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弁護士が解説! 契約の取り消しができる場合はどんな場合?
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)そのような場合には、一定の要件を満たすことが条件になりますが、契約の取り消し・無効・解除などにより契約をなかったことにすることが可能です。
今回は、契約の取り消しができる場合や、契約をなかったことにできるその他の方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
お気軽にご相談ください。
1、契約取り消しには種類や条件がある
契約締結に至る経緯に一定の事情がある場合には、契約を取り消してなかったことにできます。契約の取り消しの種類にはさまざまなものがありますが、以下では、「消費者契約法による取り消し」と「民法による取り消し」の2種類を取り上げて説明します。
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(1)消費者契約法による取り消し
消費者契約法とは、事業者による不当な契約から消費者を守るために作られた法律です。事業者と消費者との間には、持っている情報やトラブルになった時の交渉力に圧倒的な格差があるため、不利な立場にある消費者が、不当な契約を強いられる可能性があります。そこで、消費者契約法では、消費者を保護するために、以下のような事情がある場合に契約の取り消しを認めています。
① 不実告知
重要事項について、事実と異なる内容を言った場合など
② 断定的判断の提供
将来の見通しが不確実な事項について、確実であると言った場合など
③ 不利益事実の不告知
消費者に利益になる旨は言いながら、不利益な事実はあえて言わなかった場合など
④ 過量契約
取引する商品の分量などについて、当該消費者にとって通常必要とされる量を明らかに超えていることを知りながら、勧誘した場合など
⑤ 不退去
事業者が自宅に居座り、消費者から「帰ってほしい」と言われたにもかかわらず帰らなかった場合など
⑥ 退去妨害
消費者が「帰りたい」と意思表示したのに、帰してくれなかった場合など
⑦ 不安をあおる告知
社会生活の経験が乏しいことによる消費者の不安をあおり、裏付けになる根拠がないのにその不安の解消に必要だとして商品やサービスを勧めた場合など
⑧ 恋愛感情などに乗じた人間関係の濫用
社会生活の経験が乏しい消費者が、契約を勧誘している事業者に好意を抱いていることを知り、事業者も消費者に同様の感情を抱いていると勘違いしていることに乗じて、商品やサービスを契約しなければその関係性が破綻すると告げた場合など
⑨ 加齢などによる判断力低下を不当に利用
加齢や障害により判断力が低下している消費者が、現在の生活の維持に不安を抱いていると知りながら、その不安をあおり、裏付けになる根拠がないのに、契約しなければ現在の生活が維持できないと告げた場合など
⑩ 霊感などによる知見を用いた告知
霊感などの特別な能力により、消費者又はその親族の重要事項に重大な不利益が生じることを回避できないと不安をあおり、契約が必要である旨を告げた場合など
⑪ 契約締結前に債務の内容を実施する
契約締結後に負うことになる債務の全部または一部を契約締結前に実施して、実施前への原状回復を著しく困難にした場合など -
(2)民法による取り消し
民法では、契約の一般的なルールが定められています。消費者契約法は、消費者と事業者との契約について適用される法律ですが、民法はそのような制限なく広く契約関係一般に適用されます。
民法では、以下のような取消事由を定めています。① 未成年者取り消し
契約時の年齢が18歳未満であった場合、法定代理人の同意を得ずにした契約は、例外的な場合を除き、原則として取り消すことができます。
② 錯誤
契約に関する重要な事項について、本人が相手に表示した意思表示と本人の意思が食い違っていた場合には、錯誤を理由に契約を取り消すことができる場合があります。
③ 詐欺
契約相手から騙されて意思表示をした場合には、詐欺を理由に契約を取り消すことができます。
2、契約取り消し以外にも、契約をなくす方法はある
ここまでは契約の「取り消し」について説明してきましたが、契約をなくす方法には契約の取り消し以外にも、以下のような方法があります。
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(1)支払停止の抗弁
クレジットカードを利用して商品やサービスを購入した場合には、支払停止の抗弁を主張することで、クレジットカード会社からの代金の請求があっても支払いを拒むことができます。
支払停止の抗弁権とは、消費者が商品を購入した販売店等に対して代金の支払いを拒否することができる法的な原因がある場合に、同原因が存在することをもってクレジットカード会社への代金の支払いを拒否することができる権利のことです。
クレジットカード会社に何も主張せずに支払いを止めてしまうと、延滞として扱われてしまいますが、支払停止の抗弁を主張することでこのような事態を回避することができます。 -
(2)契約の無効
契約の取り消しをする場合には、相手方に契約を取り消す旨の意思表示をして初めて契約の効力をなくすことができますが、契約の無効原因が存在する場合には、そのような行為をしなくても当初から契約の効力は発生しません。
以下では、契約が無効となる代表的なケースを消費者契約法と民法に分けて紹介します。
① 消費者契約法上の無効原因
以下のような契約条項は消費者に不利なものといえますので、消費者契約法の規定により無効になります。- 事業者の損害賠償責任を免除する条項
- 事業者の免責の範囲が不明確な条項
- 消費者による解除権を放棄させる条項
- 消費者が成年後見等の審判を受けたことのみを理由に契約を解除する条項
- 消費者が負う違約金などが高すぎる条項
- 法律上の原則と比較して、信義則に反して消費者が一方的に不利になる条項
② 民法上の無効原因
以下のような事情がある場合には、民法の規定により契約が無効となります。- 公序良俗に反する内容の契約(例:愛人契約や反社会的行為を内容とする契約など)
- 意思能力がない当事者による契約(例:重度の認知症の高齢者が契約をした場合など)
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(3)契約の解除
相手が契約にしたがった債務の履行をしない場合には、契約の解除をすることができます。これを債務不履行解除といいます。債務不履行解除ができる代表例としては、以下のものが挙げられます。
- 商品などの引き渡しがないとき
- 契約した商品と引き渡された商品が違うとき
- 商品などに瑕疵があるとき
- 商品などの引き渡しが遅れ、催告しても引き渡しされないとき
また、契約をしたときの取引形態が以下のいずれかに該当する場合には、クーリングオフにより、無条件で契約の申込みの撤回や契約の解除をすることができます。
- 訪問販売(家庭訪問販売、キャッチセールス、アポイントメントセールスなど)
- 電話勧誘販売(事業者が電話をかけて勧誘する方法など)
- 連鎖販売取引(マルチ商法による取引など)
- 特定継続的役務提供(エステティックサロン、語学教室、学習塾など)
- 業務提供誘引販売取引(内職商法・モニター商法による取引など)
- 訪問購入
クーリングオフの期間は、取引形態により異なりますが、契約書など、クーリングオフについての説明が記載された法定書面を受け取った日を含めて8日または20日以内となっています。ただし、交付された書面が法律上の要件を満たしていない場合には、その書面を受け取っていてもクーリングオフの期限のカウントダウンが始まっていませんので、書面を受け取ってから8日または20日を経過していても契約を解除することができます。
3、消費者問題を弁護士に相談するメリットとは
2章まで契約をなかったことにできるさまざまな方法を解説してきましたが、どのような方法を使うべきか、明確には分からない方も多いかと思います。ご自身で判断できないときは、専門家である、弁護士への相談がおすすめです。
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(1)状況に応じた最適な手段を選択できる
契約の取り消し・無効・解除などのうち、どの手段を選択するべきかは、お客さまの状況により変わります。また、契約を取り消す場合には法定の期限内に行う必要がありますので、適切な手段を選択するには、法的知識と経験が不可欠となります。
弁護士に相談をすれば、状況に応じた最適な手段をアドバイスしてもらえますので、対応を誤るリスクはありません。 -
(2)相手とのやり取りを一任できる
契約の取り消し、無効、解除をする際には、相手との交渉が不可欠となります。相手が素直に契約をなかったことにしてくれればよいですが、簡単に応じてくれないときはご自身で相手を説得していく必要があります。交渉に不慣れな方だとうまく説得できなかったり、かえって相手から不利な条件を押し付けられてしまうリスクもありますので、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼すれば相手とのやり取りを一任できるので、本人の負担はほとんどありません。また、法的観点から適切に対応してくれますので、希望どおりの結果が得られる可能性が高くなるでしょう。
なお、弁護士への相談・依頼は、基本的には有料となります。費用負担をかけずに相談したいのであれば行政の窓口を利用するというのも一つの方法です。ただし、行政の窓口では相談には応じてくれるものの、実際の対応はご自身で行わなければなりませんので注意が必要です。
4、弁護士に相談した場合の解決の流れ
弁護士に契約のトラブルを相談し依頼した場合、弁護士はお客さまの代理人となり、以下のような流れで解決まで導きます。
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(1)弁護士に相談
契約に関してトラブルが生じたときは、まずは弁護士に相談をします。
弁護士への相談は、基本的には予約制となっていますので、事前に法律事務所に連絡をして相談の予約を入れるようにしましょう。
また、弁護士との相談の時間は限られていますので、効率的な相談を行うためにも相談内容は時系列に紙などにまとめておくのがおすすめです。また、相談に関連する資料がある場合には、すべて持参するようにしてください。 -
(2)委任契約の締結
弁護士との相談の結果、事件処理の方針や費用に関して納得ができたら、弁護士と委任契約を締結します。
相談時に委任契約まで至るケースもありますが、その場で契約する必要はありませんので、一度持ち帰って家族で相談してから契約することもできます。 -
(3)相手との交渉
弁護士と正式に契約を締結したら、弁護士が事件処理に着手します。
契約に関するトラブルであれば契約の相手方が存在しますので、まずは相手との交渉により解決を試みます。相手との交渉で合意が成立すれば、弁護士が合意内容をまとめた合意書を作成します。
その後、合意内容にしたがって義務の履行がなされれば事件終了となります。 -
(4)交渉がまとまらないときは法的手段
相手との交渉では解決に至らないときは、調停や裁判といった法的手段による解決を試みます。
調停や裁判の手続きについても、基本的には弁護士に一任できますので、本人の負担はほとんどありません。
5、まとめ
契約に関してトラブルが生じたときは、自分だけで判断して行動するのではなく、弁護士や行政の窓口に相談することが大切です。
弁護士への依頼は、有料であるものの代理人として契約相手との交渉を任せられますので、ストレスなくトラブルを解決することができますので、自分で対応するのが負担に感じる方は弁護士への相談をおすすめします。
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