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弁護士が解説! もし不動産投資詐欺にあってしまった場合の対処法
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
もし不動産投資の詐欺に遭ってしまったら、なるべく早く弁護士へご相談ください。
本記事では不動産投資詐欺について、典型的な手口や弁護士に依頼する際の流れなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
お気軽にご相談ください。
1、不動産投資詐欺の典型的な手口
不動産投資を勧誘する詐欺業者は、さまざまな手口を用いてターゲットをだまそうとしてきます。不動産投資詐欺の典型的な手口としては、以下の例が挙げられます。
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(1)手付金詐欺
「手付金詐欺」とは、不動産の購入希望者から受け取った手付金を持ち逃げする詐欺の手口です。
実際には存在しない、または存在するとしても売り出していない不動産などの購入を勧誘し、購入希望者から手付金の支払いを受けた後、そのお金を持ち逃げします。
特に、現地を確認せずに不動産を購入すると、手付金詐欺にだまされやすいので注意が必要です。 -
(2)入居状況詐欺
「入居状況詐欺」とは、実際には空室が多い物件を、満室に近い状態を装って購入させるマンション投資詐欺の手口です。
事前にサクラ(≒偽物の入居者)を入居させて満室に見せかけ、十分な収益が期待できる物件であることを装い、売買価格をつり上げます。売買契約を締結した後、サクラが一斉に退去し、空室だらけの状態に戻ってしまいます。投資家は期待した収益を得られず、大損をしてしまうというパターンです。 -
(3)ロマンス詐欺
「ロマンス詐欺」とは、恋愛感情につけ込んで金品をだまし取る詐欺の手口です。
ロマンス詐欺は、現金をだまし取る際によく用いられる手口ですが、不動産投資詐欺にも用いられています。
詐欺業者はSNSなどを通じてターゲットに近づき、巧みな言葉で恋愛感情を抱かせます。そして「将来に備えた投資をするため」などと称して、実在しない不動産を購入させたり、実際にはほとんど価値のない不動産を高額で購入させたりして、購入が完了した後に行方をくらましてしまいます。 -
(4)海外不動産詐欺
「海外不動産詐欺」とは、海外の不動産を購入させる詐欺の手口です。
海外の不動産は、近年の資産価値の高騰によって値上がりの傾向にあり、日本でも投資対象として注目している人が多いです。
詐欺業者は、海外の不動産投資に対する興味につけ込んで、言葉巧みに購入を勧誘します。しかし、投資対象とされた不動産は存在しないか、または購入価格よりも大幅に低い価値しかなく、購入者は大損してしまいます。 -
(5)住宅ローンの不正融資を申し込ませる
住宅ローンを不正に申し込ませて投資用不動産を購入させることも、広い意味では不動産投資詐欺の一種です。
住宅ローンは、通常の不動産ローンに比べて金利などが優遇されていますが、購入者が自ら居住する不動産を購入する場合にしか利用できません。
投資用不動産を購入するために住宅ローンを組んだことが債権者の金融機関に判明すれば、一括返済を求められてしまいます。
詐欺業者は、金利などの条件面で有利であるなどと言って、本来は利用できない住宅ローンを借りさせて、自社や提携会社から不動産を購入させます。
不動産が売れた詐欺業者は、後に住宅ローンに関するトラブルが発生したとしても関知せず、購入者が一方的にトラブルに巻き込まれてしまいます。 -
(6)二重譲渡詐欺
二重譲渡詐欺とは、ひとつの物件を複数人に売る詐欺のことです。不動産を売買する場合に所有権が主張できるのは、登記を自分の名義に変更したときです。購入代金を支払ったとしても、登記が別の人の名義になってしまうと所有権を主張できません。
不動産の売買の際には事前に登記を確認し、登記移転手続きを確実に行うことが肝心です。
2、不動産投資詐欺に遭ってしまったら、弁護士に相談を
不動産投資詐欺の被害に遭ってしまったら、速やかに専門家や行政機関へ相談しましょう。
不動産投資詐欺に関する相談窓口としては、以下の例が挙げられます。
不動産投資詐欺への対処法について、無料でアドバイスを受けられます。消費生活センターや消費者ホットライン、国土交通省や都道府県などの窓口があります。
・警察
詐欺業者を摘発するため、詐欺罪などに関する捜査を行ってもらえます。最寄りの警察署で相談を受け付けているほか、「#9110」に電話をかけて相談することもできます。
・弁護士
詐欺業者に対する返金請求などについて相談できます。弁護士は、相手方との交渉や訴訟などを代行することができます。
特に、詐欺の被害金を取り戻したいと考えているなら、弁護士へ相談しましょう。
確実に返金を受けられるわけではありませんが、弁護士は少しでも返金の可能性を高めるため、専門的知識を生かして対応します。
3、不動産投資詐欺被害の解決を、弁護士に依頼する際の流れ
不動産投資詐欺の被害に遭った方が、弁護士に依頼してから解決に至るまでの流れを紹介します。
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(1)具体的な対応内容の提案・決定
正式に依頼する前に、相談者と弁護士の間で不動産投資詐欺に関する事実関係を確認し、対応の方針を話し合います。
弁護士は相談者に対して、メリットやデメリットを説明しつつ、選択肢を示します。相談者は弁護士のアドバイスを踏まえて、希望する形で解決できる可能性が高いと思われる方法を選択し、対応の方針を決めます。 -
(2)弁護士への依頼・委任契約の締結
詐欺被害への対応を弁護士に依頼する場合は、事前に話し合って決定した対応方針を反映した委任契約を締結します。
委任契約には、弁護士が行う対応の範囲や、弁護士費用の金額・計算方法などが記載されます。認識と契約内容の間に食い違いがないことを確認した上で、委任契約を締結しましょう。 -
(3)詐欺業者への連絡・返金に関する協議
委任契約の締結後、弁護士が詐欺業者に対して連絡します。詐欺業者から返答があったら、返金に関する協議を行います。
弁護士が代理人として詐欺業者とのやり取りを代行するため、精神的な負担が大幅に軽減されます。
弁護士は、クーリングオフや契約の取り消しなどを法的な根拠に基づいて主張し、詐欺業者に対して返金を請求します。 -
(4)訴訟の提起
返金に関する協議がまとまらないときは、裁判所に訴訟を提起して返金を求めます。
訴訟は、裁判所で行われる公開の紛争解決手続きです。詐欺など、契約の取り消しや解除などの要件を立証できれば、裁判所が被害金の返金を命ずる判決を言い渡します。
訴訟手続きは専門的であり、証拠に基づいて厳密な主張・立証を行わなければなりません。弁護士は訴訟手続きに精通しているので、依頼すれば適切に対応してもらうことができます。 -
(5)解決|判決・和解・強制執行など
詐欺業者との交渉や訴訟を経て、被害金を返してもらえることが確定すれば、解決となります。詐欺業者が訴訟の判決を無視して返金に応じない場合は、裁判所に強制執行を申し立てることも可能です。
解決の内容は事案によって異なり、また必ず希望したとおりに解決できるとは限りません。しかし弁護士に依頼すれば、できる限りの対応によって返金を受けられるように尽力してもらえます。
4、不動産投資詐欺に関する最近の裁判例を紹介
東京高等裁判所令和元年9月26日判決・先物取引裁判例集82巻178ページの事案では、原告が、不動産販売の営業担当者から勧められるまま投資用マンションを2件購入したものの、購入後、担当者から説明されていなかった損害が生じたことについて、その損害は営業担当者が説明すべきリスクを説明しなかったことによって生じたと主張し、担当者を雇用している不動産会社を被告として、使用者責任に基づく損害賠償を請求しました。
裁判所は、投資の経験がなく自己資金が少ない原告に多額のローンを組ませるなら、リスクを説明する義務があったが、マンション投資のメリットだけ強調するなど、説明義務違反があったことと認定しました。
なお、本件においては、高校教師として稼働して、それなりの社会経験があり、また、投資に充てられる自己資金が多くないことも分かっていたことを踏まえ、書面の取り交わしなどを通じて投資用マンション購入に伴う危険性を認識する機会、きっかけは十分にあったというべきであるものとして、原告の過失が認められ、過失相殺が認められています。
本事案のように、詐欺とまでは言えなかったとしても、事業者側が不動産投資のリスクについて十分な説明を行わなかった場合には、説明義務違反が認められ、返金請求や損害賠償請求が認められる余地があります。
このようなことがあった場合には、あきらめずに弁護士へご相談ください。
5、まとめ
不動産投資詐欺にはさまざまな手口があり、気づかないうちにだまされてしまう方が少なくありません。不動産投資の勧誘を受けた際に、少しでも怪しいと思ったら、すぐに周囲の人間に相談するだけでなく、場合によっては弁護士や行政機関などにも相談しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、不動産投資詐欺に関するご相談を随時受け付けております(有料)。お気軽に当事務所へご相談ください。

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