弁護士コラム
国際ロマンス詐欺
2024年06月03日
国際ロマンス詐欺

国際ロマンス詐欺にあってしまった! お金は取り戻せる?

監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
国際ロマンス詐欺にあってしまった! お金は取り戻せる?
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
詐欺は、社会における仕組みの変化や流行の影響を大きく受ける犯罪です。2000年初めころから全国で流行した「振り込め詐欺」も、通信手段の発達や高齢化社会の到来などが影響して誕生した犯罪だといえるでしょう。

近年になって多くの被害が発生している手口のひとつに「国際ロマンス詐欺」があります。国際ロマンス詐欺とは、ネットで知り合った外国人を称する犯人からお金をだまし取られる詐欺です。加害者の特定が難しく、被害の回復ができないことも珍しくありません。詐欺の被害にあった方が、「ロマンス詐欺の被害を回収できる」とうたっている法律事務所にお金を支払い、そのお金も戻ってこないという二次被害も発生しています。


2024年5月には、ロマンス詐欺解決の専用サイトを作っていた弁護士が、弁護士ではない業務委託先に対応を任せていた、いわゆる名義貸しをしたという疑いで、逮捕されました。


被害に遭ってしまった場合、だまし取られたお金を取り戻すことは可能なのでしょうか?本コラムでは「国際ロマンス詐欺」の概要に触れながら、だまし取られたお金を取り戻すことは可能なのか、被害を回復できるとすればどんな形で実現できる可能性があるのかなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、「国際ロマンス詐欺」とは?

「国際ロマンス詐欺」とは、ネット上で知り合いになった外国人を称する犯人と親しくなり、連絡を取り合ううちに送金を迫られる詐欺の手口です。
日本で流行するよりも前にアメリカやイギリスといった英語圏で流行した手口で、海外では「Romance Scam(ロマンス詐欺)」と報じられたことから、このような名称が用いられています。
まるでロマンス映画の主人公やヒロインになったかのような展開に心が踊らされてしまい、多額の被害に発展するケースが多い悪質な手口です。

  1. (1)国際ロマンス詐欺には2つの手口がある

    国際ロマンス詐欺には、詳しい手口を分析すると「ロマンス系」と「投資系」の2つの種類に大別されます。

    名称の由来ともなった典型的な手口が「ロマンス系」です。

    • インターネット上で海外の軍人や医師などを名乗る人物と親しくなり、連絡を取り合っていると「休暇を利用してあなたに会いに日本へ行く」などと言い出し、渡航費用の立て替えとして送金を求められる。
    • 海外の資産家を名乗る人物と親しくなり、結婚を匂わせる会話が繰り返されたうえで「全財産を入れたバッグが海外の税関で引っかかってしまった、解除するためには多額の関税を支払う必要があるが、解除されれば返済できる」などと言われ、送金を求められる。

    もうひとつの「投資系」では、次のような流れで大金をだまし取られます。

    • 海外の経営者と称する人物と親しくなり、連絡を取り合ううちに「ふたりの将来のために投資をしよう」などと持ち掛けられ、投資サイトを紹介される。最初のうちは少額の投資で利益が得られるが、さらに高額の投資を勧められて送金すると出金できなくなり、相手とも連絡が途絶える。

    どちらの手口も、海外の軍人・医師・資産家や経営者といった社会的な地位が高い人物を称する、甘い言葉や情熱的なモーションでその気にさせる、関税や資産凍結といった公的な手続きによって自由に資産を移動できなくなったと言い出す、一度でも送金するとさらに送金を求められてエスカレートするといった点が共通しています。

  2. (2)「私は大丈夫」は間違い! 国際ロマンス詐欺の被害に遭うきっかけ

    「私はだまされないから大丈夫」「詐欺は大金を持っている人だけ狙われるから私は被害に遭わない」と考えるのは間違いです。
    国際ロマンス詐欺の被害に遭うきっかけは、意外にも身近なところに潜んでいます。

    国際ロマンス詐欺に悪用されているのが、Facebook・InstagramなどのSNSやマッチングアプリです
    SNSやマッチングアプリでは、自分から近づかなくても友だち申請やフォロー、DM(ダイレクトメッセージ)機能を使って相手から近づいてきます。
    もちろん相手の目的はお金をだまし取ることなので、最初から警戒されてしまうお金の話を持ち掛けてはきません。
    最初のうちは身の上話や仕事の話などの雑談から始まり、親密度を高めてきます。
    こういった流れは、SNSやマッチングアプリではごく普通の展開であり、やり取りをしている最中に「怪しい」と察知するのは困難です。

    国民生活センターが公開している情報によると、令和3~4年度は特に国際ロマンス詐欺の被害が増加しています。
    特に投資系の被害が増えており、相談件数は30倍以上に膨れ上がりました。

    SNSやマッチングアプリは、基本的に匿名性が高い世界です。
    やり取りをしている相手の素性を確かめる術もないケースが多いので、ここまでで挙げた典型的なケースに少しでも似た状況があるなら、深刻な被害に遭う前にやり取りをやめたほうがよいでしょう。

2、国際ロマンス詐欺の被害額は取り戻すのが難しい

国際ロマンス詐欺の特徴のひとつが「だまし取られたお金を取り戻すのは難しい」という点です
この点は、国内で発生している一般的な詐欺と比べると格段に難易度が上がります。

  1. (1)海外を拠点にしており加害者の特定が難航する

    国際ロマンス詐欺の犯人の多くは海外居住の外国人なので、警察に被害を申告しても捜査が難航し、加害者の特定さえも難しいといったケースが多数あります。

    日本の警察は国際刑事警察機構(ICPO)に加盟しており世界各国の警察機構と連携していますが、捜査のすべてを任せられるわけではありません
    海外の通信会社などに情報開示を求めなければならない場面も多くありますが、照会のための交渉や翻訳した書面の作成に時間がかかるだけでなく、海外事業者だと照会しても回答が得られないこともあるので、なかなか捜査が進展しません。

    なお、国際ロマンス詐欺の犯人のすべてが外国人だと考えるのは間違いです
    令和4年8月には、海外で働いている日本人女性に成りすまして男女65人から合計約3億9000万円をだまし取った日本人が逮捕されました。
    日本人が関与していたり、海外居住を装っているが拠点は日本国内に存在していたりするケースもあることを考えれば、最寄りの警察に被害を申告することも無駄とはいえないでしょう。

  2. (2)法的手続きを取っても回収が難しい

    詐欺に遭った被害金を取り戻す方法として考えられるのは次の2通りです。

    • 加害者と交渉して任意の返金を求める
    • 裁判などの法的手続きを利用して回収する

    もっとも、国際ロマンス詐欺は加害者を特定することさえ困難なので、任意の交渉による解決はほぼ期待できません。
    また、警察の捜査や海外警察の協力によって加害者が特定されれば、法的手続きを進められますが、たとえ裁判所が支払いを命じてくれたとしても、加害者に財産がなければ回収できません。

    特に組織的な詐欺グループは集めた被害金を隠す術を心得ています。
    たとえ法的な手続きを取っても回収されないように財産を隠すので、被害者側が泣き寝入りをするしかないという結果に陥ってしまうケースもめずらしくありません。

3、一部被害回復が可能なケース① 自分の口座が凍結されてしまった場合

被害回復が難しい国際ロマンス詐欺ですが、その被害を一部分だけでも回復できるケースが2つありますので、解説していきます。
まずは「自分の口座が凍結されてしまった場合」です。

  1. (1)詐欺に遭ったのに自分の口座が凍結されてしまうのはどんなケース?

    国際ロマンス詐欺では、自分の口座が詐欺グループに悪用されてしまうことがあります。

    まず、加害者から「日本で買い物をしたいが外国人なので口座を持てない。知人のBさんから、あなた(Aさん)名義の口座にお金を送るので、そのお金で品物を買って送ってほしい」といった依頼を受けます。

    実は、ここで登場する「知人B」というのは、国際ロマンス詐欺に巻き込まれている別の被害者です。
    当然、被害者Aはそんな事実を知るはずもないので、言われたとおりに品物を購入して加害者が指定した住所宛てに送ります。

    その後、知人Bとして登場した被害者が詐欺被害に気付いて警察に申告すると、被害者Aの口座は「詐欺に使用された口座」となり、加害者につながる可能性があるとして凍結されてしまうのです。

  2. (2)加害者ではないことが証明できれば凍結解除が期待できる

    口座が凍結されると、その口座は自由に使えません。
    給与の振込先や生活にかかる振り込み・引き落としなどに使用している口座が凍結されてしまうと大変な不自由を強いられるので、なんとかして口座凍結を解除してもらいたいものです。

    実は、口座凍結は銀行などの金融機関が主体となって実施されます。
    警察からの要請や被害者からの連絡を受けて実施されるパターンが典型的ですが、これらの要請・連絡があったからといって必ず口座が凍結されるわけではありません

    あくまでも口座凍結の主体は金融機関なので、凍結解除も金融機関の判断に委ねられます。

    つまり、口座凍結の解除を実現するためには「国際ロマンス詐欺の加害者の口座ではない」という理解を金融機関に促さなくてはなりません。
    警察の対応結果を伝える、警察と金融機関の担当者同士による話し合いを促す、Bさんと和解をするなどの対応を取れば、口座凍結が解除され、従来どおり使用できるようになる可能性があります。

4、一部被害回復が可能なケース② 二次被害に遭った場合

国際ロマンス詐欺の被害回復を一部分だけでも実現できる可能性があるもうひとつのケースが「二次被害に遭った場合」です。

  1. (1)国際ロマンス詐欺で二次被害に遭うのはどんなケース?

    国際ロマンス詐欺からの被害回復を期待できる、一番有効な対策は「弁護士に相談・依頼すること」です。
    ただし、弁護士に対応を任せたからといって、必ず加害者を特定できるわけでも、被害金を取り戻せるわけでもありません
    この点は、東京弁護士会も「国際ロマンス詐欺の被害回復は現実的に難しく、多くの場合は被害をまったく回復できないか、ごく少額の回収にとどまる」という見解を示しています。

    そういった現実があるにもかかわらず、ほかの詐欺事件における回収実績を示して国際ロマンス詐欺の被害も高額回収を実現できるかのような勘違いを誘ったり、これから国際ロマンス詐欺案件を取り扱おうとしているのに「国際ロマンス詐欺の専門弁護士」などの不適切な表示をしたりといった広告が、特にウェブ上で散見されています。

    高額回収を期待して着手金を支払ったのに回収が実現せず着手金倒れになった、事件の処理や進み具合などの報告や説明がない、弁護士に相談しているつもりが実際は事務職員が対応しているといった苦情も寄せられており、弁護士会も調査の対象としているところです。

    そのため、弁護士を探す場合には、以下のことに注意しましょう。

    • 24時間365日対応、全国対応などをうたっている場合
    • この場合には、その法律事務所のホームページを確認しましょう。弁護士がひとりで運営している法律事務所の場合には、現実的に対応が難しいのに依頼を受任する可能性が高いため、依頼を見送ったほうが賢明です。

    • 法律相談に弁護士が出てこないまま、契約締結を求められた場合
    • 通常の法律事務所では、弁護士がお客さまのお話を伺い、どのような解決方法が可能かお話したうえで、委任契約を結びます。
      しかし、お客さまのお話を、弁護士ではない事務員がすべて聞き取り、契約を結ばせるという事例があるようです。もちろん、事務員が、お客さまのお名前や簡単な相談内容の聞き取りをすることはありますが、事件の解決方法を伝えたり、委任契約締結をすることはありません。これは弁護士にしかできない業務で、事務員がやってはいけないことなのです。こういった場合には、依頼を避けたほうがいいでしょう。

    • 電話やメール、LINEでの法律相談が可能な事務所の場合
    • 「電話やメール、LINEでの相談が可能」という法律事務所は多くありますが、相談しているのが弁護士なのか事務員なのか不明な場合は、確認をする必要があります。もし、相談しているのが事務員で弁護士に取り次いでもらえないという場合には、契約を取りやめたほうがよいでしょう。弁護士に相談しないまま、電子契約書にサインするよう求められた場合も同様です。
  2. (2)不適切な弁護士に支払った費用の回収が期待できる

    国際ロマンス詐欺の被害を個人で回復するのはほぼ不可能です。
    弁護士に相談し、法的な角度から被害回復のサポートを受けることは非常に大切ですが、確実に高額回収を実現できるかのようにうたう、弁護士が対応せず事務職員などが電話やチャットなどによって対応しているといった事務所は、弁護士業務に関する法律や規定に反しています。

    すでに高額の詐欺被害を受けているのに、過度な期待をさせたうえで契約を得る不適切な弁護士に対して、着手金などの費用を支払い二次被害が起きている場合は、支払った費用の返還を求めることが可能です

5、国際ロマンス詐欺の被害に遭ったら信頼できる弁護士に相談を

国際ロマンス詐欺の被害にあってしまうと、多額のお金をだまし取られるだけでなく口座凍結や不適切な弁護士費用の支払いといった二次被害にもつながるおそれがあります。

ひとたび被害に巻き込まれてしまうと多大な不利益を被ってしまうのでなんとかして回復を図りたいところですが、個人の力で解決するのは困難です。
二次被害に遭ってしまう可能性もあるので、4章で説明したような法律事務所にサポートを求めるのは避けるべきですが、それでは誰にサポートしてもらうのが適切なのでしょか?

  1. (1)国際ロマンス詐欺の被害に遭ったときの相談先

    国際ロマンス詐欺の被害を相談できる窓口は、次のような場所が挙げられます。

    • お住まいの地域を管轄する警察署や交番
    • 国民生活センター越境生活センター(CCJ)
    • 弁護士

    国際ロマンス詐欺は刑罰法令に照らすと刑法第246条の詐欺罪にあたる行為なので、警察に相談して被害を申告するのは当然です。
    ただし、警察は詐欺罪という犯罪事件を捜査して刑事手続きを進める機関であって、だまし取られた被害金を取り戻すなどの被害回復を手伝ってくれる機関ではありません。
    もちろん、身近な相談先として警察を活用することは大切ですが、被害者に寄り添ってサポートしてくれるわけではないと理解しておきましょう。

    国民生活センター越境生活センターは、国際的な消費生活相談の窓口として利用可能な相談先です。
    国際ロマンス詐欺の被害に関する相談も可能ですが、国民生活センター越境生活センターの目的は消費者と海外事業者との間で起きたトラブルの解決サポートであり、個人間で起きた詐欺被害の対応は対象外です。
    具体的な解決サポートは期待できないため、一般的なアドバイスを得るための相談先だと理解しておいてください。

  2. (2)弁護士に依頼すれば被害回復などのサポートが可能

    国際ロマンス詐欺の被害を回復したいと望むなら弁護士への相談を急ぎましょう。

    残念ながら、だまし取られたお金の全額回収は困難ですが、早い段階で弁護士に相談して状況を説明すれば、国際ロマンス詐欺であることを見抜けるので、被害拡大を抑えられます。

    もちろん、被害金の回収をあきらめるわけではありません。
    警察への被害届や刑事告訴をサポートしつつ、捜査の進展によって加害者が検挙されれば損害賠償請求や相手方からの示談の申し入れなどで回収の道も開けます。

    加害者または加害者側の協力者と誤解され口座が凍結されてしまった場合の、解除に向けた金融機関との交渉や、不適切な弁護士に対して支払った、着手金などの費用の回収を望むなら、国際ロマンス詐欺の対応実績をもつ、信頼できる弁護士への相談がおすすめです。

6、まとめ

SNSやマッチングアプリなどで外国人と恋愛関係になったが送金や投資サイトへの出資、荷物の受け取りなどを求められているという状況があるなら「国際ロマンス詐欺」の被害に遭っている可能性があります。

そもそも詐欺の被害金の回収は簡単ではありませんが、国際ロマンス詐欺は特に回収が難しいうえに、自分の口座が凍結されたり、弁護士費用で二次被害に遭ったりと、大きな損害につながってしまうケースも多いので、個人の力だけでは解決できません。

国際ロマンス詐欺の被害を回復したいなら、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
消費者トラブルの専門チームが、全国各地の拠点から集めた事例や情報をもとに解決をサポートします。
英語・中国語にも対応しているので、海外向けに照会や依頼を必要とする場面でもスムーズな対応が可能です。

国際ロマンス詐欺はSNSやマッチングアプリをきっかけにするケースが多い犯罪なので、全国どこにいても被害に遭う可能性があります。
ベリーベスト法律事務所は全国各地に事務所を設けているので、最寄りの事務所をご利用ください。
電話やメール、ZOOMでの相談も可能です。

まずはご自身の状況を整理する必要があるので、ベリーベスト法律事務所への相談をお急ぎください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
消費者トラブルへの知見が豊富な消費者問題専門チームの弁護士が問題の解決に取り組みます。
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