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弁護士が教える、子どもがゲームに高額課金してしまった場合の対処法
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)このような子どもによる高額なゲーム課金が発覚した場合、親としてはどのように対処すればよいのでしょうか。
今回は、子どもによる高額なゲーム課金が発覚した場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
お気軽にご相談ください。
1、子どもがゲームに高額課金してしまった場合、親が取り消しできる可能性がある
子どもによるゲーム課金の場合、未成年者取消権を行使することで契約を取り消すことができる可能性があります。
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(1)未成年者取消権とは
未成年者取消権とは、未成年者が親(法定代理人)の同意を得ることなく契約をした場合に、その契約を取り消すことができる権利をいいます。未成年者は、成人に比べて経験が浅く、十分な判断能力を有していないことから、契約で不利益を被ることがないように法律で特別に保護されています。
未成年者取消権を使うことで、未成年者が行った契約は契約締結時にさかのぼって取り消されますので、ゲームに高額課金をしてしまったとしても決済をストップし、支払ってしまったお金を取り戻すことができます。
なお、民法改正により成年年齢が引き下げられましたので、未成年者取消権の対象となるのは、17歳までの子どもがした契約に限られます。 -
(2)業者に対して未成年者取消権を主張する流れ
子どもによるゲームの高額課金が判明した場合には、以下のような流れで未成年者取消権を行使します。
① クレジットカード会社に連絡
クレジットカード会社からの請求書を見て、オンラインゲームへの高額課金が判明するケースというケースでは、何にいくら使ったのかすぐ判明しないこともあります。一般的にクレジットカード会社からの請求書には、iPhoneであればAppleID、AndroidであればGoogleアカウントでいくら使いました、としか書かれていないからです。
未成年者本人にどのIDでどんなゲームに使ったのか確認するか、クレジットカード会社に連絡して、詳細な利用明細を取り寄せるようにしましょう。
② プラットフォーム事業者に連絡
高額な決済で利用したプラットフォーム事業者(AppleやGoogleなど)が判明したら、そこに連絡します。
プラットフォーム事業者に連絡をすれば、具体的にどのようなゲームに対して、いつ、いくら課金されたのかを教えてもらうことができます。対象となる取引が子どもによる課金であった場合には、子どもが未成年者であることを伝えて、取引を取り消したい旨を伝えましょう。
ただし、ゲームの課金は、消費者とゲーム会社との取引ですので、プラットフォーム事業者に連絡をしたとしても、必ず返金してもらえるわけではありません。
③ ゲームの提供会社に連絡
プラットフォーム事業者が返金に応じてくれないときは、ゲーム提供会社に連絡をして、未成年者取消権を行使します。
未成年者取消権の行使にあたっては、子どもにより課金が行われたという事実を立証する必要がありますので、事前に行政窓口や弁護士に相談するのがおすすめです。
2、ゲームの高額課金の相談先
子どもがゲームに高額課金してしまったときは、以下のような相談先で相談をするとよいでしょう。
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(1)行政窓口
ゲームの高額課金などの消費者トラブルに関しては、都道府県や市区町村に設置されている消費生活センターで相談をすることができます。消費生活センターでは、消費者問題に詳しい専門の相談員が対応し、トラブル解決に向けたアドバイスをしてくれます。相談料は、無料となっていますので、費用負担をかけずに相談をしたいという方にはおすすめです。
ただし、行政窓口での相談の場合、業者との対応はすべてご自身で行わなければならないことも多いです。 -
(2)弁護士
消費者トラブルを含む法律問題は、弁護士に相談することも有効な手段となります。
行政窓口での相談とは異なり、弁護士への相談は、基本的には有料となりますが、弁護士に依頼すれば、弁護士が本人に代わって業者との交渉を行うことができます。ご自身で業者と交渉するのが不安だという場合には、弁護士に相談するのがおすすめです。
また、未成年者による高額課金のケースでは、未成年者取消権を行使して、返金を求めていくことになりますが、弁護士であれば法的説得力をもって相手を説得することができますし、必要な証拠収集についてもアドバイスしてもらうことができます。
さらに、第3章で詳しく説明しますが、未成年者取消権が使えないようなケースであっても、弁護士であれば、最適な解決方法を提示することができます。
3、ゲームの高額課金で未成年者取消権が使えない場合とは
未成年者による契約であったとしても、以下のようなケースでは、未成年者取消権を使うことができません。
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(1)未成年者が詐術を用いたとき
詐術とは、未成年者が契約する相手を誤信させる目的で、自らを成年者であると伝えたり、法定代理人の同意を得ているなどとうそをつくことをいいます。このような未成年者による詐術が用いられた場合には、未成年者による契約であったとしても、未成年者取消権を行使することはできません。
なお、詐術に該当するかどうかは、個別具体的な事情を踏まえて判断されますので、以下のようなケースでは、詐術にはあたらないと考えられます。- 年齢確認のページで「成年ですか」との問いに対して、「はい」のボタンをクリックした場合
- 利用規約に「未成年者の場合、法定代理人の同意が必要です」と書いてあるだけの場合
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(2)契約の追認があったとき
追認とは、取り消すことができる契約を「取り消さない」とする意思表示をいいます。未成年者により契約がなされたとしても、その後、契約の追認があった場合には契約を取り消すことができなくなります。
追認は、法定代理人だけではなく未成年者が成年に達したときも行うことができます。また、以下のような場合には、追認があったものとみなされます。- 追認できる人が代金の全部または一部を支払った
- 追認できる人が相手から商品やサービスの提供を受けている
- 追認できる人が相手からの催告に対して、期限内に回答をしていない
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(3)未成年者取消権の時効が成立したとき
未成年者取消権は、一定期間の経過により時効により消滅しますので、それ以降は、未成年者取消権を行使することはできません。
具体的な時効期間は、追認をすることができる時から、または未成年者が成年に達してから5年または契約をした日から20年とされています。
4、大人の場合は債務整理を検討
子どもではなく大人がゲームの高額課金をしてしまい、支払いが困難な状況になったときは、債務整理を検討しましょう。
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(1)債務整理とは
債務整理とは、多額の借金を抱えて返済が困難な状況になった場合に、借金の減額、免除、支払いの猶予などにより、借金の負担を軽減することができる方法です。
子どもによるゲーム課金であれば、未成年者取消権を使うことで返金を受けられる可能性がありますが、大人の場合には未成年者取消権を使うことはできません。そのため、ゲームへの高額課金により生活が立ちいかなくなった場合には、債務整理を検討する必要があります。 -
(2)債務整理の3つの手段
債務整理には、任意整理、自己破産、個人再生という3つの手段があります。以下では、それぞれの手段について説明します。
① 任意整理
任意整理とは、債権者との交渉により、将来利息のカット、遅延損害金の減免、長期の分割払いなどを目指していく方法です。
任意整理の対象に含める債権者を自由に選ぶことができる(つまり、整理する借金とそのまま支払う借金とを選ぶことができる)というメリットがありますが、自己破産や個人再生のような大幅な借金減免の効果は期待できません。
② 自己破産
自己破産とは、裁判所に申し立てを行い、免責許可決定を得ることで基本的にすべての借金をゼロにすることができる方法です。
ただし、ゲームの高額課金による借金の場合には、免責不許可事由である浪費による借金にあたりますので、裁量免責が認められない限りは、原則として免責を受けることはできません。
③ 個人再生
個人再生とは、裁判所に申し立てを行い、再生計画の認可を得ることで借金を大幅に減額することができ、減額後の借金を3年~5年で返済していく方法です。
自己破産のように免責不許可事由はありませんので、ゲーム課金による借金であっても個人再生の手続きを利用することができますが、継続的な収入が必要になりますので、学生や無職の方では利用することはできません。
5、まとめ
子どもによるゲームへの高額課金があった場合には、未成年者取消権を使うことで業者から返金を受けられる可能性があります。未成年者取消権という言葉を初めて聞いた方も多いと思いますので、もし契約取り消しの流れに不安をお持ちなら、行政窓口や弁護士に相談するのがおすすめです。
なお、当事務所は有料ではありますが、数多くのオフィスを持ち、消費者問題の知見も豊富ですので、子どもによるゲーム課金でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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