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オーディション商法で被害を受けた場合、クーリングオフできる?
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
オーディション商法の被害に遭ってしまったとしても、一定の条件を満たせばクーリングオフにより被害を回復できる可能性があり、また、消費者契約法や民法に基づいて契約を取り消せる可能性もあります。
時間がたってからでは被害の回復が困難になりますので、オーディション商法の被害を受けたと思ったら、すぐに行政窓口、警察、弁護士に相談することをおすすめします。
今回は、オーディション商法で被害を受けたときの対処法や相談窓口について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
お気軽にご相談ください。
1、オーディション商法とは何か。例をあげて解説
オーディション商法とは、芸能界入りを希望している人に対して、仕事をするのに必要と言ってさまざまな名目のお金を要求する悪質商法です。オーディション商法の中には詐欺まがいのケースもあり、特定商取引法や消費者契約法などの法規制の対象になることもあります。
オーディション商法に該当する例としては、以下のようなものがあげられます。
SNSや求人サイトで見た「誰でも応募OK」「未経験歓迎」のオーディションに応募し、面接やオーディションに行った。「合格」を言い渡され「うちの事務所に所属すればテレビ番組に出られる」と言われたため、その場で契約をしたが「本格的にデビューするにはレッスンが必要」として、さまざまな名目で金銭を請求された。お金を払ったのに、仕事やレッスンなどはない。
【例2|路上で声をかけられて芸能界デビューをすすめられた】
芸能事務所のスカウトを名乗る人から路上で声をかけられて「きみだったらすぐにでも芸能界デビューができる」とすすめられた。話を聞くだけならいいと思い、事務所に行ってみると芸能界デビューするなら歌やダンスのレッスンが必要だと言われて、その場でレッスン受講契約をさせられた。
近年はYoutuberやVtuberといった形で芸能活動をする方も多くいらっしゃるかと思います。
子どもに人気の職業にもなっており、ネット上ではYoutuberやVtuberを募集するオーディションの広告が掲載されています。こういった広告からオーディションに応募し、なにがしかの名目で金銭を要求されたというケースもあります。
甘い言葉で芸能界入りをすすめてくる人には注意が必要です。
2、オーディション商法にあった場合に相談できる窓口とは
オーディション商法の被害に遭ったときは、泣き寝入りするのではなく、すぐに第三者に相談することが大切です。相談窓口は、以下のとおりです。
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(1)契約に至っていない場合でしつこく勧誘してくる|消費生活センターなど
まだ契約に至っておらず、事業者からしつこく勧誘されている状況であれば、緊急性は低いため、消費生活センターなどでの相談でも足りるでしょう。
相談ができる相談窓口としては、以下のようなところがあります。- 消費者ホットライン:全国どこからでも無料で相談できる電話相談窓口
- 消費生活センター:専門の相談員による無料の面談相談窓口
どこに相談したらよいのかわからないという場合は、消費者ホットラインに電話して相談してみるとよいでしょう。専門の相談員がトラブル解決のアドバイスや最寄りの消費生活センターを案内してくれます。
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(2)明らかに詐欺など悪質性が高いと思う場合|警察・弁護士
オーディション商法の中には詐欺まがいの悪質なものもありますので、「だまされたかもしれない」と感じるときは、警察や弁護士に相談するようにしましょう。
オーディション商法が刑法上の詐欺罪に該当するようであれば、警察に相談することで刑事事件として捜査を進めてくれます。ただし、警察は、被害者に生じた損害を回復するために動いてくれるわけではありません。だまされたお金を取り戻したいという場合は弁護士に相談した方がよいでしょう。
特に、事業者にお金を支払ってしまった場合は、早期に法的な対応をする必要があるため、弁護士に相談しましょう。
オーディション商法でだまされたときは、後述するようにクーリングオフで被害回復を図ることができますが、クーリングオフには期間制限があります。期間が経過してしまうと、クーリングオフができなくなりますので、なるべく早めに弁護士に相談をするようにしてください。
ただし、契約書の不備によりクーリングオフの期限が進行しない場合や期限が過ぎても何らかの方法で契約を取り消すことができる可能性もありますので、クーリングオフ期間を過ぎたと思っても、まずは弁護士にご相談されることをおすすめします。
(ただし、弁護士への相談は基本有料です。)
3、オーディション商法でクーリングオフが可能な場合とは
オーディション商法で被害を受けた場合は、クーリングオフにより被害回復を図れる可能性があります。
以下では、オーディション商法でクーリングオフをする条件などについて説明します。
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(1)クーリングオフとはそもそも何か
クーリングオフとは、契約の申し込み・締結後であっても、一定期間内なら無条件で契約の申し込みの撤回または契約解除ができる制度です。
「クーリングオフ」という言葉のとおり、消費者が冷静になって契約の必要性を考える機会を与えるための制度になります。
消費者と事業者との間には、交渉力や情報量に関して圧倒的な格差があります。そのため、事業者の不適切な勧誘行為により、消費者がトラブルに巻き込まれてしまう事件が多数発生しています。このようなトラブルから消費者を保護するための制度がクーリングオフです。 -
(2)オーディション商法でクーリングオフをするための条件
オーディション商法でクーリングオフをするためには、以下の条件を満たす必要があります。
① 特定商取引法でクーリングオフ可能な取引形態に該当すること
クーリングオフは、不意打ち性の高い取引から消費者を守る制度ですので、特定商取引法という法律が定める、不意打ち性が高い取引形態に該当する必要があります。
オーディション商法が該当し得る取引形態としては、「訪問販売」です。キャッチセールスやアポイントメントセールスなどもここに含まれます。
ご自身のケースがこの「訪問販売」に当てはまるかどうか、以下で確認していきましょう。・キャッチセールス
キャッチセールスとは、路上や駅前などで声をかけて、別の場所(店舗・事務所など)に誘導して、勧誘や契約を行う販売手法です。
たとえば、「モデルに興味ありませんか」「芸能界デビューしてみませんか」などと声をかけて事務所に連れていき、レッスン契約をさせるものがキャッチセールスになります。
・アポイントメントセールス
アポイントメントセールスとは、事前に電話やメール、SNSなどで販売目的を隠して消費者を呼び出して、店舗や事務所などで高額な商品やサービスの契約をさせる販売手法です。
たとえば、「誰でも応募OK」「未経験歓迎」と称してオーディションに呼び出した参加者に対して、高額なレッスン契約をさせるものがアポイントメントセールスになります。
② クーリングオフ期間内にクーリングオフの手続きをすること
特定商取引法では、取引形態ごとにクーリングオフ期間が定められていますので、クーリングオフをする場合はクーリングオフ期間内に手続きを行わなければなりません。
オーディション商法が「訪問販売」に該当する場合のクーリングオフ期間は、法定書面を受け取った日から8日間です。
以下の事項を記載したハガキを作成して、事業者宛てに「特定記録郵便」または「簡易書留」で送るようにしましょう。- 契約年月日
- 契約内容
- 契約金額
- 契約相手方
- 契約を解除する旨
- 作成年月日
- 消費者の住所、氏名
ただし、法定書面をもらっていない、契約書に不備がある場合にはクーリングオフの期限は進みません。いつでもクーリングオフできますので、ご自身の契約書を弁護士に見せて、どう対処するべきかを確認するのがおすすめです。
4、クーリングオフ以外の対処法はあるか
クーリングオフが使えない場合でも、以下のような方法でオーディション商法による被害を回復できる可能性があります。
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(1)消費者契約法や民法で対処可能な場合があること
一定の条件に該当すれば、消費者契約法や民法でオーディション商法による契約を取り消すことが可能です。
① 未成年者が契約をした場合
18歳未満の未成年者が法定代理人(親)の同意を得ることなく契約をした場合、民法の未成年者取消権を行使することで、契約を取り消すことができます。
この制度は、未成年者が十分な判断能力や経験がなく、不当な契約をさせられるなどのトラブルに巻き込まれることがあるため、設けられています。
② 詐欺または強迫により契約をした場合
事業者からだまされて契約をしてしまった場合、または脅されて契約をしてしまった場合は、民法の詐欺または強迫に該当しますので、それらを理由に契約を取り消すことができます。
③ レッスン契約をしたのにレッスンをしてもらえない場合
オーディション商法でレッスン契約を締結したのに、一切レッスンをしてもらえないという場合は、債務不履行に該当しますので、債務不履行を理由に契約を解除することができます。
④ 不当な勧誘により誤認や困惑して契約をした場合
事業者からの不当な勧誘により勘違いをしたり、混乱して契約をしてしまったという場合は、消費者契約法に基づき契約を取り消すことができる可能性があります。
具体的には、以下のような場合に消費者契約法による取消権を行使することができます。- その契約における大事な事実について、事実と違う説明があった(不実告知)
- 不確実な事項について確実と説明された(断定的判断の提供)
- 消費者に不利な情報を伝えなかった(不利益事実の不告知)
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(2)弁護士であれば法的手段により適切なサポートが可能
クーリングオフや民法・消費者契約法に基づく取消権などを行使して、オーディション商法による被害を回復するには、法的知識や経験が不可欠となります。
弁護士であればお客さまのケースに適した法律を使って、示談、民事裁判、刑事告訴のサポートなどを行うことが可能です。「だまされたかもしれない」と感じたときは、すぐに弁護士に相談しましょう。
5、まとめ
オーディション商法は以前からある消費者トラブルですが、近年はYoutuberやVtuber希望者を標的にした詐欺もあるようです。
オーディション商法は法律で規制されています。もし「だまされた」と思ったら、弁護士や消費生活センター、警察など第三者に相談し、法律の力を使って対処しましょう。詐欺に遭ってしまって恥ずかしいとか、自分で対処しなければと思い詰めてしまうと、適切な対処が難しくなる場合があります。
なるべく早めにご相談ください。

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