弁護士コラム
マッチングアプリ
詐欺
2024年09月18日
マッチングアプリ
詐欺

マッチングアプリ詐欺の被害に気が付いた場合、まずやるべきこと

監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
マッチングアプリ詐欺の被害に気が付いた場合、まずやるべきこと
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
マッチングアプリの普及により初対面の男女が気軽に出会うことができるようになりました。しかし、マッチングアプリで出会う相手は素性がわからないため、場合によっては詐欺の被害に遭うことも少なくありません。

マッチングアプリ詐欺の被害に遭わないためにも、代表的なマッチングアプリ詐欺の手口を理解しておくとともに、万が一詐欺に遭ってしまったときでもすぐに対応できるよう具体的な対処法を覚えておきましょう。

今回は、マッチングアプリ詐欺の種類・特徴と被害に気付いたときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
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1、マッチングアプリ詐欺の種類と特徴

マッチングアプリを利用した詐欺にはどのようなものがあるのでしょうか。
以下では、マッチングアプリ詐欺の種類と特徴を説明します。

  1. (1)デート商法

    デート商法とは、恋愛感情を利用して、言葉巧みに商品購入を促し、高額な商品やサービスの契約を締結させる悪徳商法の一種です。「恋愛商法」や「恋人商法」と呼ばれることもあります。

    複数回デートを重ねて、相手に恋愛感情が芽生えてきたタイミングで、商品の購入を持ちかけてきますので、断り切れず被害に遭ってしまう人も多いです。商品の購入以外にもネットワークビジネス(マルチ商法)への勧誘やぼったくりバーへの連れ込みなどの被害もあるようです。

  2. (2)投資詐欺

    投資詐欺とは、投資名目や投資で得られた利益の出金名目で金銭などをだまし取る詐欺の手口です。

    マッチングアプリを利用した投資詐欺では、被害者に恋愛感情を抱かせて投資に誘導し、金銭をだまし取るという特徴があります。一般消費者を対象とした投資詐欺に比べて、恋愛感情を利用するマッチングアプリ詐欺は、被害者が詐欺被害に気付いても、だまされたことを認めたくないという思いから、被害の発覚が遅れるケースが多いです。

  3. (3)ロマンス詐欺(国際ロマンス詐欺)

    ロマンス詐欺とは、相手に恋愛感情を抱かせて投資や送金を持ちかける詐欺の手口です。相手が外国人や海外居住者を名乗っている場合は、国際ロマンス詐欺といわれます。

    マッチングアプリは、登録に身分証明書などが要求されないこともあるため、身分を偽って登録し、ロマンス詐欺の手段として利用されることがあります。マッチングアプリで出会った相手から以下のようなメッセージが送られてきたら、ロマンス詐欺の可能性がありますので注意が必要です。

    • ふたりの将来のために投資でお金を増やそう
    • 会いに行きたいから旅費を送ってほしい
    • プレゼントを贈るから手数料を支払ってほしい

2、マッチングアプリで詐欺にあったと気が付いたときに、まずやるべきこと

マッチングアプリで詐欺にあったかもしれないと感じたときは、以下のような対応が必要になります。

  1. (1)証拠を集める

    マッチングアプリで会った相手にだまされているかもしれないと感じたときは、今後の被害回復や責任追及のために詐欺の証拠を集めておきましょう。

    マッチングアプリの仕様によっては、アカウントの削除によりメッセージの履歴も削除されてしまうものもありますので、相手とのやり取りについては、スクリーンショットなどの機能を利用して証拠化しておくことが大切です。

    また、相手との会話内容も重要な証拠となることがありますので、会話内容はICレコーダーなどを利用して残しておきましょう。その他にも、銀行の振込明細書、クレジットカードの利用履歴、領収書なども証拠になりますので、処分せずに保存しておくようにしてください。

  2. (2)警察に相談する

    マッチングアプリによる詐欺は、犯罪に該当するものもありますので、警察に相談するのも有効な対処法となります。

    警察に被害届を提出して、詐欺罪として捜査・立件されれば、相手の身元が特定できる可能性があります。ただし、警察は、犯人を捕まえるのが仕事ですので、だまし取られたお金を取り戻してくれるわけではありません。その点、注意が必要です。

  3. (3)弁護士に相談する

    マッチングアプリによる詐欺でお金をだまし取られてしまったという場合には、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。

    実際に相手からお金を取り戻すためには、まずは相手を特定することが必要になりますが、マッチングアプリで登録している名前などは偽名である可能性があります。個人では相手を特定できず、泣き寝入りしなければならないケースも多いですが、弁護士であればさまざまな調査方法を駆使して、相手を特定できる可能性があります。

    相手の特定ができれば、弁護士による返金交渉や訴訟提起などにより被害の回復を図ることができますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

3、もしマッチングアプリの詐欺の相手が特定された場合に、できること

マッチングアプリの詐欺の相手が特定できたらどのようなことができるのでしょうか。以下では、詐欺の種類別に被害者ができることを説明します。

  1. (1)デート商法

    デート商法により高額な商品やサービスの契約を締結してしまったという場合には、以下のような対処が可能です。

    ① クーリングオフ
    クーリングオフとは、契約の申し込みや締結後であっても、一定期間は無条件に契約の申し込みの撤回または解除ができる制度です。

    デート商法が、いわゆるアポイントメントセールスとして特定商取引法上の「訪問販売」に該当する場合には、契約書を受け取ってから8日以内であればクーリングオフをすることができます。相手に嫌われたくないという理由で無理に高額な契約をしてしまったとしても、8日以内であれば無条件で解除することができますので、早めに行動することが大切です。
    デート商法が「訪問販売」に該当するか否かについては、判断が難しい場合も多いので、判断に迷われた場合には弁護士に相談するとよいでしょう。

    ② 契約の取り消し
    恋愛感情を利用され高額な商品やサービスの契約をさせられてしまった場合、消費者契約法により、契約を取り消すこともできます

    消費者契約法による取り消しは、恋愛感情を利用されるという困惑状態を脱してから1年以内、または契約から5年以内であれば可能です。クーリングオフの期間が経過してしまったとしても、消費者契約法による取消権を行使できる可能性がありますので、すぐに諦めずに対処していくことが大切です。

    ③ 相手との協議・和解
    マッチングアプリの詐欺をした相手を特定できれば、相手との協議によりだまし取られたお金を取り戻せる可能性もあります。

    相手との話し合いを行い、金額、支払い時期、支払い方法などの合意が得られれば、和解が成立となりますので、和解内容を書面に残しておきましょう

    ④ 訴訟提起
    相手が話し合いに応じないときは、裁判所に訴訟を提起して被害の回復を図ります。
    裁判では、被害者が相手によりお金をだまし取られたことを証拠によって立証していかなければなりません。自分で対応が難しいと感じるときは、弁護士に訴訟対応を任せるとよいでしょう。

  2. (2)投資詐欺

    マッチングアプリを利用した投資詐欺により、投資名目でお金をだまし取られてしまったという場合には、以下のような対処が可能です。

    ① クーリングオフ
    投資詐欺がいわゆるマルチ商法に該当する場合には、特定商取引法上の「連鎖販売取引」にあたりますので、契約書を受け取ってから20日以内であればクーリングオフをすることができます
    すぐに投資詐被害に気付いたときは、まずはクーリングオフをして返金を求めていきましょう。

    ② 返金請求
    マッチングアプリで投資詐欺をした詐欺師を加害者として特定できたら、加害者と交渉をして返金を要求することもできます。

    ただし、投資詐欺は組織的に行われることもありますので、被害者個人で素性のわからない加害者を相手するのは危険が伴います。そのため、加害者との返金交渉は、専門家である弁護士に任せるのが安心です。

    ③ 刑事告訴
    投資詐欺は、刑法上の詐欺罪に該当する可能性がありますので、お金をだまし取られてしまったという場合には、刑事告訴をすることができます。

    刑事告訴をする場合、告訴状を作成して、警察署に提出することになりますが、詐欺は立件が難しい犯罪類型であるため、警察としても簡単には告訴状を受理してくれません。より確実に告訴の手続きを進めるには弁護士のサポートが必要になりますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

  3. (3)ロマンス詐欺(国際ロマンス詐欺)

    マッチングアプリを利用したロマンス詐欺により、お金をだまし取られてしまったという場合には、以下のような対処が可能です。

    ① 返金請求
    ロマンス詐欺の加害者を特定できたら、加害者に対して、だまし取られたお金の返金を求めていきます。
    また、国際ロマンス詐欺だったとしても、マッチングアプリでは海外在住の外国人と名乗っていても、実際には日本に在住する日本人がやり取りをしているケースもあります。

    詐欺被害に遭った場合の返金交渉は、スピードが大事ですので、被害に気付いたらすぐに相手を特定し、返金交渉を進めていくようにしましょう。

    ② 刑事告訴
    ロマンス詐欺も刑法上の詐欺罪に該当する可能性がありますので、被害者は、警察に刑事告訴をすることができます。

    ただし、刑事告訴の目的は、加害者に刑事処分をすることにありますので、刑事告訴をしたとしても被害にあったお金を取り戻すことはできません。

4、相手が特定できない場合でも、できること

マッチングアプリで詐欺をした相手を特定できなかったとしても、以下のような方法で被害回復を図ることができます。

  1. (1)銀行口座にお金を振り込んだ場合

    マッチングアプリで詐欺に遭い、加害者に対して、銀行口座を利用してお金を振り込んだ場合、振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結が利用できる可能性があります。

    振り込め詐欺救済法は、犯罪で利用された口座に残された被害金の支払い手続きに関して定めた法律です。だまされて振り込んだ銀行口座にお金が残されていれば、金融機関に申し出ることにより、被害金の返金を受けることができます。同法に基づく手続きは、加害者本人から直接回収する必要がないのがメリットです。

    ただし、被害者が複数いる場合、被害者間で被害金が按分されますので、十分な返金を受けられない可能性もあります。

  2. (2)クレジットカードを使った場合

    マッチングアプリで詐欺に遭い、クレジットカードを利用して商品やサービスを購入してしまった場合、チャージバックという手続きを利用することで、カード会社からの請求を止められる可能性があります。

    チャージバックとは、詐欺被害に遭った被害者がクレジットカードの利用代金請求の取り消しをカード会社に求める手続きです。クーリングオフ制度の利用や支払い停止の抗弁ができないときでも、チャージバックの手続きを利用できる可能性がありますので、被害回復の有効な手段となります。

5、まとめ

近年、マッチングアプリの利用者が増えるにつれ、マッチングアプリを利用した詐欺の被害に遭うケースも増えています。マッチングアプリで会った相手にだまされているかもしれないと感じたときは、すぐに第三者に相談することが大切です。

また、被害の回復を自力で行うのはハードルが高いといえますので、被害回復に向けて行動する際には、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
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