弁護士コラム
特定継続的役務提供
2025年04月30日
特定継続的役務提供

弁護士が解説! 特定継続的役務提供とは何か? その解約の仕方とは

監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
弁護士が解説! 特定継続的役務提供とは何か? その解約の仕方とは
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
「特定継続的役務提供」という言葉は、あまり聞きなれない方も多いと思います。特的継続的役務提供とは、特定商取引法に登場する言葉で、これに該当する取引であればクーリングオフをすることができます。

クーリングオフは、無条件で契約を解約できる非常に強力な手段ですが、期間の制限がありますので、期間内に確実にクーリングオフをするためにもクーリングオフのやり方などの基本的な知識を身につけておきましょう。

今回は、特定継続的役務提供とは何か、クーリングオフのやり方やトラブルに遭ったときの相談窓口などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、特定継続的役務提供とは?

特定継続的役務提供とは、どのようなものなのでしょうか。以下では、特定継続的役務提供の概要とクーリングオフとの関係について説明します。

  1. (1)特定継続的役務提供に該当する7つの取引形態

    特定継続的役務提供とは、長期間・継続的に役務(サービス)をすることと、そのサービスに対する高額な対価の支払いを約束する取引のことです。特定商取引法では、特定継続的役務提供に該当する取引形態として、以下の7つを定めています。


    特定継続的役務提供


    これらの役務(サービス)のうち、一定期間を超え、一定金額を超える支払いをする契約については、クーリングオフの対象になります。


    業種 期間 金額
    エステティックサロン 1か月を超えるもの いずれも5万円を超えるもの
    (入学金、受講料、教材費、施設利用料、関連商品の販売などを含む)
    一定の美容医療
    語学教室 2か月を超えるもの
    家庭教師
    学習塾
    パソコン教室
    結婚相手紹介サービス

    ただし、「学習塾」と「家庭教師」については、浪人生のみを対象としたコースや小学校・幼稚園のいわゆる「お受験」対策のためのコースは対象外になります。ご自身が契約した学習塾や家庭教師がクーリングオフの対象に含まれるかどうかわからないときは行政窓口や弁護士に相談するようにしましょう。

  2. (2)クーリングオフが適用されない場合がある点に注意

    特定継続的役務提供に該当する取引であったとしても、以下のような場合には特定商取引法が適用されませんので、クーリングオフをすることはできません

    • 営業のためまたは営業として、契約を結んだとき
    • 海外にいる人へ販売したり、または役務の提供をするとき
    • 国、地方公共団体が販売または役務の提供をするとき
    • 特別法に基づく組合や公務員の職員団体・労働組合が、その組合員へ販売または役務の提供をするとき
    • 事業者が、その従業員へ販売または役務の提供をする場合

    また、長期にわたり継続的に役務(サービス)を提供する内容の契約には、トレーニングジムや整骨院などさまざまなものが存在します。しかし、特定継続的役務提供に該当する取引は、上記7つの取引類型に限られますので、それ以外の長期継続的役務については、クーリングオフの規定は適用されないことに注意しましょう。
    なお、クーリングオフについては、第2章で詳しく説明します。

2、クーリングオフのやり方

クーリングオフとは、一定期間内であれば無条件に契約を解除できる制度です。特定商取引法の特定継続的役務提供に該当する取引であれば、クーリングオフをすることができます。

  1. (1)クーリングオフの前に確認すべきこと

    クーリングオフをする前に、まずは以下の事項を確認しておきましょう。

    ① 法定書面はあるか
    特定継続的役務提供に該当する取引を行う場合には、事業者には一定の事項を記載した書面の交付が義務付けられています。このような書面を「法定書面」といいます。
    法定書面には、概要書面(特定商取引法第42条第1項)と契約書面(特定商取引法第42条第2項)の書面の2種類があります。

    この内、契約が成立したことと契約の内容をそれぞれ明らかにする契約書面が取り交わされていないという場合には、クーリングオフの期間は進行しませんので、いつでもクーリングオフが可能です。つまり、契約書面が取り交わされていない場合は、契約からしばらくの期間が経っていても契約がなかった状態にして、返金を求めることができる可能性があります。どのような場合にクーリングオフができるかは、個別の事情によって変わりますので、弁護士や行政窓口に相談してみると良いでしょう。

    ② 契約者が18歳以上であるか
    未成年者は、法律上単独で法律行為をすることができず、未成年者が行った法律行為は、取り消すことができます。
    そのため、契約者が18歳未満の場合には、クーリングオフ期間が経過したとしても、未成年者取り消し権を行使することで、契約を取り消すことが可能です。

    ③ 相手方の連絡先がわかるか
    クーリングオフは、書面または電磁的記録により、特定継続的役務提供契約をした事業者に対して送付または送信しなければなりません。そのため、まずは相手方の連絡先がわかるものがあるかを確認してみましょう

    基本的には法定書面に事業者の連絡先が記載されていますので、手元に法定書面がある方は法定書面を確認するようにしてください。
    契約書面に事業者の連絡先が記載されていないときは、不備のある契約書面になりますので、クーリングオフ期間は進行せず、いつでもクーリングオフをすることができる可能性があります

  2. (2)クーリングオフの具体的なやり方

    クーリングオフの方法には、書面による方法と電磁的記録による方法の2種類があります。以下では、それぞれのやり方について説明します。

    ① 書面によるクーリングオフの方法
    書面でクーリングオフを行う場合は、ハガキに以下の事項を記載し、事業者に対して送付します。

    • 契約年月日
    • 商品名
    • 契約金額
    • 販売者
    • 契約を解除する旨
    • 作成年月日
    • 消費者の住所、氏名

    なお、ハガキを送付する際は、必ず両面をコピーして、簡易書留または特定記録郵便で送るようにしてください。
    ハガキの書き方でお困りでしたら、クーリングオフ解説ページにある書き方参考例をご参照ください。

    ② 電磁的記録によるクーリングオフの方法
    電磁的記録によるクーリングオフとは、メール、FAX、SNS、ウェブ上の専用フォームなどを利用して、クーリングオフをする方法です。
    専用フォームがあればそれを利用してクーリングオフができますが、専用フォームがないときは、メールに以下の事項を書いて送ることでクーリングオフをすることができます。

    • 契約年月日
    • 商品名
    • 契約金額
    • 販売者
    • 契約を解除する旨
    • 作成年月日
    • 消費者の住所、氏名

    なお、電磁的記録によるクーリングオフの場合も証拠を残すために、専用フォームの画面をスクリーンショットしたり、メールのバックアップを取ったりするようにしてください。

  3. (3)クーリングオフをする際の注意点

    クーリングオフをする際には、以下の点に注意が必要です。

    ① クーリングオフには期限がある
    クーリングオフには期限がありますので、期限までにクーリングオフの意思表示を行わなければなりません。
    特定継続的役務提供に該当する取引のクーリングオフ期限は、契約書面を受け取った日を入れて8日以内と定められています。この期限内にクーリングオフを行うようにしてください。

    ② 支払停止の抗弁やクーリングオフなども併せてやった方がよい場合もある
    役務提供事業者に対する支払いをクレジットカードの分割払いで行った場合は、クレジットカード会社に支払停止の抗弁をしたほうが良い場合があります。それは、支払った総額が4万円以上(リボ払いの場合は3万8000円以上)の場合です。

    支払い停止の抗弁とは、商品やサービスに問題がある場合に、消費者と事業者との問題が解決するまでの間、クレジットカード会社への支払いを停止できる権利です。
    クレジットカード会社に対する支払いを勝手にやめてしまうと、延滞によりブラックリストに掲載されてしまうリスクがあるため注意が必要です。

    また、支払いについて、ローンを組むなどした場合(「個別信用購入あっせん」という契約になります。)、ローン会社に対して、クーリングオフが可能な場合もあります
    クーリングオフの方が、返金を求めることができるなどの点で良い部分がありますが、認められるかどうかについて、特定継続的役務提供のクーリングオフと同様に、一定の条件があります。
    クーリングオフをするべきか、支払停止の抗弁をするべきか、どうすれば良いか分からない場合は、弁護士に相談してみるのも一つです。

    ③ 契約に関連して買った商品もクーリングオフ可能な場合がある
    「サービスを受けるにあたって必要だ」と言われて買ったがまだ使っていない商品があれば、それもクーリングオフの対象となります。ただし、買うか買わないか本人の意思で決められる状況だった場合には、対象外です。

3、中途解約のやり方

クーリングオフ期間が経過後は、クーリングオフをすることができません。しかし、中途解約により事業者との契約を解約できる可能性があります。

  1. (1)クーリングオフ期間期間経過後でも中途解約ができる

    中途解約とは、将来に向かって契約を解除することです。クーリングオフ期間が経過してしまうと、無条件での契約の解約はできませんが、一定の違約金を支払えば、中途解約をすることができます。

    特定継続的役務提供に該当する取引は、長期かつ継続的な取引になりますので、不要な契約を続けていると、消費者の経済的な負担も大きくなってしまいます。一定の違約金はかかりますが、不要な契約であれば中途解約を検討してみてもよいでしょう。

  2. (2)中途解約にかかる違約金の上限

    特定商取引法では、中途解約にかかる違約金について上限を設けています。具体的な金額は、中途解約時期に応じて、以下のようになっています。

    【契約の解除がサービスの提供が始まる前】
    契約の解除がサービス開始前である場合は、以下の額が上限になります。


    業種 違約金
    エステティックサロン 2万円
    一定の美容医療 2万円
    語学教室 1万5000円
    家庭教師 2万円
    学習塾 1万1000円
    パソコン教室 1万5000円
    結婚相手紹介サービス 3万円

    【契約の解除がサービスの提供後】
    契約の解除がサービス開始後である場合は、すでに提供されたサービスの金額と以下の額の合計額が上限になります。


    業種 違約金
    エステティックサロン 2万円、または契約残額の10%に相当する額を比較して、いずれか低い額
    一定の美容医療 5万円、または契約残額の20%に相当する額を比較して、いずれか低い額
    語学教室 5万円、または契約残額の20%に相当する額を比較して、いずれか低い額
    家庭教師 5万円、またはその契約における1か月分の授業料相当額を比較して、いずれか低い額
    学習塾 2万円、またはその契約における1か月分の授業料相当額を比較して、いずれか低い額
    パソコン教室 5万円、または契約残額の20%に相当する額を比較して、いずれか低い額
    結婚相手紹介サービス 2万円、または契約残額の20%に相当する額を比較して、いずれか低い額
  3. (3)中途解約以外にも契約の効力を否定できる可能性あり!

    クーリングオフや中途解約以外にも、契約締結にあたって一定の事情が認められる場合には、特定商取引法や消費者契約法に基づく取消権の行使、民法による詐欺・錯誤に基づく取消権の行使により契約の効力を否定できる可能性があります。

    クーリングオフ期間が経過してしまったからといって、すぐにあきらめるのではなく、まずは行政窓口や弁護士に相談することをおすすめします。

4、相手との間でトラブルがあったら?

事業者との間で特定継続的役務提供に関するトラブルが生じたときは、どうしたらよいのでしょうか。以下では、トラブルが生じた相談できる窓口を紹介します。

  1. (1)特定継続的役務提供のトラブルに関する相談窓口

    特定継続的役務提供のトラブルを相談できる窓口としては、主に以下の3つがあります。

    ① 行政窓口
    特定継続的役務提供のトラブルを相談できる行政窓口としては、「消費生活センター」があります。

    消費生活センターでは、消費者問題に詳しい専門の相談員が無料で相談にのってくれますので、トラブルの解決方法についてのアドバイスが受けられます。
    消費者ホットライン「188」に電話をすれば、最寄りの消費生活センターを案内してもらえますので、どこにあるかわからないというときは、消費者ホットラインに電話をしてみるとよいでしょう。

    ② 警察
    事業者から虚偽の事実を告げて契約させられた、クーリングオフを妨害されたなどの行為は特定商取引法に違反し、刑事罰の対象になります。

    このような違法な消費者被害に遭ったときは警察に相談することもできます。
    警察に被害届を提出すれば、警察による捜査が開始し、違法な行為をした事業者を検挙してくれる可能性があります。

    ③ 弁護士
    事業者との消費者トラブルに関しては、法律の専門家である弁護士にも相談することができます。

    弁護士に相談をすればトラブル解決に向けたアドバイスをしてくれるだけでなく、代理人として事業者との交渉や訴訟などの法的手続きに対応してもらうことができます。
    事業者を相手に自分ひとりで対応するのが不安だという場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。

  2. (2)【ケース別】トラブルに遭ったときに相談すべき窓口

    以下では、トラブルの状況別に相談すべき窓口を説明します。

    ① 相手が脅迫などしてきてクーリングオフや中途解約に応じない
    相手が脅迫などをしてクーリングオフや中途解約に応じてくれないという場合は、消費者個人で対応するのは困難ですので、弁護士や行政窓口に相談してみるとよいでしょう。
    弁護士であれば代理人として事業者と交渉ができますので、スムーズにクーリングオフや中途解約を実現することが可能です。
    また、事業者の言動により身の危険を感じるときは警察に相談することも有効です。

    ② そもそも手続きのことがわからない
    消費者トラブルに遭ったとしても、自分のした契約が特定商取引法上のどの類型に該当するのか、クーリングオフができるのか、どのようにクーリングオフをすればよいのかなどわからないことも多いと思います。

    このような場合にはすぐに行政窓口や弁護士に相談するようにしましょう。
    行政窓口であれば無料で相談に応じてくれますが、基本的には自分で手続きをしなければなりません。相手が怖くて連絡をしたくないという場合には、費用がかかりますが弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

5、まとめ

特定継続的役務提供となる契約は7つあり、クーリングオフをするなら契約書面を受け取った日を入れて8日以内に行わなければならないなど期間も限られています。

しかしながら、法律及び省令で定められた記載事項を書いた契約書の交付が必要であり、きちんとした契約書を交付されていない場合や、そもそも契約書を交付されていない場合は、契約から8日を過ぎていてもクーリングオフができる場合があります。

そのため、「この契約は何かおかしい」「契約をやっぱりやめたい」と思った場合には、できるだけ早く行動をすることをおすすめします。また、クーリングオフの期限が過ぎてしまった場合でも、絶対に契約をやめることができないというわけではありません。契約書面や契約手続に不備があるかどうか、実際にどう対応すべきか、というのは、自己判断するのは難しいことも多いため、一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
消費者トラブルへの知見が豊富な消費者問題専門チームの弁護士が問題の解決に取り組みます。
マルチ商法や霊感商法、悪徳商法などをはじめとした消費者トラブルでお困りでしたら、ぜひ、お気軽にご相談ください
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