- 消費者問題について弁護士に相談
- 弁護士コラム
- 出演したAV契約の取り消しはできる? 弁護士が解説
出演したAV契約の取り消しはできる? 弁護士が解説
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)これからリリース予定のAVの公表中止や、すでにリリースされたAVの回収も請求可能です。もしAVへの出演を後悔している場合は、弁護士にご相談ください。
本記事では、AVへの出演契約の解除(取り消し)などに関するルールについて、AV新法による規制の概要をベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
※正式名称:性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律
お気軽にご相談ください。
1、AV新法とは
AV新法は、2022年6月23日に施行された新しい法律です。
以前から、女性が性行為などを撮影したAVへの出演を強要されるケースや、だまされてAVに出演させられるケースなどが社会的に問題視されていました。
特に2022年4月1日より成人年齢が引き下げられ、18歳や19歳の若い女性が未成年者取消権(未成年者取り消し権)を行使できなくなったことにより、AV出演に関する性被害者の拡大が懸念されました。
こうした状況を踏まえて、AV出演被害防止を目的として成立したのがAV新法です。AV新法では、AVの制作公表者※に対する厳しい規制を定められています。
※制作公表者とは:AVの制作公表を行う者として、出演者と契約を結ぶ人、または結ぼうとしている人
2、AV新法が成立して、出演した人ができるようになったこと
AV新法成立により、以下のことができるようになりました。
- 契約締結のルールが設けられたこと
- 契約したことを行うときのルールが設けられたこと
- 契約解除が行いやすくなったこと
- 動画の削除が迅速にできるようになったこと
- この法律に違反した人への罰則が設けられたこと
-
(1)契約締結のルールが設けられたこと
① 作品ごとの契約書の締結
AVへの出演契約をする場合には、作品ごとに契約を結ばなければなりません。(AV新法第4条)。また、出演契約書などには、撮影の日時・場所や実際にする性行為の内容などを記載する必要があります。
結んだ出演契約書などは、制作公表者が出演者に対して速やかに渡すことも求められています(同法第6条)。
② 締結時の説明義務
AVへの出演契約を締結する際、制作公表者は出演者に対して、
・AV新法や取消権や解除権等のルール
・AV出演のリスクや相談先
などを記載したものを渡して、その内容を説明しなければなりません(同法第5条第1項)。
契約締結時の説明は、出演者がその内容を簡単にかつ正確に理解できるよう、丁寧に分かりやすく行わなければなりません(同条第2項)。 -
(2)契約したことを行うときのルールが設けられたこと
① 撮影時期・作品公表時期の制限
撮影は、出演者に対して出演契約書などと説明書面を渡した後、1か月を経過した後に行うというルールが設けられました。(同法第7条第1項)。
また、撮影されたAVを公表できるのは、全ての撮影が終了してから4か月たった後に限られます(同法第9条)。
撮影時期・作品公表時期の制限に違反してAVが撮影・公表された場合には、出演者は出演契約を解除することができます(同法第12条第1項)。
② 性行為などの拒絶などに関する措置
出演契約に定められている内容であっても、出演者はその性行為をするのが嫌だと思えば、撮影を拒否できます(同法第7条第2項)。
また制作公表者は、出演者の健康の保護その他の安全・衛生や、出演者が性行為の撮影を拒絶できるようにすることなど、出演者が嫌なものは嫌と言えるよう、必要な措置を講じなければなりません(同条第3項)。
③ 撮影された映像の確認
映像を公表する前に、事業者は出演者に対して、公表予定の映像を確認する機会を与えなければなりません(同法第8条)。
映像確認の機会を与えることなく公表された場合にも、出演者は出演契約を解除することができます(同法第12条第2項)。 -
(3)契約解除が行いやすくなったこと
① 出演者が任意解除権・差止請求権を使いやすくなった
出演者は、撮影に同意していたとしても、AVの公表から1年以内に限り、出演契約を自分の意思で自由に解除できます(同法第13条第1項)。また、リリース予定のAVの公表中止や、リリース済みのAVの回収なども請求可能です(同法第15条第1項)。なお、2024年6月22日までに結ばれた出演契約については、AVの公表から2年が経過するまで任意解除が可能です(同法附則第3条)。
出演者の任意解除権を制限したり、解除時の損害賠償責任を課したりする契約上の特約は無効です(同条第4項)。したがって、出演契約の定めにかかわらず、出演者はAV新法の規定に基づいて出演契約を任意解除できます。
制作公表者または制作公表従事者※などは、出演契約を解除したいと出演者が申し出ることを妨害するために、出演者にうそを言ったり脅したりして困惑させてはなりません(同法第13条第5項、第6項)。
出演契約の任意解除に伴い、制作公表者に何らかの損害が生じたとしても、出演者はその損害を賠償する責任を負いません(同法第13条第3項)。
※制作公表従事者とは:制作公表者以外の者で、制作公表者との間の雇用や請負、委任などの契約を結んで、AVの制作公表に従事する者
3、AV新法などに違反した事業者が受ける罰則
AV新法では、AVの制作公表者に対して厳しい規制を課しています。違反した場合は刑事罰の対象になるため、不適正なAV制作に対する大きな抑止効果があると考えられます。
もし制作公表者がこれらの規定に違反しており、AVの出演について不当な取り扱いを受けた場合には、AV新法違反を指摘して契約解除や刑事告訴(告発)を行いましょう。
ただし、出演者が自ら契約解除などを主張すると、制作公表者側から脅迫などを受けることもあり得るので、弁護士を通じて連絡することをおすすめします。
-
(1)AV新法の罰則
AV新法に違反する行為のうち、以下のものは刑事罰の対象となります。
① 任意解除権の行使に関する不実告知・威迫
制作公表者および制作公表従事者は、出演者が契約を解除したいと言うのを妨害するために、契約上の重要事項に関して出演者にうそを言う、または出演者を脅迫などして困惑させてはなりません(同法第13条第5項、第6項)。
上記に違反した者は「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」に処され、またはこれらが併科されます(同法第20条)。
さらに、法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が上記に違反した場合は、法人にも「1億円以下の罰金」が科されます(同法第22条第1項第1号)。
② 説明書面・出演契約書などの交付義務違反など
制作公表者は出演者に対して、出演契約の締結時に説明書面などを渡さなければなりません(同法第5条第1項)。
さらに、出演契約を締結したときは、制作公表者は出演者に対して出演契約書なども渡す必要があります(同法第6条第1項)。
上記に違反して説明書面等もしくは出演契約書などを渡さず、または虚偽の記載・記録があるものを渡した者は「6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」に処され、またはこれらが併科されます(同法第21条)。
さらに、法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が上記に違反した場合は、法人にも「100万円以下の罰金」が科されます(同法第22条第1項第2号)。 -
(2)刑法に基づく罰則
現場において性行為などを拒否する出演者に対し、無理やり性交など※をした者には不同意性交など罪が成立します(刑法第177条第1項)。不同意性交など罪の法定刑は「5年以上の有期拘禁刑※」です。
※性交など:性交、肛門性交、口腔(こうくう)性交または膣(ちつ)もしくは肛門に身体の一部(陰茎を除く)もしくは物を挿入する行為であってわいせつなもの
また、性交などに至らずとも、拒否する出演者に対して無理やりわいせつな行為をした者には不同意わいせつ罪が成立します(刑法第176条第1項)。不同意わいせつ罪の法定刑は、「6か月以上10年以下の拘禁刑※」です。
※拘禁刑:刑罰の懲役刑と禁固刑を一本化した「拘禁刑」を創設する改正刑法が2025年6月1日から施行され、同日以降に起きた事件で適用されます(それまでの上記罪の法定刑は懲役刑です。)。拘禁刑も懲役刑に近いものですが、懲役刑では刑務作業が義務であるのに対し、拘禁刑では刑務作業は義務とはなっていません。
4、AVの出演契約取り消し・公表中止・回収について弁護士に相談するメリット
AVの出演契約の取り消しや、AVの公表中止・回収請求については、弁護士へのご相談をおすすめします。
-
(1)依頼人の代理人となり、相手との交渉を進めるため、ストレスが軽減される
出演契約の取り消しや公表中止・回収請求をご自身で行う必要はなく、代理人となった弁護士が行いますので、ご自身でやり取りする必要はありません。
また、弁護士は法的根拠をもって交渉を進めますので、相手からうそを言われたり、脅されたりして、AVの回収・削除ができなかったという事態を予防できます。 -
(2)刑事告訴のサポートも可能
弁護士は依頼者の代理人として、依頼者の意向に沿って対応を進めていきます。AVの回収、削除はもちろんのこと、制作公表者などから犯罪行為を受けた場合には、刑事告訴もサポート可能です。
-
(3)相談内容は漏れることがない
家族や親しい人には、知られずに問題を解決したいという方も多くいらっしゃるでしょう。
弁護士には法律上守秘義務があるため、相談内容が外部に漏れることはありません。また手続き上、どうしても書類を送らなければならない、と言った場合でも、法律事務所からの書類だとわからないよう、ロゴ無しの封筒で送るなどの対応も行っております。
ベリーベスト法律事務所には、上記のような契約取り消しなどに対応する消費者問題の専門チームがあります。また、インターネット上の動画の削除に関するチームもあり、連携して専門性の高いサービスをご提供しております。ご自身のAV出演で問題を抱えている方は、ぜひご相談ください。
5、まとめ
AV新法は、不本意にAVへ出演した人を守るための法律です。
AV新法に基づき、すでに締結したAVへの出演契約を取り消せることがあります。また、すでにリリースされているAVの公表中止や回収についても請求可能です。
ベリーベスト法律事務所は、AVへの出演に関するお悩みのご相談を随時受け付けております。AVへの出演で何かトラブルになっている場合には、ぜひベリーベスト法律事務所にご相談ください。
消費者トラブルへの知見が豊富な消費者問題専門チームの弁護士が問題の解決に取り組みます。
マルチ商法や霊感商法、悪徳商法などをはじめとした消費者トラブルでお困りでしたら、ぜひ、お気軽にご相談ください。