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子どもの投げ銭トラブルが多発中! 高額な投げ銭は戻ってくるのか?
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)子どもの投げ銭は、未成年者取消権によって取り戻せる可能性がありますので、お早めに弁護士へご相談ください。
本記事では、子どもが勝手にした投げ銭に関するトラブルを解決する方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
お気軽にご相談ください。
1、「投げ銭」とは
「投げ銭」とは、元々は大道芸人などのパフォーマンスに対して多少のお金を投げ入れる行為を意味する言葉です。近年では、ライブ配信アプリ・サイトにおいて、視聴者が配信者に対して金銭などを送ることができるシステムも「投げ銭」と呼ばれています。
なお、ライブ配信サービスにおける投げ銭は「お布施」などと呼ばれることもあるほか、正式な名称はサービスによって異なります(たとえばYouTubeでは「スーパーチャット」(略してスパチャ)と呼ばれています)。
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(1)投げ銭の仕組み
投げ銭の仕組みはサービスによって異なりますが、金額を自由に設定して送金するシステムと、アイテムを購入して使用するシステムの2種類に大別されます。
なお、ユーザーが支払った金額のすべてが配信者に支払われるのではなく、サービスの運営会社が一定の手数料を控除するのが一般的です。 -
(2)投げ銭が高額になりがちな理由
投げ銭には少額から参加できますが、実際には非常に高額のお金を投げ銭につぎ込む人もいます。
投げ銭が高額になりがちな理由として大きいのは、ライブ配信者(ライバー)や他の視聴者に注目されたいという気持ちがあると考えられます。
投げ銭とともにチャットを投稿すると、エフェクトによってそのチャットが目立つように表示されるケースが多いです。この機能を利用して、多額または頻繁に投げ銭を行って、配信者や他の視聴者の注意を引こうとするユーザーが見られます。
また、簡単な操作によって行うことができる点も、投げ銭が高額になりがちな理由のひとつでしょう。ユーザーとしては、投げ銭の操作が簡単であるためにお金が減っているという感覚を持ちにくく、結果的に高額の投げ銭をしてしまいやすくなるのです。
2、子どもが勝手にした投げ銭は取り戻せるのか?
成人が投げ銭をするのは自己責任と言えますが、子どもが親に隠れて投げ銭をしてしまうケースもあります。
判断能力が十分でない子どもが、事業者などによって搾取されてしまうのは大きな問題です。
そのため、民法では「未成年者取消権」を定めています。未成年者取消権を行使すれば、子どもが勝手にした投げ銭を取り戻せる可能性があります。
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(1)未成年者取消権によって取り戻せる可能性がある
未成年者(=18歳未満の者)が契約などの法律行為をするには、原則として法定代理人(通常は親)の同意を得なければなりません(民法第5条第1項)。
法定代理人の同意を得ずに未成年者がした法律行為は、本人または法定代理人が取り消すことが可能です(同条第2項)。投げ銭についても、未成年者が法定代理人の許可を得ずに行った場合は、原則として取り消すことが可能です。 -
(2)未成年者取消権を行使できないケース
ただし例外的に、以下の場合には未成年者取消権を行使できない点に注意が必要です。
① 追認したとき
法定代理人の同意を得ずにした未成年者の行為を、法定代理人が追認した場合には、その後に改めて未成年者取消権を行使することはできません。
なお、以下の場合には追認したものとみなされます(民法第20条第1項、第2項)。- 未成年者が成年に達した後、相手方が本人に対して1か月以上の期間を定めて追認するかどうかを確認して返事をするよう求め、本人がその期間内に返事をしないとき
- 未成年者が成年に達しない間に、相手方が法定代理人に対して1か月以上の期間を定めて追認するかどうか返事するよう求め、法定代理人がその期間内に返事をしないとき
② 詐術を用いたとき
未成年者が成年であることを信じさせるために詐術を用いたときは、未成年者取消権を行使できません。
ただし、画面上で表示された「成年ですか」などのメッセージに対して単に「はい」と回答するなど、簡単に虚偽の情報を入力できるようになっている場合は、詐術に当たらず未成年者取消権を行使できる可能性が高いです。 -
(3)未成年者取消権を行使する方法
未成年者取消権を行使する際には、以下の手順で対応しましょう。
① 課金先のサイトを確認する
投げ銭がどのサイトで行われたのかを確認します。クレジットカードの引き落とし履歴や、アプリストアの課金履歴などをチェックしましょう。
② プラットフォーム事業者に対して連絡する
問い合わせフォームなどから、子どもが無断で課金してしまったこと、課金した日時などの事実経緯と併せて、未成年者取消権を行使する旨を伝えましょう。
問い合わせに対して回答がない場合は、内容証明郵便などで連絡することも検討します。
③ 訴訟を提起する
プラットフォーム事業者が返金に応じない場合は、訴訟を提起して返金を請求することも検討しましょう。なおサイトによっては、運営するプラットフォーム事業者が海外に所在しているケースもあります。
たとえばYouTubeの場合、問い合わせ先は海外の住所とされています。
参考:「お問い合わせ先」(YouTube)
海外事業者に対する返金請求は、連絡するだけでもかなり大変なので、弁護士にご相談ください。
3、高額な投げ銭トラブルの相談先
投げ銭に関するトラブルが生じた場合には、行政機関の窓口または弁護士に相談しましょう。具体的な返金請求などを行いたい場合には、弁護士へのご相談をおすすめします。
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(1)行政機関の相談窓口
消費者庁では、事業者とのトラブルに巻き込まれた消費者からの相談を受け付けています。
消費者ホットライン(188)に電話をすれば、最寄りの消費生活センターなどの担当者につないでもらえます。投げ銭のトラブルについても相談できるので、困ったら電話をしてみましょう。
ただし、行政機関の窓口では一般的なアドバイスは受けられますが、必ずしも事業者との間で返金などに関する代理交渉を行ってもらえるわけではありません。返金請求などについては、原則としては、あくまでもご自身で対応しなければならない点にご注意ください。 -
(2)弁護士
投げ銭について、未成年者取消権の行使や返金請求などをしたい場合には、弁護士へのご相談をおすすめします。
弁護士は法律に関する専門的知見を生かし、投げ銭トラブルに関する適切な解決策をアドバイスいたします。事業者との交渉や訴訟などの法的手続きについても、弁護士に代理人としての対応をご依頼いただけます。
ベリーベスト法律事務所では、投げ銭トラブルに関するご相談は有料にて承りますので、お悩みの方はご相談ください。
4、子どもの投げ銭トラブルを予防する方法
子どもの投げ銭トラブルは、未然に防ぐことに越したことはありません。以下の対応によって、子どもが勝手に投げ銭をしないようにするとともに、万が一トラブルが生じた場合にもすぐに発見できるようにしましょう。
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(1)ペアレンタルコントロールを設定する
「ペアレンタルコントロール」とは、PCやスマートフォンの利用方法を保護者が管理できる機能です。子どものデバイスからは投げ銭ができないように設定しておけば、子どもが勝手に投げ銭をしてしまうことを防げます。
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(2)保護者のアカウントを使わせない
子どものデバイスにペアレンタルコントロールを設定しても、親のアカウントを子どもが使える状態になっていると、親のアカウントを通じて勝手に投げ銭が行われてしまうおそれがあります。
特別の事情がない限り、親のアカウントを子どもに使わせることは避けましょう。 -
(3)アプリストアのパスワードを教えない
アプリストアのパスワードを子どもに教えると、そのパスワードを使って勝手に投げ銭が行われてしまうおそれがあります。子どもにアプリストアのパスワードを教えることは控えましょう。
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(4)スマートフォンの使用に関するルールを話し合う
子どもがスマートフォンを不適切な方法で使わないようにするには、日頃から使い方に関するルールを決めておくことが大切です。時間制限や閲覧してはいけないサイトなどについて、子どもとコミュニケーションをとりましょう。
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(5)クレジットカードの明細を毎月確認する
投げ銭などの課金が行われていないかどうかを確認するため、クレジットカードの明細は毎月チェックしましょう。明細の確認を怠ると、トラブルの発生を把握するのが遅れてしまいます。
5、まとめ
投げ銭については、身の丈を超えた金額を投じないことや、子どもによる無断での投げ銭を防ぐことなど、トラブルを予防するための心構えや対策が大切です。
万が一投げ銭についてトラブルになってしまったら、行政機関の窓口や弁護士に相談して解決を図りましょう。
ベリーベスト法律事務所は、消費者トラブルに関するご相談を随時受け付けております。投げ銭について高額の請求を受けてしまいお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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