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霊感商法、霊視商法、開運商法で大金を払ってしまった!どうすればいい?
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)霊感商法では、ブレスレットなどアクセサリー・お札・壺・印鑑などのアイテムや、祈祷など、さまざまな物を購入させようとしてきます。また、マッチングアプリなどを用いて勧誘するケースも確認されています。実際に消費者庁のホームページに掲載されている調査によると、マッチングアプリで「商品やネットワークビジネス、投資、宗教等の勧誘を受けた」とアンケートに答えた人は、20代で17.6%、30台で12.5%、40代で16.7%となっています。どの年代でも、ある程度の割合で被害が確認されていますので、注意が必要です。
霊感商法の怖いところは、恐ろしい・正体が知れないという「見えないもの」が相手で一般的な金銭の価値に照らすことが難しいという点にあります。被害を食い止めるために大切なのは、少しでも「おかしい」と感じた時点で素早いアクションを起こすという心構えです。
本コラムでは「霊感商法」の手口や被害に遭っていると感じたときの相談先、霊感商法を規制する「不当寄附勧誘防止法」の概要などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
出典:消費者庁ウェブサイト(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/meeting_materials/assets/
internet_committee_220121_0002.pdf)
お気軽にご相談ください。
1、これって霊感商法? 霊感商法の代表的な手口
霊感商法をはじめとした悪徳商法には、被害に遭っている本人でさえも自分が被害を受けていることに気づかない、あるいは被害に気づくのが遅くなるという特徴があります。
これから挙げる手口に心あたりがあるなら、あなたは霊感商法の被害に遭っている可能性が高いでしょう。
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(1)あらゆる方法で悩みや不安を感じている人に近づいてくる
霊感商法の勧誘方法はさまざまです。
個人宅に訪問してくる、街頭で声をかけてくる、新聞や雑誌の折り込み広告を利用する、チラシやリーフレットをポストインする、サークル活動など別の関係から近づいてくるなど、あらゆる方法を使って悩みや不安を感じている人に近づいてきます。
消費者側の警戒心を和らげる手口も巧妙です。
霊感商法の多くは、最初は「無料」や「特別サービス」といったうたい文句を使って心理的なハードルを下げてきます。
「お金がかからないなら…」と話に乗ってしまったり、知り合いのメンツを立てる意味でも断りにくい状況を作ったりすることで、悪徳業者の思惑にはめられてしまうのです。 -
(2)予言や超能力など認識できない力を示して不安を増幅させる
「霊感商法」と呼ばれる理由は、商品やサービスを売り込む背景に予言や超能力といった認識できない力を示すところにあります。
- 「あなたは近い将来に良くないことに巻き込まれる」などと予言めいた事項を告げる
- 「あなたの守護霊が怒っている」「精霊の力を手に入れれば運気が上昇する」など、非科学的な力を示す
予言・超能力・霊視・憑依(ひょうい)などは、その能力や存在を確認できません。
事前に家庭環境や悩みごとをリサーチしておけば、その場で不安や悩みを言い当てることも難しくありませんが、わらにもすがりたい気持ちの人だと、まるで不思議な能力ですべてを見透かされたかのように感じてしまうのです。 -
(3)高額な商品の購入やサービスの利用をすすめる
相手のことを信用すると、ブレスレット・お札・つぼ・印鑑などの商品購入や、祈祷・除霊・お祓いといったサービスの利用を勧めてきます。
ここで勧められる商品やサービスは、一般的な市販品や同等のサービスと比べると格段に高額で、しかも特別な効果などは約束されていないものばかりです。
しかし、祈祷済み・除霊済み・エネルギー注入済みといった付加価値をプラスすることで過大な価格を請求してきます。
もし「高すぎる」と購入や利用をためらっても「あなたのため」など親身なふりをしたり、紹介元の友人や知人を介しながら何度も電話をかけてきたりして、断りにくい状況に陥ってしまうケースも多数です。 -
(4)一度でもお金を支払えば繰り返し支払いを要求される
商品の購入、サービスの利用にお金を支払っても、それで終わりではありません。
悩みや不安が解決しなければ「さらに強力な祈祷が必要だ」「いまやめるとさらに悪いことが起きる」などと吹き込まれ、さらに高額な商品・サービスを勧められてしまいます。
偶然にも悩みや不安が解決に向かえば「効果があった」と信じ込んでしまい、さらに効果が高いとされる商品・サービスをすすめられてしまうので、やはり逃がしてはもらえません。
結果、気づいたときには被害額が大きくなってしまい、多くの資産を失ってしまったり、ローン返済が苦しくなってしまったりといった事態に発展してしまいます。
2、霊感商法に遭ったらどうする? 相談窓口を紹介
霊感商法の被害に遭った、または「これって霊感商法?」と不安になったという場合は、ひとりで悩んでいても解決できません。
また、悪徳業者は消費者からのクレームにも慣れており、ずる賢い手段で丸め込もうとしてくるので、ひとりで悪徳業者と交渉したり、返金を求めたりといった対応も避けるべきです。
ここでは、霊感商法の被害に遭ったときに相談できる窓口を紹介します。
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(1)お住まいの地域を管轄する警察
警察といえば、刑事事件や交通事故などのトラブルに遭ったときの相談先というイメージが強いかもしれませんが、実は一般的な消費トラブルの相談も受け付けています。
ただし、あくまでも相談に対するアドバイスが得られるのみで、悪徳業者との交渉や返金に向けた手続きのサポートなどは受けられないので「誰かに相談したい」「被害に遭っているかわからないので、誰かの意見を求めたい」といった利用に限られるでしょう。
なお、霊感商法がそもそもまったくのうそを用いたものであれば、刑法の詐欺罪が成立する可能性があります。
また、脅し・押しかけなどがあれば脅迫罪や恐喝罪、住居侵入罪や不退去罪といった罪に問えるかもしれません。
特に、脅しや押しかけで身の危険を感じている場合は、直ちにお住まいの地域を管轄する警察に相談したほうがよいでしょう。 -
(2)消費者ホットラインなどの行政窓口
霊感商法をはじめとした消費生活におけるトラブルは、局番なしの188で全国どこからでも電話がつながる「消費者ホットライン」で相談できます。
消費者ホットラインに電話をかけると、トラブルの内容に応じて最寄りの消費生活センターなどの窓口につないでくれるので「どこに相談すればよいのかわからない」といった場合は頼りになるでしょう。
消費生活センターなどでは、個別にトラブルの内容を聴き取ったうえでどういった対処法があるのかをアドバイスしてくれるので、解決に向けて前進できるはずです。
また、令和4年11月には、霊感商法に関するさまざまなトラブルへの相談窓口として「霊感商法等対応ダイヤル」が開設されました。
法テラスが主導となって開設した相談窓口で、金銭のトラブルだけでなく、心の悩み、家族の悩み、児童虐待、就学や就労、生活困窮といった霊感商法によって引き起こされるさまざまなトラブルへの情報提供をおこなっています。
本人だけでなく、家族や未成年の子ども、海外からでも利用可能なので、積極的に利用するとよいでしょう。
霊感商法等対応ダイヤルは、電話またはメールから利用できます。- 電話:0120-005931(フリーダイヤル)
- 海外からの電話:050-3383-0010(問い合わせは無料、ただし通話料は自己負担)
- 受付時間:平日の午前9時30分から午後5時まで
メールでの相談は「霊感商法等対応ダイヤル」のホームページで受け付けています。
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(3)消費者トラブルに詳しい弁護士
悪徳業者との契約を解除したい、契約を取り消して支払ったお金を取り返したいと望む場合は、消費者トラブルに詳しい弁護士への相談をおすすめします。
これまでの詳しい経緯や状況を伝えれば、自分が霊感商法の被害に遭っているといえるのか、どうすれば支払ったお金を取り返せるのかなど、法的な角度からアドバイスが得られます。
弁護士が代理人となって悪徳業者と交渉したり、返金に向けた法的手続きを進めたりすることも可能なので、トラブル解決に向けて大きく前進できるでしょう。
3、霊感商法を規制する「不当寄附勧誘防止法」とは?
霊感商法は、背景に予言・超能力など認識できないものが存在しており、うそなのか本当なのかも断定できないため、解決が難しいという問題があります。
被害が増えたことで法律による規制もおこなわれてきましたが、十分とはいえない状況でした。
そこで、霊感商法を規制する法律として新たに令和5年6月1日から施行されたのが「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」、通称「不当寄附勧誘防止法」です。
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(1)不当寄附勧誘防止法が規制する6つの行為
不当寄附勧誘防止法では、霊感商法のなかでも「寄附」を焦点に、次の6つに該当する方法による勧誘行為を禁止しています。
- 「帰ってください」など退去を求めたのにその場から退去しない
- 勧誘を受けている場所から「帰ります」と退去の意思を示したのに退去させない
- 勧誘することを告げずに退去が難しい場所へと連れて行き、その場所で勧誘する
- 寄附を行うかどうかの相談の連絡を、威迫する言動を交えて妨害する
- 恋愛感情に乗じて「寄附しなければ別れる」など関係の破綻を告知する
- 霊感などによる予見として「あなたや家族が不幸になる」など重大な不利益を回避できないとの不安をあおる、またはそのような不安の回避のために寄附が不可欠である旨を告知する
以上の6項目に加えて「借金をすればまだ寄附できるでしょう?」などと寄附を目的とした借り入れを要求したり、「自宅や会社のビルを売却して寄附すれば運気が上がります」などと住居や事業用資産を処分したりして寄附の資金調達を要求したりといった行為も禁止です。
さらに、寄附の勧誘にあたっては、寄附者の自由な意思を抑圧して適切な判断が難しい状況に陥らせたり、寄附者やその家族の生活維持を困難にしたり、寄附する法人などを明らかにせずほかの用途に使われるかのような誤認をさせたりすることがないよう、十分に配慮する義務も課せられています。 -
(2)消費者を保護する体制が強化された
不当寄附勧誘防止法では、従来は保護が難しかったケースでも、法律によって消費者を保護できるように体制が強化されました。
まず、従来の法体制では、遺贈・債務免除による寄附といった行為は「消費者契約」に該当しないと考えられ、保護が難しかったという問題がありました。
本法では「消費者契約に該当しない寄附」にも取消権が設けられたので、従来から存在する「消費者契約法」とあわせて漏れのない保護が可能になっています。
また、寄附者が財産を寄附することで配偶者や子どもの生活が難しくなってしまう状況を回避するため、婚姻費用や養育費などを保全する体制も強化されました。
本法の施行によって、婚姻費用や養育費といった扶養義務にかかる定期金債権については、履行期が到来していなくても配偶者・子どもが本人に代わって取り消し・返還を請求できるようになっています。
なお、不当寄附勧誘防止法でいう寄附とは、無償で財産に関する権利を移転したり、無償で財産上の利益を供与したりといった行為だと定義されています。
つまり、たとえばブレスレット・お札・つぼ・印鑑などの商品購入をすすめるといった典型的な霊感商法の被害に遭った場合は、本法による保護を受けられません。
しかし、この点はすでに消費者契約法が改正されており「霊感等の知見を用いた告知による勧誘」を受けた場合の取消権が拡大されています。
従来、霊感などの知見を用いた告知による勧誘を受けた場合の取消権は、被害に遭ったと気づいたときから1年、契約締結時から5年でした。
令和5年1月5日からは、被害に遭ったと気づいたときから3年、契約締結時から10年に延長されたうえに、改正前に受けた勧誘の取消権も、時効が完成していなければ改正後の行使期間が適用されます。
悪質な霊感商法から消費者を守る法律は「不当寄附勧誘防止法」と「消費者契約法」の二本立てだとおぼえておきましょう。 -
(3)法律に違反して霊感商法をおこなった場合の罰則
不当寄附勧誘防止法の定めに違反して霊感商法をおこなったとしても、直ちに刑罰が科せられるわけではありません。
ただし、違反が認められた法人などは内閣総理大臣から報告を求められ、引き続き同じように違反を繰り返すおそれが著しい場合は、勧誘の停止など必要な措置を取るよう「勧告」を受けます。
さらに、勧告を受けたのに正当な理由なく措置を取らなかった法人などには、勧告にかかる措置を取るよう「命令」が下され、命令を受けた法人などは名称や所在地などが公表されます。
命令に違反すると1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
4、霊感商法に遭ったのでお金を取り返したい! 契約取り消しの流れ
霊感商法の被害に遭った場合は、契約取り消などの方法で解決できる可能性があります。
ここでは、霊感商法の悪徳業者からお金を取り返す方法について、契約取り消しの流れとともに確認していきましょう。
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(1)契約の取り消しが可能な期間かどうかを確認する
まずは、自分自身がどのような被害にあったのかに応じて、契約の取り消しが可能な期間にあたるかどうかを確認します。
消費者契約法によって保護される場合
被害に遭ったと気づいたときから3年、契約締結時から10年
不当寄附勧誘防止法によって保護される場合- 「霊感などによる予見」によって不安をあおる行為に該当する場合
被害に遭ったと気づいたときから1年、寄附の意思表示をしたときから5年 - その他5つに該当する場合
被害に遭ったと気づいたときから3年、寄附の意思表示をしたときから10年
どちらの法律が適用されるのかを個人で判断するのは難しいので、まずは弁護士をはじめ各種の相談窓口を活用しましょう。
- 「霊感などによる予見」によって不安をあおる行為に該当する場合
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(2)クーリングオフを利用する
霊感商法の勧誘方法が、電話・自宅への訪問などであった場合は、特定商取引法による「クーリングオフ」を利用できる可能性もあります。
ブレスレット・お札・つぼ・印鑑の購入などは、契約書を受け取った日から8日以内なら一方的に契約解除が可能です。
契約解除の方法は特に定められていませんが、いつ、誰が交わしたどのような内容の契約を解除するのか、相手がその告知を受け取ったのかといった点を証明する必要があるので、内容証明郵便を利用して告知するのが安全でしょう。
クーリングオフが可能な期限は短く、対象となる勧誘方法も限定されています。
クーリングオフを告知する書面の作成サポートも可能なので、弁護士への相談を急いでください。 -
(3)契約取り消しを求める
クーリングオフを利用できない場合は、消費者契約法や不当寄附勧誘防止法を根拠に契約取り消しを求めることになるでしょう。
どちらの法律を根拠とする場合でも、クーリングオフの際と同じでまずは内容証明郵便によって「法律の定めにもとづき契約を解除する」という意思を告げるのが一般的です。
その後は、業者側と返金に向けた話し合いを進めることになります。
悪徳業者の多くは、法律による根拠を示しても簡単には返金に応じてくれません。
さまざまな言い訳をしながら返金を拒んでくるので、弁護士を代理人として交渉を進めましょう。 -
(4)返金を求めて訴訟を起こす
法的な根拠があるにもかかわらず悪徳業者が返金を拒むようであれば、裁判所に訴訟を起こして解決を図ることになります。
訴訟を起こすと、裁判官が証拠をもとに返金が認められるべきかどうかを審理します。
お金を支払った事実や不当な勧誘を受けたといった事実も、訴えた側が証明する必要があります。こういった証拠を集め、裁判の中で証明することは、個人では難しいので、弁護士のサポートは欠かせません。
また、弁護士に依頼すれば、訴訟の対応などを任せることが可能です。
消費者契約に関する法律の知識や訴訟対応の経験が問われるので、消費者トラブルの解決実績が豊富な弁護士に対応を一任しましょう。
5、まとめ
「霊感商法」は、人の悩みや不安につけこんだ悪徳商法のひとつです。
予言や超能力といった認識できない力を背景にお金を支払わせる手口で、被害に遭っていることに気づけないまま、大金を支払ってしまうといったケースも少なくありません。
霊感商法による被害に遭ってしまった場合でも、消費者契約法のほか、新たに施行された不当寄附勧誘防止法による解決が期待できます。
勧誘の方法や契約の内容によって適用される法律や取り消し可能な期間が異なるので、返金を望むなら、まずは弁護士への相談を急ぎましょう。
霊感商法の被害にお悩みなら、消費者問題専門チームを有するベリーベスト法律事務所にご相談ください。
消費者トラブルへの知見が豊富な消費者問題専門チームの弁護士が問題の解決に取り組みます。
マルチ商法や霊感商法、悪徳商法などをはじめとした消費者トラブルでお困りでしたら、ぜひ、お気軽にご相談ください。