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結婚相談所との契約はクーリングオフできる? 条件や方法を弁護士が解説
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
クーリングオフや中途解約の方法が分からない場合は、弁護士にご相談ください。
本記事では、結婚相談所と取り交わした契約をクーリングオフする方法や、それ以外に結婚相談所の契約を取り消す方法などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
お気軽にご相談ください。
1、結婚相談所の契約は、原則としてクーリングオフできる
結婚相談所のサービスは、「特定継続的役務提供」に該当する可能性があり、特定商取引法に基づくクーリングオフが認められる可能性があります。
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(1)結婚相談所のサービスは「特定継続的役務提供」|クーリングオフが可能
「特定継続的役務提供」とは、事業者が、以下に挙げるサービスを、一定の金額を超えて、定められた期間を超えて長期・継続的に、消費者に提供するものを指します。
上で紹介したサービスは、実際に受けてみないと効果が分からず、受けてみても効果が思わしくないケースが少なからずあります。
特定商取引法では、サービスを受ける消費者を保護するため、特定継続的役務提供についてクーリングオフや中途解約などの特別なルールを設けています。
結婚相談所など、婚活に取り組む人に対して相手を紹介するサービスは、一部の例外を除いて「特定継続的役務提供」に該当し、一定期間のクーリングオフが認められています。 -
(2)クーリングオフの期間は、契約書の受領日から8日間
特定継続的役務提供を行おうとする事業者は、そのサービスを受けようとする人に対し
・契約を結ぶ前および契約を結んだ後
・遅れることなく
・契約事項を記載した書面
を渡さなければなりません(特定商取引法第42条第1項~第3項)。
対してクーリングオフの期間は
・契約を結んだ後
・遅れることなく
・取り交わすべき書面(=契約書面)を購入者が受け取った日から数えて8日間
です(同法第48条第1項)。
購入者は、期間内に事業者に対してクーリングオフ通知を発送すれば、発送日をもってクーリングオフ(退会)ができます(同条第3項)。すでに支払った代金は全額返還を請求できるほか、違約金などを支払う必要もありません。
なお、この期間は、契約書面が交付されなければ進行しません。したがって、購入者が契約書面の交付を受けていない場合は、いつでもクーリングオフをすることが可能です。
また、契約書が交付されていても、法定の記載事項(法第42条第2項の事項)が記載された契約書でなくてはなりませんから、同条項に定められた事項に不備があったり、虚偽記載がなされていたりすれば、クーリングオフをすることができる可能性があります。
法定の記載事項については、役務提供事業者の氏名・名称、住所、電話番号、法人代表者氏名、契約申込み又は締結担当者氏名、契約年月日、役務の種類、携帯、方法、提供時間数・回数・その他の数量の総計、役務の提供期間等、非常に多岐にわたります。
たくさん書かなくてはいけないがゆえ、実際に契約書のようなものが交付されていても、これが、法律上交付しなければならない契約書の交付として、不十分な点があることはあり得ますので、気になる場合は、弁護士に相談してみるのも一つでしょう。 -
(3)例外的にクーリングオフができないケース
しかし、結婚相談所のサービスが以下のいずれかに該当する場合は、例外的に特定継続的役務提供に当たらず、クーリングオフが認められません。
- サービスの提供期間が2か月以下
- 金額が5万円以下
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(4)クーリングオフ通知の記載事項・発送方法
もしクーリングオフしたいと思った場合には、以下の事項などを記載した書面を準備しましょう。
クーリングオフの効力は通知を発した時点で発生するので、発送日を立証できるようにしておくことが大切です。通知は、特定記録郵便・書留・内容証明郵便・電子メールなど、送った日時が証明できる方法で発送しましょう。
クーリングオフ通知は自分で発送することもできますが、発送方法が分からない場合は、弁護士や行政の窓口にご相談するのもおすすめです。 -
(5)クーリングオフをした後の注意点
発送したクーリングオフ通知の写しや送付の記録は、5年間保管しましょう。後に結婚相談所側がクーリングオフできないと言って揉めた場合に、証拠として用いることができます。
また、結婚相談所の料金をクレジットカードで決済し、まだ口座から引き落とされていない場合は、カード会社に対して「支払停止の抗弁権」に基づいて引き落としの停止を求めましょう。
クレジットカードの利用者は、結婚相談所側に対して主張できる事由を、カード会社に対しても主張することができます(割賦販売法第30条の4)。クーリングオフをした場合は、利用料金の引き落としの停止を請求することが可能です。
2、クーリングオフの期間が過ぎても、結婚相談所の契約は中途解約できる
契約書を受け取った日から8日間を経過した場合は、結婚相談所と交わした契約をクーリングオフすることはできません。
ただし、結婚相談所のサービスが特定継続的役務提供に該当する場合は、クーリングオフ期間が過ぎたとしても、中途解約(過去の契約は取り消せないが、契約の効力を未来に向かってなくす)することができます(特定商取引法第49条)。
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(1)結婚相談所の契約を中途解約する方法
特定継続的役務提供に当たる、結婚相談所サービスの契約を中途解約する場合は、運営会社に対して解約通知を発送します。解約通知の主な記載事項は、以下のとおりです。
- 宛先
- 契約を中途解約する旨
- 契約を特定する情報(契約年月日、契約の内容、契約金額、運営会社の名称など)
- まだサービスを受けていない分の代金の返金を請求する旨
- 通知の発送日
- 発送者の住所、氏名
クーリングオフとは異なり、中途解約については、解約通知が結婚相談所側に届いた時点で効力が発生します。そのため、配達証明付内容証明郵便など、相手方に書類が届いた年月日を証明できる方法で、解約通知を発送しましょう。
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(2)中途解約時の違約金には上限が設けられている
特定継続的役務提供の契約を中途解約する際には、クーリングオフとは異なり、事業者に対して違約金や損害賠償を支払わなければなりません。ただし特定商取引法により、違約金や損害賠償には上限が設けられています。
結婚相談所の契約を中途解約する場合の違約金等の上限額は、以下のとおりです。① 契約の解除が、サービスが始まる前の場合
3万円
② 契約の解除が、サービスが始まった後の場合
ア、提供された役務の対価に相当する額 と、
イ、2万円または契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額
の合計
3、クーリングオフ以外に、違約金なしで結婚相談所の契約を取り消せる場合
結婚相談所の契約のクーリングオフ期間が過ぎてしまい、中途解約をする場合は、結婚相談所側に対して違約金等を支払わなければなりません。
しかし、以下の方法により、結婚相談所の契約を取り消せることがあります。契約の取り消しが認められれば、支払い済みの料金は全額返還を請求できる上に、違約金等を支払う必要もありません。
弁護士に相談して、契約の取り消しができるかどうかを確認しましょう。
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(1)消費者契約法に基づく契約の取り消し
結婚相談所側から以下のような不当な勧誘を受けた場合は、契約を取り消せる可能性があります(消費者契約法第4条)。
・重要なことについてうそを言う(重要事実の不実告知)
(例)料金体系や違約金などの契約条件について、虚偽の説明をした。
・将来どうなるか分からないことに対して、断定的に言い切る(将来における変動が不確実な事項に係る断定的判断の提供)
(例)「絶対に結婚できる」などと言って入会を勧誘した。
・購入者の不利益になることを言わない(不利益事実の不告知)
(例)解約時には違約金が発生することを一切説明しなかった。
・不安をあおる勧誘
(例)「1年以内に結婚できなければ、この先人生真っ暗」などと言って入会を勧誘した。
・霊感その他の実証困難な特別な能力を掲げて不安をあおる勧誘(霊感商法)
(例)「1年以内に結婚相手を見つけなければ、幽霊に取りつかれる」などと言って入会を勧誘した。
など -
(2)詐欺に基づく契約の取り消し
結婚相談所側にだまされて契約を締結した場合は、詐欺に基づき契約を取り消すことができます(民法第96条第1項)。
たとえば「成婚率90%」と言って入会を勧誘したものの、実際には成婚率が数%程度にとどまる場合などには、詐欺に基づく取り消しが認められる可能性が高いでしょう。
4、結婚詐欺やデート商法の被害に遭ってしまった場合の対処法
その他、婚活をしている人などをターゲットにした、結婚詐欺やデート商法についてはどう対処するべきなのでしょうか。
※アプローチしても結婚してくれないというだけでは、結婚詐欺には当たりません。金品をだまし取る目的があることが必要です。
・デート商法:恋愛感情につけ込んで、何らかの契約を締結させる悪徳商法
マッチングアプリなどを使って婚活をしていると、結婚詐欺やデート商法に遭ってしまうことがあるようです。
結婚詐欺やデート商法の被害に遭ってしまったら、契約の取り消しやクーリングオフなどで対処し、被害金の回収を試みましょう。
クーリングオフの方法や注意点、マッチングアプリの詐欺などについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
5、まとめ
結婚相談所と締結した契約は、クーリングオフができる可能性があります。クーリングオフには一定の期間制限がありますが、契約書が交付されていなかったり、契約書が交付されていても不備があったりすれば、いつでもクーリングオフすることができます。契約から時間が経っており、サービスを受けているものでも、クーリングオフができる可能性があるかもしれません。
この手続きは自力で行うこともできますが、不安な場合は弁護士や行政の窓口に相談してみましょう。
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