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ホストクラブの売掛金が払えない! 弁護士が教える正しい対処法とは
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)注文時の状況によっては支払わなくてよい場合や、減額が認められる場合があります。ひとりで悩み続けることなく、お早めに弁護士へご連絡ください。
本記事では、ホストクラブの売掛金が払えない場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
お気軽にご相談ください。
1、ホストクラブの売掛金とは
ホストクラブの「売掛(売掛金)」とは、注文代金をその場で支払わず、後でまとめて支払うシステムをいいます。
売掛金はその場で支払わなくてよいため、客が支払える範囲を超えて過剰に注文をしてしまい、総額もよく分からなくなるなどして、後で支払い困難になってしまうことがあり得ます。
売掛金を返済するため不本意に性風俗店で働いたり、売掛金を回収できなくなったホストが犯罪行為に走ったりするケースがあることが報道されるなど、近年大きな社会問題になっています。一部の悪質なホストクラブなどにおいて、若い女性に対する売掛金トラブルが報告されていることについて、令和5年11月に消費者庁からの注意喚起もなされました。
2、ホストクラブの売掛金は支払わなくてよい、または減額できる場合がある
ホストクラブの売掛金は、原則として支払う必要があるものの、以下の場合には支払わなくてよいまたは減額されることがあります。
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(1)未成年者の場合
民法上、18歳未満の者は未成年者とされています(民法第4条)。
未成年者が法律行為をするには、原則として法定代理人の同意を得なければなりません(民法第5条第1項)。法定代理人の同意を得ずに未成年者が行った法律行為は、取り消すことができます(同条第2項)。
ホストクラブでの注文も、店舗と客の間で権利義務を発生させる法律行為であるため、未成年者が行った場合は取り消すことが可能です。
ただし例外的に、未成年者が成年であると信じさせるために人をだました場合には、法定代理人の同意を得ずに行った法律行為でも取り消すことができません(民法第21条)。
たとえば、店舗による年齢確認が行われた際に、偽造した身分証を提示した場合などには、詐術を理由に取り消しが認められない可能性があるので、注意が必要です。 -
(2)デート商法にあった場合
消費者(個人)と事業者(法人)が締結する契約には、消費者契約法という法律が適用されます。消費者契約法には、消費者保護を目的としたさまざまなルールが定められています。
消費者契約法に基づき、事業者による不当な勧誘がなされた場合には、消費者が契約の申し込みまたは承諾を取り消すことができます(同法第4条第3項)。
事業者による、不当な勧誘のひとつとして挙げられているのが、「デート商法」です。デート商法とは、以下の要件をいずれも満たす勧誘行為をいいます(同項第6号)。- ① 消費者の社会経験が乏しいことにつけこんで、消費者が恋愛感情などを持っていることを知り、加えて、事業者が消費者に同様の恋愛感情などを持っているものと誤って認識、信用させること
- ② 消費者が誤った認識や信用をいだいていることを知りながら、同状況に乗じて、事業者がこの契約を結ばなければ消費者のことを嫌いになる、別れるなどと、従来の関係がなくなることを告げること
たとえば、担当ホストに恋をしている客に対し、ホスト側が「君を愛しているけれど、店でお金を使ってくれないなら別れるしかないな……」などということがデート商法に当たり得ます。
デート商法にあってしまい、ホストクラブで何かの注文をした場合、客はその注文を取り消すことが可能です。 -
(3)詐欺・強迫を受けた場合
担当ホストや店舗から詐欺や強迫を受け、それに対してホストクラブで注文をした場合には、その注文を取り消すことができます(民法第96条第1項)。
① 詐欺
相手をだまして錯誤に陥らせて意思表示をさせることをいいます。
(例)
「○○万円のシャンパンを入れてくれたら、クリスマスにデートしてあげるよ(本当はクリスマスにデートする気がない)」
② 強迫
相手を脅して意思表示をさせることをいいます。
(例)
「売掛金の支払い、たまっているじゃん。立て替えておいてあげるから、今日○○万円注文してよ。注文しなかったらヤクザに紹介するからね」 -
(4)違法金利が設定されている場合
売掛金には金利が設定される場合がありますが、売掛金の金利には利息制限法の上限金利が適用されます。
<利息制限法の上限金利>元本の額 上限金利 10万円未満 年20% 10万円以上100万円未満 年18% 100万円以上 年15% 売掛金について、利息制限法の上限金利を大幅に超える違法金利が設定されている場合、注文に対する飲食物の提供が全体として不法原因給付(民法第708条)に当たる可能性があります。この場合、客はホストクラブに売掛金を支払う義務を負いません。
また、不法原因給付には当たらないとしても、利息制限法の上限金利を超える部分の金利は無効であるため(利息制限法第1条)、その部分はホストクラブに支払う必要がありません。 -
(5)消滅時効が完成している場合
ホストクラブが有する売掛金債権は、以下の期間が経過すると時効により消滅します。
<2020年3月31日以前に利用した場合>
権利を行使できる時から1年
<2020年4月1日以降に利用した場合>
以下のうちいずれか早く経過する期間- ① 権利を行使できることを知った時から5年
- ② 権利を行使できる時から10年
売掛金債権の消滅時効の日が過ぎている場合は、時効を援用することによって売掛金の支払いを免れることができます。
ただし、時効期間の途中で訴訟を通じた請求を受けた場合や、売掛金の存在を承認した場合などには、消滅時効の完成を主張できないことがあるので、注意が必要です。
3、売掛金の支払い義務があるが、払えない場合の対処法
支払い義務があるホストクラブの売掛金を払えないことで、支払いのために、性風俗店などで働く女性がいるとのニュース報道がありました。
金額が多額であればあるほど、金銭感覚が狂ってしまうなどして抜け出しにくくなるリスクや、望まない仕事をさせられるなどすることで個人の尊厳を傷つけられるリスクに十分注意する必要があります。
また、売掛金の請求を無視することもやめた方がよいでしょう。いずれは訴訟を提起され、最終的には強制執行によって財産を失ってしまう可能性が高いからです。
ホストクラブの売掛金を払えない場合は、まず行政の窓口や弁護士に相談しましょう。担当ホストから暴力を振るわれていたり、脅迫されていたりする場合は、警察にも相談すべきです。
特に弁護士に相談すれば、ホストクラブや担当ホストとの減額交渉、他の借金を含めた債務整理などについてアドバイスやサポートを受けられます。売掛金の問題を自力で解決できない場合には、弁護士への相談が解決の糸口となることが多いです。
4、弁護士に相談する場合の流れ
ホストクラブの売掛金について弁護士に相談する際の流れは、以下のとおりです。
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(1)相談内容をまとめておく
スムーズに相談するために、あらかじめ弁護士への相談内容をまとめておきましょう。
たとえば、以下の事項を整理しておくと相談時に役立ちます。- 売掛金の総額
- 売掛金の支払期日
- 売掛金を作ってしまった経緯
- 今一番困っていること
- どのような解決を望むか
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(2)相談日程を調整する
法律事務所に連絡をとり、調整を行って具体的な相談日程を決めます。ご自身の都合がよい候補日を法律事務所に伝えましょう。
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(3)弁護士に相談する
当事務所へのご相談は、対面またはZoomをご選択いただけます。
ベリーベスト法律事務所では、ホストクラブの売掛金を含む消費者問題の相談は有料となっております。相談料は原則として、30分当たり5500円(税込)です。
対面の場合はご来所時にお支払いとなります。Zoomの場合は、ご相談の前に相談料をお振り込みいただく必要がございます。
事前に決めた日程と方法で、弁護士にご相談いただきます。
弁護士へのご相談時には、相談内容をまとめたメモを持参するとスムーズに質問できるほか、ほしいアドバイスの聞き漏らしをなくすことができます。
また、売掛金に関する資料(借用書など)がある場合は、ご持参いただければより正確なアドバイスが可能となりますので、ある場合には忘れずに見せましょう。
5、まとめ
ホストクラブでの売掛金が払えない場合は、やむにやまれず、性風俗店で働くなどの望まない決断をする前に、弁護士へご相談ください。デート商法などを理由に契約を取り消せる場合があるほか、債務整理などによって解決できることもあります。
ホストクラブの売掛金は多額に及ぶケースが多く、払えなくなった場合に自力で解決するのは困難です。ひとりで思いつめることなく弁護士に相談して、解決策のアドバイスを受けましょう。
ベリーベスト法律事務所では、ホスト関係の売掛金に関するご相談を随時受け付けております。担当ホストやホストクラブとのトラブルを解決するため、お客さまのご心情にも寄り添いつつ、弁護士が丁寧にご対応いたします。
ホストクラブの売掛金が高額になり、とても払えない金額に達してしまった方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
消費者トラブルへの知見が豊富な消費者問題専門チームの弁護士が問題の解決に取り組みます。
マルチ商法や霊感商法、悪徳商法などをはじめとした消費者トラブルでお困りでしたら、ぜひ、お気軽にご相談ください。