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これってクーリング・オフできる? やり方や注意点を弁護士が解説
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)また、クーリング・オフをするためには一定期間内に所定の手続きを行わなければならないなどいくつか注意すべきポイントもありますので、しっかりと理解しておくことが大切です。
今回は、クーリング・オフ制度の概要とクーリング・オフのやり方・注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
お気軽にご相談ください。
1、クーリング・オフとはどんな制度か
クーリング・オフとはどのような制度なのでしょうか。以下では、クーリング・オフ制度の概要について説明します。
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(1)クーリング・オフ制度とは
クーリング・オフとは、契約の申し込みや締結をした後であっても、一定期間内であれば無条件に契約の申し込みの撤回または契約の解除をすることができる制度です。「クーリング・オフ」という言葉のとおり、消費者が頭を冷やして、契約の必要性を再考する機会を与えるために設けられた制度になります。
消費者と事業者との間には、情報量や交渉力の面で圧倒的な格差がありますので、事業者の不適切な勧誘行為による消費者トラブルがしばしば起きることがあります。このような消費者トラブルから消費者を保護するための制度がクーリング・オフです。 -
(2)クーリング・オフができる取引と期間
クーリング・オフは、不意打ち性の高い販売方法から消費者を保護する制度になります。そのため、特定商取引法では、クーリング・オフができる取引を以下のように定めています。
取引形態 販売方法 クーリング・オフ期間 訪問販売 アポイントメントセールス、キャッチセールス、職場訪問販売、家庭訪問販売、店舗に類似するものとは認められない施設での展示販売・催眠商法など 法定書面を受け取った日を含めて8日以内 電話勧誘販売 事業者が電話をかけて勧誘、または消費者に電話をかけさせ勧誘するもの 訪問購入 事業者が営業所以外の場所で消費者から物品を購入するもの 特定継続的役務提供 家庭教師、学習塾、語学教室、パソコン教室、美容医療、エステティックサロン、結婚相手紹介サービスなど 業務提供誘引販売取引 いわゆる内職商法やモニター商法による取引 法定書面を受け取った日を含めて20日以内 連鎖販売取引 いわゆるマルチ商法による取引 なお、インターネット通販などの通信販売については、商品やサービスを購入するかどうかを消費者がじっくりと考えてから判断できる取引形態ですので、クーリング・オフの適用はありません。
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(3)クーリング・オフをする際の注意点
クーリング・オフをする際に、「この契約はクーリング・オフできません」などと事業者がうそを言ったり、「今解約すると高額な違約金がかかります」などと脅したりして、クーリング・オフの妨害をしてくることがあります。
このようなクーリング・オフ妨害があった場合には、クーリング・オフ期間が延長されますので、クーリング・オフ期間経過後であってもクーリング・オフできる可能性があります。具体的には、事業者から書面と説明により妨害が解消するまで、クーリング・オフ期間の進行がストップします。
2、クーリング・オフ前に確認するべきこと
具体的な状況によっては、クーリング・オフ以外の方法で救済が受けられる可能性もあります。そのため、クーリング・オフをする前に以下の点を確認するようにしましょう。
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(1)契約書面は受け取ったか
特定商取引法では、クーリング・オフの対象となる以下の取引について、事業者に一定の事項を記載した契約書の交付を義務付けています。この契約書を「法定書面」といいます。
- 訪問販売
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引
- 特定継続的役務提供
- 業務提供勧誘販売
この書面が渡されていない場合には、クーリング・オフ期間は進行しないものとされていますので、消費者は、いつでもクーリング・オフをすることができます。
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(2)相手方の連絡先はわかるか
クーリング・オフをするためには、書面または電磁的記録により行わなければなりません。そのためには、事業者の連絡先がわからなければクーリング・オフをすることができません。
法定書面には、事業者の氏名、住所、電話番号、代表者の氏名を記載しなければならないとされていますので、法定書面が交付されている場合には、それを確認すれば事業者の連絡先を把握することができます。
法定書面に事業者の連絡先などが記載されていない場合には、記載事項に不備のある法定書面となります。再度、間違いがない法定書面が渡されるまでは、クーリング・オフ期間は進行しないものとされています。そのため、消費者は、いつでもクーリング・オフをすることができます。 -
(3)契約者が18歳以上かどうか
契約などの法律行為を単独で確定して有効にするためには、18歳以上であることが必要です。
契約当時18歳未満の未成年であった場合には、消費者としての経験が浅く、十分な判断能力を持っていないことから、契約により不利益を被らないように法律で保護されています。具体的には、未成年者が行った法律行為は取り消すことができるとされています。
そのため、クーリング・オフ期間を経過してしまったとしても、契約当時未成年であった方は、取り消しできる期間内に未成年者取消権を行使することで、契約を取り消すことが可能です。
3、クーリング・オフの具体的なやり方を解説
クーリング・オフは、はがきなどの書面、またはメールなどの電磁的記録で行います。以下では、クーリング・オフの具体的なやり方を説明します。
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(1)クーリング・オフを書面で行う方法
クーリング・オフを書面で行う場合には、以下の事項を記載したハガキを利用するのが一般的です。
- 契約年月日
- 商品名
- 契約金額
- 販売者
- 契約を解除する旨
- 作成年月日
- 消費者の住所、氏名
ハガキに上記事項を記載したら、送付する前にハガキの両面をコピーしましょう。
また、ハガキをそのまま出してしまうと、事業者に届いたかどうかがわかりませんので、「特定記録郵便」や「簡易書留」といった、記録が残る方法で送付することが重要です。 -
(2)クーリング・オフを電磁的記録で行う方法
クーリング・オフを電磁的記録で行う場合には、法定書面を確認して、電磁的記録によるクーリング・オフの通知先や通知方法を確認します。
クーリング・オフ専用のフォームがある場合には、そこからクーリング・オフの通知を行います。専用のフォームがない場合には、以下の事項を記載したメールを送り、クーリング・オフを行います。また、FAXでのクーリング・オフも可能です。- 契約年月日
- 商品名
- 契約金額
- 販売者
- 契約を解除する旨
- 作成年月日
- 消費者の住所、氏名
書面で行う場合と同様に、クーリング・オフをしたという証拠を残すために、クーリング・オフ専用フォームの画面をスクリーンショットで保存したり、メールを保存するなどの対応が必要です。
なお、クーリング・オフによる返金は「速やかに」行わなければならないとされていますので、通常はクーリング・オフ通知を受けた日から数日程度で返金を受けられるでしょう。
4、クーリング・オフ後の注意点
クーリング・オフをした後も以下の点に注意が必要です。
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(1)クレジットカードで払った場合は、カード会社に支払停止の抗弁もしたほうがよい
商品の購入代金やサービスの利用料をクレジットカードで支払った場合には、事業者へのクーリング・オフの通知とともに、クレジットカード会社への支払停止の抗弁も必要になります。
支払停止の抗弁とは、消費者と事業者との間で問題が生じている場合に、消費者がクレジットカード会社からの請求に対して、支払いを拒否する権利のことをいいます。クーリング・オフをしたからといって、クレジットカード会社に連絡せず、黙って支払いを止めてしまうと、クレジットカード会社から延滞として扱われてしまいますので、注意が必要です。 -
(2)クーリング・オフに使った書面は5年間保管することが必要
クーリング・オフの効果は、クーリング・オフの通知を発信した時点で生じます。その後、事業者から返金を受けられれば、無事解決となります。
しかし、クーリング・オフに関して後日事業者とトラブルが生じる可能性もありますので、クーリング・オフに関する書面は、きちんと保管しておくことが大切です。クーリング・オフに使った書面や事業者から交付された法定書面などは、少なくとも5年間は保管しておきましょう。 -
(3)クーリング・オフしても返金がされない場合には、行政窓口や弁護士に相談を
クーリング・オフをすれば、通常であれば事業者にクーリング・オフ通知が届いてから数日程度で返金を受けることができます。
しかし、1週間以上待っても返金がない場合には、消費者個人では対応が難しい可能性がありますので、消費生活センターなどの行政窓口や弁護士に相談してみるとよいでしょう。
消費生活センターでは、専門の相談員が無料で相談に応じてくれますので、業者から返金を受けるための方法をアドバイスしてもらえます。また、弁護士であれば消費者に代わって業者と交渉をしてくれますので、返金を受けられる可能性がより高くなるでしょう。
5、クーリング・オフ以外の対処法
消費者トラブルに遭った場合には、クーリング・オフ以外にも以下のような対処法が考えられます。
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(1)特定商取引法による救済方法
特定商取引法では、クーリング・オフ以外にも以下のような消費者救済の方法を定めています。
- 過量販売解除権
- 不実告知による取消権
- 中途解約権
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(2)消費者契約法による救済方法
特定商取引法は、適用される販売方法が限定されているのに対し、消費者契約法は、すべての消費者契約を対象にしています。そのため、クーリング・オフ期間が過ぎてしまった場合やクーリング・オフができない契約であったとしても、以下のような場合には契約の取り消しが可能です。
- 重要事項について、事実と異なる説明があった
- 不確実なことについて、確実と説明された
- 消費者に不利な情報を告げなかった
- 事業者が消費者の自宅や勤務先に強引に居座った
- 消費者が商品を購入するまで強引にお店に引き留められた
- 勧誘することを告げずに、退去困難な場所に同行し勧誘した
- 威迫する言動を交えて、相談の連絡を妨害した
- 就職セミナー商法など不安をあおる告知をした
- デート商法など、好意の感情の不当に利用した
- 分量や回数などが多すぎる過量契約をした
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(3)民法による救済方法
特定商取引法や消費者契約法の利用が適さない場合もあります。その場合には、民法による救済方法が利用できる可能性があります。具体的には、以下のような方法です。
- 未成年者取消権
- 成年後見制度による高齢者の保護
- 詐欺、強迫を理由とする取り消し
- 錯誤を理由とする取り消し
6、まとめ
クーリング・オフは、一定期間内であれば、無条件で契約の申し込みの撤回または契約の解除ができる非常に便利な制度です。その反面、すべての契約がクーリング・オフの対象となるわけではなく、契約形態によってクーリング・オフ期間が変わるなどの制限がありますので、注意が必要です。
クーリング・オフができるかどうかを正確に判断できるのは弁護士ですので、消費者トラブルに巻き込まれてしまったときは、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
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