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通っていた学校が倒産! 入学金や授業料が返金されない場合の対処法とは
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)このようなケースでは、生徒や保護者は泣き寝入りするしかないのでしょうか?授業料などの返金を請求する方法はあるのでしょうか?
本記事では、学校や塾が倒産した場合に、授業料などの返金を請求できるのかどうかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
お気軽にご相談ください。
1、通っていた学校や塾が倒産した場合、その後どうなる?
学校や塾の運営事業者が借金などの債務を支払えなくなると、「倒産」という状態になります。
倒産した法人の多くは、「破産」という手続きによって処理されます。破産手続きでは、法人の財産を処分して債権者に配当し、その後に法人格を消滅させます。
破産する法人には、借金などの債務全額を支払えるだけの財産がありません。そのため、債権者は債権の全額を回収することはできず、その一部について配当を受けられるにとどまります。
学校や塾の運営事業者が倒産した場合も、破産手続きが行われるのが一般的です。
すでに支払った授業料などのうち、未消化の期間(学期)に対応するものは「破産債権」として、破産手続きによる配当の対象となります。
しかし、全額配当するには運営事業者の財産が足りず、一部の回収にとどまるか、または全く回収できないケースが大半です。
2、教育ローンを組んでいる場合にとるべき対応
全額回収ができないケースが大半ではありますが、教育ローンを組んでいる場合には、その支払いを止めることができるかもしれません。ローンを組んでいる場合には、以下の対応を行いましょう。
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(1)金融機関や信販会社に連絡して、毎月の支払いを止めてもらう
すでに教育ローンとして借り入れている金額については、学校や塾の運営事業者が倒産した場合も、原則として返済しなければなりません。
これに対して、信販会社に毎月の授業料を立て替え払いしてもらっている場合や、金融機関から定期的にお金を借り入れている場合には、将来分の支払いを早急に止めてもらいましょう。
支払い済みの授業料などはほとんど返ってこないことを考えると、直ちに授業料などの支払いを止めることが大切です。 -
(2)信販会社が先に立て替え払いした金額については、支払停止の抗弁を主張する
信販会社が授業料などを立て替え払いするタイプの教育ローンについては、割賦販売法に基づく支払停止の抗弁を主張できます。
支払停止の抗弁とは、立て替え払い(=個別信用購入あっせん)の対象となっている支払いの債権者に対して生じている事由をもって、信販会社への支払いを拒否することです(割賦販売法第35条の3の19)。
学校や塾の運営事業者が倒産した場合において、信販会社が授業料などを先に立て替え払いしたときは、その全額または一部につき、信販会社に対する支払いを拒否できる可能性があります。
信販会社から授業料などの立て替え分の支払いを請求されたら、支払停止の抗弁を主張して支払いを拒否しましょう。
3、その他、学校や塾が倒産した場合に、生徒や保護者ができること
教育ローンの対応以外に、生徒や保護者ができるのは、破産手続きへ参加したり、ケースによっては刑事告訴を検討することです。
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(1)破産手続きに参加する
裁判所に「破産債権届出書」を提出し、債権者集会に参加することができます。ただし、授業料などは一部しか返ってこないケースが多い点にご注意ください。
・裁判所に「破産債権届出書」を提出する
破産手続きにおいて配当を受けるためには、裁判所(又は破産管財人)に「破産債権届出書」を提出します。破産債権届出書は、破産手続きによる配当の対象となる債権を、裁判所(及び破産管財人破産管財人)の側で把握するためのものです。
裁判所によって運用が異なるケースもありますが、一般的には破産債権届出書2通と、債権の存在を証明する証拠書類1通の提出が求められます。
学校や塾に支払ったお金については、入学時の契約書や受け取った請求書、銀行振り込みに関する明細書などを添付しましょう。
・破産手続きの債権者集会に参加する
破産手続きでは、裁判所によって選任される破産管財人が、債務者の預金その他の財産を換価・処分し、債権者に対する配当を行います。
破産管財人による財産の換価・処分の状況や、配当の見込みなどについては「債権者集会」で報告が行われます。
第1回の債権者集会は、破産手続きが開始してからおおむね3か月程度が過ぎた段階で開催されます。その段階で財産の換価・処分が済んでいなければ、定期的に2回目以降の債権者集会が開催されます。
債権者集会には、破産管財人や破産法人代表者およびその代理人弁護士などが参加します。学校や塾の破産について疑問があれば、その場で質問することも可能です。
・授業料などは返ってこないケースが多い
破産手続きを通じて、学校や塾に支払った授業料などのうち、未消化の期間(学期)やサービスに対応する部分については配当が行われます。
しかし、配当には優先順位があり、授業料などに対して配当が行われるのは、破産管財人の報酬・税金・従業員の給料など、優先順位の高い債権への支払いが行われた後です。
授業料に配当の順番が回ってきたとしても、全額の配当は期待できません。運営事業者の財産が全額配当に足りなければ、債権額に応じた割合で按分的に配当が受けられるのみです。
通っていた学校や塾が倒産したら、すでに支払った授業料などはほとんど返ってこないケースが多いと考えておきましょう。 -
(2)計画倒産によってお金をだまし取られたら、刑事告訴・告発の検討を
学校や塾などの運営事業者が、倒産を避けられないことを知りながら生徒・保護者から授業料を受け取った場合は「計画倒産」に当たる可能性があります。
計画倒産などの債権者を害する行為をしたときは、詐欺罪や詐欺破産罪によって運営事業者やその関係者が処罰の対象となることがあります。・計画倒産とは
「計画倒産」とは、借金や料金などの債務を踏み倒すことを前提に、悪意のある計画をもって倒産することを意味します。
たとえば、支払えないことが確実であるにもかかわらず新たに債務を負担したり、法人の財産を無償または不当な低額で関係者へ移転したりした後に破産申立てを行うようなケースが、計画倒産の典型例です。
なお、従業員や取引先にできるだけ迷惑をかけないように、資金繰りなどを踏まえて破産申立てのスケジュールを調整することは「計画的な倒産」などと呼ばれます。
計画倒産と計画的な倒産は、全く異なるものです。
・計画倒産が疑われる場合、刑事告訴や告発が可能
学校や塾の計画倒産の一環として、授業を実施できる見込みがないにもかかわらず、生徒・保護者に対して授業料などを支払わせるケースがあります。
このような行為は「詐欺罪」(刑法第246条第1項)に当たり、行為者は「10年以下の懲役」に処されます。
詐欺行為の被害者である生徒・保護者は、警察官や検察官に対して刑事告訴を行い、運営事業者の関係者の処罰を求めることが可能です(刑事訴訟法第230条)。
また、生徒・保護者から直接お金をだまし取っていなくても、破産申立ての前後において債権者を害する行為は「詐欺破産罪」による処罰の対象となります(破産法第265条)。
詐欺破産罪の法定刑は「10年以下の懲役または1000万円以下の懲役」で、併科される場合もあります。行為者だけでなく、運営事業者にも「1000万円以下の懲役」が科されます(同法第277条)。
詐欺破産罪については、運営事業者の債権者であれば刑事告訴ができますが、そうでない場合も告発が可能です(刑事訴訟法第239条第1項)。計画倒産によってお金をだまし取られた場合や、それに類する悪質な行為をされた場合には、刑事告訴または告発を行いましょう。
4、通っていた学校や塾が倒産し、今後どうなるか不安な場合の相談先
通っていた学校や塾が倒産してしまい、今後どうなるか不安な方は、以下のいずれかの窓口に相談しましょう。
学校や塾の倒産に関する対処法などについて、一般的なアドバイスを受けられます。無料で相談できますが、具体的な対応を依頼することはできません。
② 弁護士
破産手続きその他の事項への対応について、具体的な事情に即したアドバイスを受けられます。相談は有料であるケースが多いです(当事務所も、有料で相談を受け付けております)。
5、まとめ
通っていた学校や塾の運営事業者が倒産したら、支払い済みの授業料などについては、破産手続きを通じて返金を受けるほかありません。裁判所に破産債権届出書を提出するなど、必要な対応を行いましょう。
学校や塾の倒産に直面し、どのように対応すべきか分からず悩んでいる方は、行政の窓口や弁護士への相談をおすすめします。
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