弁護士コラム
PL法
2024年11月20日
PL法

買ったもので怪我をした! PL法で製造元を訴えることはできる?

監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
買ったもので怪我をした! PL法で製造元を訴えることはできる?
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
PL法(製造物責任法)は、製造物の欠陥が原因で、人の命や体、財産に損害が発生したときに、製造業者に損害賠償請求ができる、と規定している法律です。

万が一、購入した商品の不具合により怪我をした場合は、PL法に基づく責任追及を検討してみるとよいでしょう。

今回は、買った物で怪我をした場合、PL法で製造元を訴えることが可能かについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、買った商品で事故が起きた場合はどうすればいい?

購入した商品が原因で事故が生じた場合、どのように対処したらよいのでしょうか。以下では、商品の欠陥を理由にメーカーに補償を求める手順を説明します。

  1. (1)なるべく証拠を残す

    購入した商品に何らかの欠陥が生じて怪我をしたときは、そのときの商品の状態を写真や動画に残しておきましょう。PL法で製造業者などに責任を問う場合、商品に「欠陥」があったと証明する必要があります。事故発生当時の商品の状態は、欠陥を立証する際の重要な証拠になりますので、しっかりと残しておきましょう。

  2. (2)行政窓口や弁護士に相談する

    購入した商品の欠陥により怪我をしたとしても、一般の方ではどのような方法で、そして誰に対して補償を求めればよいかわからないと思います。初動を誤ると今後の補償手続きで不利益を被る可能性もありますので、適切な行動をとるためにも、早めに専門家に相談するのがおすすめです。

    商品の欠陥に関する相談窓口としては、行政の相談窓口や弁護士があります。どちらでもアドバイスを受けることができますが、今後、製造業者などとの交渉を予定しているのであれば、お客さまの代理人として行動できる弁護士に相談するのがよいでしょう。

  3. (3)事故による怪我の治療をする

    商品の事故により怪我をした場合には、すぐに病院を受診して怪我の治療をしましょう。
    事故発生から時間が経過してからの受診だと、当該事故による怪我であるかを疑われるリスクがありますので、早めに病院に行くのが重要です。

    なお、治療費などは後日メーカーに請求できる可能性があります。領収書などはしっかりと保管しておきましょう

  4. (4)メーカーや販売店に対して調査を依頼

    購入した商品で事故が生じたときは、事故の原因を明確にする必要がありますので、メーカーに対して調査を依頼しなければなりません。調査のためにメーカーに商品を送付する際には、預かり証などの取り交わしも忘れずに行いましょう。もし警察や消防に商品を提出することになった場合にも、同じく預かり証の取り交わしをしておきましょう。

  5. (5)メーカーとの交渉や訴訟などをする

    メーカーによる調査の結果、商品の欠陥が明らかになったときは、商品の欠陥によって発生した損害をメーカーに請求していくことになります。まずは、交渉により治療費や慰謝料などの賠償金の支払いを求めていくことになりますが、交渉により解決できないときは、最終的に訴訟を提起します。

2、欠陥商品から消費者を守る! 「PL法」を詳しく解説

商品による欠陥で怪我をしたような場合には、PL法によって保護を受けられる可能性があります。以下では、このPL法について詳しく説明します。

  1. (1)PL法とは

    PL法は、製造物の欠陥が原因で、人の生命や身体・財産に損害が出た場合に、製造業者などに対して、「製造物責任」に基づいて損害賠償請求ができる、と規定した法律です。
    たとえば、購入したTVに欠陥があり、TVから発火して家が燃えたり怪我をした場合に、TVの製造業者が負う責任が「製造物責任」です。

    PL法が制定される前は、このような事故が遭った場合、民法に基づき、製造業者に損害賠償請求が行われていました。民法を根拠として損害賠償をするためには、消費者側で製造業者に過失があることを証明する必要があります。しかし、製品に対する詳しい情報は、すべて製造業者が保有しているため、過失の立証が難しく、製造業者への責任追及は極めて困難だったのです。

    欠陥商品による事故が多発しているのに、民法のせいで製造業者へ責任を問うことが難しいことが社会問題となり、消費者側の立証責任を軽くすることを目的としてPL法が制定されました。PL法では、製造業者に過失があるかどうかに関わらず、製品に「欠陥」があれば損害賠償責任を負わせることが可能になりました。

  2. (2)PL法の対象となる「製造物」とは?

    PL法では、対象となる製造物を「製造または加工された動産」、としています。
    すなわち、家電製品、自動車、自転車、日常生活用品、スポーツ用品、おもちゃ、衣類、食料品など身の回りにあるほとんどの製品は、PL法の対象です。

    他方、以下のようなものは、PL法の対象外となります。

    • 未加工の動産:水産物、農産物、畜産物、原油など
    • 不動産:土地、建物
    • サービス:修理、エステ、理美容、医療、クリーニングなど
    • 無対物:電気、ソフトウエアなど
  3. (3)PL法で責任を負うのは誰?

    PL法では、製造物責任を負うのは仕事として物を作ったり、加工したり、輸入したりする者と規定されています。また、そのような製造業者でなくても、以下に該当する者はPL法に基づいて製造物責任を負います

    • 自分の名前などを、作った業者として製造物に記載した者
    • 製造物にその製造業者と間違って判断できてしまう表示をした者
    • 実質的にその製品を作った業者と分かる表示をした者

3、PL法で製造物責任を問うには、3つの証明が必要

PL法で製造業者などに責任を問うためには、以下の3つの証明が必要になります。

  1. (1)製造物に欠陥があった

    製造物の「欠陥」とは、製造物が通常あるはずの安全性を持っていないことを指しています。欠陥の有無は、製造物の特性、通常こう使うだろうと予想される使い方、製造業者が製品を引き渡した時期などを鑑みて、ケースごとに判断されます。

    なお、ここでいう「欠陥」は、一般的に以下の3つに分類されます。

    • 製造上の欠陥:設計・仕様どおりに作られておらず安全性を欠く場合
    • 設計上の欠陥:設計に問題があり、安全性を欠く場合
    • 警告上の欠陥:使用上の指示や警告が不十分な場合
  2. (2)拡大損害が発生した

    PL法で損害賠償請求ができるのは、「拡大損害」が出たときです。

    拡大損害とは、欠陥品が原因で人の生命や身体に被害が生じたことや、欠陥品以外の財産に損害が出たことを意味します。そのため、損害がその製品だけに留まったときは、PL法の対象にはなりません

  3. (3)製造物の欠陥と、損害に因果関係がある

    PL法に基づいて責任追及するためには、欠陥が原因で損害(拡大損害)が起こったと証明しなければなりません。すなわち、欠陥と損害発生との間に因果関係がある場合に限られます。

    たとえば、製造物自体には欠陥がなかったものの、その後の修理、加工、改造などが原因で損害が出た場合には、因果関係はありませんので、損害賠償請求はできません。

4、PL法に基づき損害賠償が認められた裁判例

ここまで、買った製品に問題があった場合に初めに何をするべきか、そもそもPL法とはどんな法律なのか解説してきました。では、実際、PL法に基づいて製造物責任が認められたのは、どのようなケースだったのでしょうか。

小麦由来成分含有せっけんアレルギー事件|東京地裁平成30年6月22日判決
【事案の概要】
小麦由来成分が含まれたせっけんを使ったことにより、アレルギー症状を発症した被害者らが、製造業者らを訴えた事例です。

【裁判所の判断】
この裁判では、被告が製品の引き渡し当時、このせっけんに欠陥があったと認識できたかどうかが争点になりました。実はPL法では、問題となった欠陥が、製品をお客さまに引き渡した当時の科学技術で予想ができないようなものであれば、責任を免れることができる、と規定されています(これを「開発危険の抗弁」といいます)。
裁判所は、被告が責任を免れるためには、引き渡し時の科学や技術に関する知見から推測しても、欠陥を認識できなかったと被告が証明する必要があるとしました。その上で、当時この欠陥を認識できなかったとはいえず、責任を免れることはできないと判断しました。

上記は一例ですが、PL法に基づき損害賠償が認められた事例はたくさんあります。もし買った製品で怪我などした場合には、泣き寝入りせず、行政の窓口や弁護士などにご相談ください。

5、まとめ

買った商品で事故が起こった場合、PL法に基づき損害賠償を受けられる可能性があります。PL法に基づいて損害賠償請求をする場合には、製品の欠陥を立証できれば賠償金の支払いを受けられます。ご自身で製造業者と交渉するのが困難な場合は、弁護士に対応を任せることができますので、弁護士に相談するのもおすすめです。購入した製品で拡大損害が発生したときは、ベリーベスト法律事務所までご相談ください(相談は有料です。)。

なお、家電製品のADR(裁判所の外で公平な第三者を介して話し合いをする手続き)であれば、上記で説明した拡大損害がなくとも利用可能です。ただし、対象商品が限られるなど利用には条件もありますので、その点をしっかりと確認しましょう。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
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