事業者が消費者宅に直接訪問し、商品やサービスの契約を迫る契約形態です。そのため、消費者が十分な情報を得られず、あまり考えを深める時間もなく契約してしまうおそれが高いことから、「特定商取引法」という法律で規制されています。なお、特定商取引法では、訪問販売に関して次のようなルールを設けています。
- 契約書面の交付義務(法定記載事項の明示)
- クーリングオフ制度の適用
- 不実告知(事実を知らせないこと)や威迫行為(威圧したり脅迫したりすること)の禁止
これらの規制によって、契約後でも消費者が救済を受けられる体制が整っています。
なお、投機や投資のために、太陽光発電システムを購入した場合(例えば、自宅に設置するわけではなく、売電収入を得るために太陽光発電システムを購入したり、契約したりした場合)は、「事業のために」契約したものとして、消費者としての保護を受けられないことがありますので、注意が必要です。 -
(2)不本意な契約を結んでしまったときはクーリングオフ可能
太陽光発電システムに関する訪問販売で不本意な契約を結んでしまった場合でも、消費者に当たるのであれば、クーリングオフにより契約を解除することができます。
クーリングオフとは、契約後であっても一定期間内であれば消費者が一方的に契約(の申込み自体)をなかったことにできる制度です。クーリングオフに理由は必要ありませんので、「不要と判断した」「説明が不十分だった」「家族と相談してやめることにした」など、どんな理由でも適用可能です。
次の章では、このクーリングオフ制度を実際に使う際の期限や手続きの流れ、さらに期限を過ぎた場合でも解除できるケースについて詳しく解説します。
2、クーリングオフは原則、期限内に手続きを!
クーリングオフは期限内に行うことが重要です。制度を正しく理解し、適切な方法で手続きを進めることで、スムーズに契約解除が可能になります。以下では、クーリングオフの期や例外、通知書の書き方などを説明します。
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(1)クーリングオフには期限がある
クーリングオフの期限は、契約書を受け取った日を含めて8日以内です。この「8日間」は土日や祝日も含めて数えます。
また、期限の起算日は、契約日ではなく「法定の記載事項を満たした契約書面を受け取った日」です。たとえば、契約日が4月1日で契約書を4月3日に受け取った場合、期限は4月10日までとなります。
なお、期限内に事業者へクーリングオフの通知を発送していれば有効ですので、通知が事業者に届いたのが期限後であっても問題ありません。 -
(2)期限が過ぎてもクーリングオフ可能なケース
例外的に、以下のような場合は8日を過ぎてもクーリングオフできます。
- 契約書が交付されていない
- 契約書に事業者名や契約日、クーリングオフの説明など必須項目が記載されていない
これらの場合、期限は「適正な契約書面を受け取った日」から再スタートします。事業者側に不備があれば、契約から数か月たっていてもクーリングオフできる可能性があります。
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(3)クーリングオフ通知に書くべき内容と送付方法
クーリングオフの通知は口頭ではなく書面または電磁的記録(メールなど)で行う必要があります。書面の場合、以下の事項を明記しましょう。
- 契約解除の意思表示(例:「○年○月○日付で締結した契約を解除します」)
- 契約日、契約商品やサービスの名称
- 事業者名と担当者名
- 契約金額
- 自分の住所、氏名
送付方法は、内容証明郵便が望ましく、これにより送付したという事実と文面を証拠として残せます。控えや郵便局の受領証は必ず保管しましょう。
なお、メール送信の場合も、送信履歴や相手の受信記録を保存しておくことが大切です。 -
(4)クレジットカード払いなどをしたときの対応方法
太陽光発電システムの訪問販売による契約金をクレジットカードで支払ったり、ローンを組んだりした場合、訪問販売業者へのクーリングオフの通知をするのとあわせて、クレジットカード会社やローン会社に対してクーリングオフしている旨の連絡をしましょう。
これによりクレジットカード会社やローン会社からの請求をとめることができます。
3、弁護士が訪問販売問題について、できること
クーリングオフ手続きは自分で行うことも可能ですが、太陽光発電システムの販売会社(事業者)が応じない場合や期限を過ぎた場合は、専門家である弁護士に依頼することで解決の可能性が高まります。以下では、弁護士ができるサポート内容と他の相談窓口について紹介します。
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(1)クーリングオフ書面の作成や事業者との交渉をサポート
弁護士であれば、クーリングオフ通知書の作成から事業者への送付、そしてその後の返金や契約解除の交渉まで対応できます。
特に、事業者が「もう期限を過ぎているので解除できません」と主張する場合や、「返品は受け付けない」などと拒否する場合、法律的な根拠をもって反論し交渉できるのは弁護士ならではの強みです。
また、事業者とのやり取りを弁護士に任せることで、精神的な負担や時間的な手間を大幅に減らせます。しつこい電話や訪問への対応も代理で行えるため、安心して日常生活を送れるようになるでしょう。
太陽光発電システムに関する取引は、高額にわたることも多く、また長期にわたる契約となることも多いため、ローンの支払いなども含めて多数当事者が絡む紛争となることが多い取引です。
多数当事者の間で、それぞれの間での多数の契約について、それぞれ利害の調整が必要ですから、弁護士に事案の解決を求める必要性も高いことが多いと言えます。 -
(2)クーリングオフの期限経過後でも契約を取りやめる方法をアドバイスできる
クーリングオフの期限である8日を過ぎても、契約書の法定記載事項が欠けていたり、契約時に虚偽の説明や脅迫まがいの行為があったりした場合には、契約解除が可能になるケースがあります。
また、契約時に「国の補助金が必ず出る」と説明されたが実際には出なかったケースや「今日契約しないと値引きできない」と不当に契約を急がされたケースでは、消費者契約法や民法の規定を使って契約を取り消せる場合があります。
弁護士に相談すれば、クーリングオフ期限が経過後でも契約書ややり取りの記録、訪問販売の状況を確認し、お客さまのケースに沿ったアドバイスができます。 -
(3)消費生活センター・警察など他の相談先との使い分け
弁護士に相談する場合は、原則として有料ですが、各自治体の消費生活センターでは無料で相談できます。消費生活センターは、クーリングオフの方法や書面の書き方を教えてくれるほか、事業者への連絡を仲介してくれることもあります。ただし、手続きや交渉は基本的に自分で行う必要があります。
一方、訪問販売時に暴言・脅迫・身体的な危害を加えられた場合は、速やかに警察に相談することが重要です。警察は、刑事事件としての対応や安全確保を行うことができます。
つまり、法的な交渉や裁判を見据える場合は弁護士、初期的な手続きや情報提供なら消費生活センター、生命・身体への危害や犯罪行為があった場合は警察と、状況に応じて使い分けることがポイントです。
4、もうだまされない! 法律で規制されている取引形態を学んで備えよう
太陽光発電の訪問販売は特定商取引法で規制される取引形態のひとつですが、同法で規制されている取引はほかにも多く存在します。事前に取引の種類と特徴を知っておくことで、将来的な契約トラブルを未然に防ぐことができます。
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(1)特定商取引法で規制される取引形態
特定商取引法が対象とする主な取引は、以下の7種類です。
① 訪問販売
事業者が消費者の自宅、職場などに来て、契約を勧誘する取引形態です。太陽光発電やリフォーム、浄水器販売などが典型例で、不意打ち性が高いのが特徴です。
② 電話勧誘販売
事業者が電話をかけて商品やサービスを勧誘し、了承を得ると契約が成立します。健康食品や情報商材などで被害が多発しています。
③ 通信販売
インターネットやカタログなど非対面で販売する取引形態です。返品条件の不明確さや虚偽表示によるトラブルが目立ちます。
④ 連鎖販売取引(マルチ商法)
会員が新たな会員を勧誘し、その販売活動で得られる利益を分配する仕組みで、いわゆる「マルチ商法」と呼ばれるものです。投資話や健康器具の販売で問題となっています。
⑤ 特定継続的役務提供
長期かつ高額なサービス契約が対象です。エステや語学教室、結婚相手紹介サービスなどが含まれます。
⑥ 業務提供誘引販売取引
「収入が得られる」として仕事を紹介する代わりに、商品や教材を購入させる取引形態です。実際には十分な収入を得られないケースが報告されています。
⑦ 訪問購入
事業者が消費者宅を訪問し、不要品を買い取る取引形態です。宝飾品やブランド品を不当に安く買い取られるトラブルがあります。 -
(2)特定商取引法以外でクーリングオフが認められている取引形態
特定商取引法に限らず、他の法律でもクーリングオフが可能な場合があります。代表的な例は以下のとおりです。
① 保険契約
生命保険や医療保険などは契約日または書面受領日から8日以内に解除可能です。
② 投資契約
金融商品取引法に基づく一部の契約で、契約後一定期間の解約権が認められています。
③ 不動産取引
宅地建物取引業法により、特定条件下で宅地や建物の購入契約を解除できる場合があります。
5、まとめ
太陽光発電システムの訪問販売などは、特定商取引法で規制されており、クーリングオフ制度が利用できる可能性があります。不本意な契約をしてしまった場合は、期限内に速やかに手続きを行いましょう。
また、期限を過ぎても解除できる場合があるため、あきらめずに専門家に相談することが大切です。弁護士に依頼すれば、事業者との交渉や書面作成を任せることができ、スムーズに解決できる可能性が高まります。家庭用太陽光発電システムの訪問販売で不本意な契約をしてしまった方は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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