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自分や家族が原野商法や、その二次被害にあったら、すぐやるべきこと
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)原野商法の被害に遭わないようにするため、よくある手口を理解しておきましょう。そして、万が一原野商法の被害に遭ってしまったら、クーリングオフなどの対応を検討しましょう。
本記事では原野商法について、よくある手口や被害に遭った場合の対処の仕方をベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
お気軽にご相談ください。
1、原野商法とは?
「原野商法」とは、値上がりの見込みがほとんどない山林や原野を、不動産会社などが不適切な勧誘によってだまして買わせる悪徳商法です。
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(1)原野商法の手口
原野商法による被害は、特に1970年代から1980年代にかけて多発しました。
原野商法の典型的な手口は、価値が上がる可能性がゼロに近い山林や原野について、開発計画や道路建設などの予定をでっちあげ、「将来確実に値上がりする」などと言って購入を勧誘するというものです。
実際には、開発計画や道路建設などの予定は架空の話であり、購入した山林や原野が値上がりすることはなく、購入者は多額の損害を被ってしまうというケースが多発しました。 -
(2)原野商法の二次被害が急増中
近年、過去に原野商法の被害に遭った方が、悪徳商法の二次被害に遭うケースが報告されています。
たとえば、悪徳業者は、原野商法にだまされて購入した山林や原野を「高く買い取る」などと話を持ちかけます。
山林や原野の処分ができず困っている方は、悪徳業者の求めに応じて、よく確認せず契約書にサインしてしまうことがあるようです。その契約書には、別の山林や原野を高額で買い取る旨が記載されており、再び無価値の土地を押し付けられてしまいます。
そのほか、「山林や原野を買いたい人がいる」と称して高額の調査費用を請求されたり、長年放置している別荘地(実際には山林や原野)の管理費を請求されたりする被害事例があります。
このような二次被害に遭わないため、所有している不動産にすり寄って勧誘してくる業者は、真っ先に悪徳業者ではないかと疑いましょう。
2、原野商法に遭ったかもと思ったら、すぐやるべきこと
原野商法の被害や、その二次被害に遭ったのではないかと感じた場合には、クーリングオフができるかどうかを検討し、できる場合は速やかにクーリングオフ通知を発送しましょう。
対処法が分からない場合は、行政の窓口や弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)クーリングオフの可否を確認する
宅地建物取引業者(不動産業者)が、自らが売主となる宅地または建物を、会社の事務所等以外の場所で、購入の申し込みまたは売買契約の締結をした場合には、一定の期間に限りクーリングオフが認められます(宅地建物取引業法第37条の2第1項)。
クーリングオフができる期間は、クーリングオフができること、およびその方法を書面で教えてもらった日から8日です。クーリングオフができることを知らせる書面をもらっていない場合は、クーリングオフ期間が進行しないため、いつでもクーリングオフができます。
ただし、すでに宅地または建物の引き渡しを受け、かつ代金の全部を支払ったときは、クーリングオフが認められません。
売主が宅地建物取引業者でない場合も、訪問販売や電話勧誘販売で、山林や原野の購入を勧誘された場合は、契約書を取り交わした日から8日間に限りクーリングオフをすることができます(特定商取引法第9条第1項、第24条第1項)。
契約書を取り交わしていない場合は、クーリングオフ期間が進行しないため、いつでも申込みの撤回が可能です。
有効にクーリングオフを行えば、売買契約がペナルティなしで解除されるため、業者に対して売買代金全額の返還を請求できます。 -
(2)速やかにクーリングオフ通知を発送する
山林や原野の売買契約をクーリングオフする場合は、上記の期間内にクーリングオフ通知を発送しなければなりません(宅地建物取引業法第37条の2第2項、特定商取引法第9条第2項・第24条第2項)。
特定記録郵便や簡易書留などの発送記録が残る方法で、期限に間に合うよう速やかにクーリングオフ通知を発送しましょう。 -
(3)行政の窓口や弁護士に相談する
クーリングオフの方法が分からないときは、消費生活センターや消費者ホットラインに相談しましょう。クーリングオフに必要な対応などについてアドバイスを受けられます。
また、弁護士に相談することも選択肢のひとつです。弁護士に依頼すれば、クーリングオフやそのほかの対応により、原野商法の被害金を取り戻すために尽力してもらえます。
3、クーリングオフ以外に、原野商法の被害を回復する方法はある?
クーリングオフができない場合でも、原野商法の被害を回復する方法は残されています。以下の方法を検討してみましょう。
ただし、悪徳業者と連絡がとれなくなってしまい、被害金を回収できなくなるケースも多い点にご留意ください。
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(1)契約取り消し・代金の返還請求
悪徳業者からうそを言われたり、不利益な事実を隠したりするなど不適切な勧誘を受けた場合には、消費者契約法や特定商取引法に基づいて契約を取り消せることがあります。
また、悪徳業者にだまされて山林や原野を購入した場合には、詐欺により契約を取り消すことができます(民法第96条第1項)。
山林や原野の売買契約を取り消した場合、売買代金全額の返還を請求可能です。 -
(2)損害賠償請求
売買の相手方である悪徳業者と連絡がとれなくなっても、売買に関与した宅地建物取引士が分かっている場合には、名義を貸しただけであっても、宅地建物取引士に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
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(3)所有権抹消登記手続請求
価値のない山林や原野は、所有しているだけで固定資産税がかかります。
固定資産税の負担を免れるためには、山林や原野の所有権登記を抹消しなければなりません。売買契約の取り消しや解除を理由に、所有権抹消登記手続請求訴訟を提起しましょう。この方法であれば、悪徳業者の行方が分からない場合でも、山林や原野の所有権登記を抹消することができます。
訴訟は専門的な手続きなので、弁護士のサポートを受けながら対応しましょう。
4、高齢の家族の詐欺被害を防ぐ方法は?
高齢のため認知機能が低下してくると、原野商法を含む詐欺や悪徳商法の被害に遭いやすくなります。
高齢の家族が詐欺や悪徳商法の被害に遭わないようにするためには、普段からのコミュニケーションや心がけが大切です。また、認知症などで判断能力が低下している家族については、後見制度の利用も検討しましょう。
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(1)普段からコミュニケーションをとる
高齢の家族がいる場合は、健康状態をチェックするため、普段からまめにコミュニケーションをとることが大切です。認知機能の低下が見られる場合には、悪徳商法の被害に遭わないように注意喚起するとともに、財産を守るための対策を考えましょう。
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(2)不動産に関する話は必ず家族に相談すると約束する
不動産売買のような高額の取引を、認知機能が低下しがちな高齢者が単独で行うのは非常に危険です。他人から不動産に関する話を持ちかけられたら、必ず家族に相談することを約束しておきましょう。
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(3)もうけ話の勧誘は断るように念押しする
高齢者に対してもうけ話を持ちかける人は、ほぼ悪徳業者です。もうけ話に乗ると、巧みな話術でお金を奪われてしまいます。
高齢の家族に対しては、もうけ話が来ても必ず断るように念押ししておきましょう。 -
(4)後見制度の利用を検討する
すでに認知機能が低下している家族については、法定後見制度(成年後見・保佐・補助)の利用を検討しましょう。法定後見制度は、法律行為をする場合の本人のサポート役を決める制度です。これにより、詐欺や悪徳商法の被害に遭うリスクを抑えられます。
また、将来的な認知症の進行に備えたい場合は、弁護士などと任意後見契約を締結することも有力な選択肢です。実際に判断能力が低下した際に、任意後見人が本人の代理で契約締結などができるようになります。
後見制度の利用については、弁護士にご相談いただければ、アドバイス可能です。関心のある方は弁護士へご連絡ください。
5、まとめ
原野商法の被害やその二次被害は、悪徳業者が行方をくらましてしまい、回復が難しいケースも多いです。
しかし、行政の窓口や弁護士に相談すれば、被害回復への道が見えてくることもあります。原野商法にだまされて悩んでいる方は、諦めることなく相談してみましょう。
ベリーベスト法律事務所でも、消費者被害に関する有料相談を受け付けているので、原野商法などの被害にお悩みの方はご相談ください。
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