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弁護士が解説!「いかなる理由があっても返金しない」は有効?
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
しかし、消費者契約法では、「いかなる理由があっても返金しない」などの消費者の利益を不当に害する条項は無効とされています。そのため、事業者から「いかなる理由があっても返金しない」と言われたとしてもお金を取り戻せる可能性があります。
ただし、すべての場合で返金が可能というわけではありませんので、返金を希望する場合には行政窓口や弁護士に相談することをおすすめします。
今回は、「いかなる理由があっても返金しない」という契約条項の有効性と返金を求めるときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
お気軽にご相談ください。
1、「いかなる理由があっても返金しない」は無効な契約条項!
「いかなる理由があっても返金しない」という契約条項は、無効です。以下では、その理由と返金可能な具体的なケースについて説明します。
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(1)「いかなる理由があっても返金しない」は無効
「いかなる理由があっても返金しない」という契約条項は、消費者の解除権を放棄させるものになりますので、消費者契約法8条の2により無効になります。
契約内容は、当事者同士で自由に決めることができるのが原則ですが、消費者と事業者との間には、交渉力や情報に格差があるため、そのような状態で自由に契約をさせると事業者に有利な契約になり、消費者の権利が不当に制限されてしまいます。
そのため、消費者契約法では、事業者に一方的に有利になる契約条項の効力を否定し、消費者の利益を保護しているのです。
ただし、「いかなる理由があっても返金しない」という契約条項が無効になったとしても、すべてのケースで返金が可能というわけではないことに注意が必要です。 -
(2)「いかなる理由があっても返金しない」旨の条項が無効になった場合に返金可能なケース
「いかなる理由があっても返金しない」という契約条項が無効になったとしても、色やサイズを間違えた、届いた商品がイメージと違っていたなど消費者都合の理由では、基本的には返金を求めることはできません。
返金可能なケースとしては、主に以下のようなケースが挙げられます。① 商品に破損や汚れがある
購入した商品に破損や汚れがある場合、はじめから汚損があったことを消費者側で証明できれば、交換または返金を求めることができます。
なぜなら、事業者には汚損のない商品を消費者に提供する法的な義務があるからです。
② 商品に不具合がある
電化製品などは初期不良により正常に動作しない製品もあります。そのような不具合のある商品を購入した場合には、購入した事業者に対して交換または返金を求めることができます。
③ 違う商品が届いた
インターネット通販では、事業者側の手違いにより、購入した商品とは違う商品が届くことがあります。しかし、この状態では事業者側は売買契約上の義務を履行したとはいえませんので、消費者に正しい商品を提供するか返金に応じなければなりません。
④ 購入した数と違う
商品を購入したものの、購入した数よりも少なかったような場合には、本来の数量を提供するよう事業者に求めることができます。事業者が追加の商品の提供に応じられないような場合には、契約を解除し返金請求ができます。
⑤ クーリングオフが適用される場合
クーリングオフが適用される場合には、消費者は、事業者に対して無条件で契約の解除ができます。①~④までは事業者側に落ち度がある場合における返金可能なケースですが、クーリングオフが適用されるケースでは、事業者に落ち度がなかったとしても無条件で契約を撤回または解除することができるのが特徴です。
契約が解除されれば、すでに支払った商品代金の返金を求めることができます。
なお、クーリングオフが適用される場合についてご確認されたいときは、以下の記事をご参照ください。
2、不良品などのトラブルで返金を求めたくても、取り合ってもらえない場合の相談先とは
不良品などのトラブルが生じた場合には、事業者に対して返金を求めることができます。しかし、事業者によっては消費者からの返金要求に応じないケースもあります。そのような場合には、以下のようなところに相談してみるとよいでしょう。
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(1)行政窓口|消費生活センター
消費者トラブルを相談できる行政窓口は、「消費生活センター」です。
消費生活センターでは、消費者トラブルの解決方法や事業者との交渉の方法などについてアドバイスをしてくれます。そのアドバイスを踏まえて事業者と交渉をすれば、返金に応じてもらえる可能性が高くなるでしょう。
ただし、あくまで消費生活センターには消費者の代理人として事業者と交渉する権限はありません。 -
(2)弁護士
弁護士は、さまざまな法律問題を取り扱う専門家ですので、消費者トラブルについても相談ができます。
消費生活センターとは異なり、弁護士は、消費者の代理人として事業者と交渉ができますので、自分で対応するよりも事業者が返金に応じてくれる可能性が高くなるでしょう。また、消費者が自分で対応する必要がありませんので、事業者を相手にしなければならないという精神的負担もほとんどありません。
ただし、弁護士への相談や依頼は、基本的には有料です。
3、通販で自己都合により返品・返金を求めたいときの注意点
ここまで返金可能性のあるケースについて解説してきました。3章では通販で自己都合により返品・返金を求めたい場合の手続きと注意点について説明します。
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(1)通販はクーリングオフが適用されない
通販は、特定商取引法上のクーリングオフの規定が適用されませんので、クーリングオフを利用して、商品の返品・返金を求めることはできません。
通販の返品・返金は、事業者が「返品特約」を設けているのか、特約がある場合にはその特約にどう書かれているのかによって、具体的な対応方法が変わってきます。まずは、通販サイトの規約を確認し、「返品特約」の有無をチェックするようにしましょう。 -
(2)返品不可と書かれていれば、原則返品は不可
返品特約に「返品不可」と書かれている場合、原則として消費者は、自己都合により商品の返品・返金を求めることはできません。
しかし、「返品不可」という特約が有効になるためには、以下の要件を満たす必要があります。- 見やすい場所に見やすいサイズで記載されていること
- 返品特約以外の事項との区別を明確にしていること
- 返品の可否、条件、送料負担については特に強調させること
- 事後の表示による省略は不可
そのため、返金不可とする返品特約が設けられていたとしても、上記の要件を満たしていない場合には、例外的に返品・返金を求めることができます。
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(3)返品不可と書かれていなければ返品・返金可能
通販については、消費者が商品を受け取った日を含め8日以内であれば契約を解除して、返品・返金を求めることができます。
クーリングオフ制度とは異なり、通信販売における解除権は、特約で消すことができるのが特徴ですが、特約がなければ、契約を解除することができます。
ただし、返品・返金の手続きにかかる送料は、消費者側が負担しなければなりません。
4、「いかなる理由があっても返金しない」以外に無効になる契約条項、契約の取り消しができる場合とは
「いかなる理由があっても返金しない」という契約条項は、消費者契約法により無効となりますが、消費者契約法では、それ以外にも消費者保護の観点から、契約の無効および取り消しに関する条項を設けています。
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(1)契約取り消しと無効の違い
契約の取り消しとは、契約によりいったん発生した法律行為の効力を当初にさかのぼって消滅させることを指します。
契約の無効とは、法律行為の効力がはじめから認められていない状態をいいます。
契約の取り消しが当初は有効に成立した契約を後から消滅させるものであるのに対して、契約の無効はそもそも最初から契約の効力が生じていないという違いがあります。また、契約の無効は、特別な意思表示を必要とせず当然に無効となりますが、契約の取り消しは、取り消しの意思表示がなければ有効な契約として取り扱われるという違いがあります。 -
(2)消費者契約法で「いかなる理由があっても返金しない」以外に無効になる条項
消費者契約法では、「いかなる理由があっても返金しない」という不当条項の無効以外にも、以下のような条項を無効としています。
- 事業者の損害賠償責任を免除する条項
- 事業者の免責の範囲が不明確な条項
- 消費者が成年後見制度を利用したことを理由に契約を解除する条項
- 消費者が負う違約金などが高すぎる条項
- 消費者が一方的に不利な条項
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(3)消費者契約法で契約取り消しできる場合
消費者契約法では、無効になる条項について定められているだけではなく、消費者保護の観点から、以下のような事由があった場合に契約の取り消しができると定めています。
- 不実告知(契約上重要な箇所について嘘を言う)
- 断定的判断の提供(不確実な物事について確実だと言う)
- 不利益事実の不告知(消費者が不利であることを言わない)
- 過量契約(量が多すぎる契約をさせる)
- 不退去(契約するまで帰らない)
- 退去妨害(契約するまで帰さない)
- 不安をあおる告知
- 恋愛感情などに乗じた人間関係の濫用(恋愛感情を持たせて契約させる)
- 加齢などによる、判断力の低下の不当な利用
- 霊感などの知見を使った告知
- 契約締結前に債務の内容を実施する(契約前にサービスを提供し代金を要求する)
5、まとめ
「いかなる理由があっても返金しない」は無効な契約条項ですが、だからと言ってすべての場合で返品や返金が可能というわけではありません。返金トラブルに遭った場合には、まずは規約や法律を確認しつつ、消費生活センターや弁護士など相談窓口にも聞いてみましょう。

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