- 消費者問題について弁護士に相談
- 弁護士コラム
- 訪問販売で購入したものを返品したい! クーリングオフはできる?
訪問販売で購入したものを返品したい! クーリングオフはできる?
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)このような不意打ち的な勧誘が行われる「訪問販売」では、消費者の利益を保護するために特定商取引法によりさまざまな規制が加えられています。
今回は、訪問販売を規制している特定商取引法や訪問販売により不要な商品やサービスの契約をしてしまった場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
お気軽にご相談ください。
1、訪問販売のよくある例
訪問販売とはどのようなものなのでしょうか。以下では、訪問販売の具体例と特定商取引法での規制内容について説明します。
-
(1)訪問販売にはどのようなものがあるの?
訪問販売の具体例としては、以下のものが挙げられます。
① 自宅に事業者が訪ねてきて契約を行う
消費者の自宅に事業者が突然訪ねてきて、商品やサービスの説明を行い、契約を行うことがあります。これが訪問販売の典型的なケースです。
② 路上などでのキャッチセールス
キャッチセールスとは、路上などで「アンケートにご協力ください」などと声をかけられ、そのまま営業所に連れて行かれ契約させられる販売方法です。消費者にとっては不意打ち的な販売方法になりますので、訪問販売にあたります。
③ 電話などによるアポイントメントセールス
アポイントメントセールスとは、電話などで「高額な商品に当選した」などと告げ、景品を受け取りに来た消費者に景品とは関係のない商品やサービスを契約させる販売方法です。
似たような事例として、「見るだけで大丈夫です」と言って展示会に呼び出して、絵画や呉服などを購入させる展示会商法というものもあります。
④ 催眠商法
催眠商法とは、人を集めた会場で、日用品などを無料で配り雰囲気を盛り上げた上で、冷静な判断ができなくなった消費者に高額な健康食品、健康器具、布団などを販売する方法です。
消費者は、自ら会場に出向いていますが、目的を偽って来所させていますので、訪問販売に該当します。 -
(2)法律(特定商取引法)では、訪問販売をどう規制されている?
特定商取引法では、訪問販売について、「販売方法」と「販売する商品・役務・権利の種類」の2点から定義をしています。
① 販売方法
販売方法については、以下の2種類が規制対象となります。- 営業所など以外の場所で売買契約の申し込みを受け、または売買契約を締結する取引
- 特定顧客との取引
特定顧客との取引とは、いわゆるキャッチセールス、催眠商法、アポイントメントセールスなど営業所など以外の場所で呼び止め、販売意図を隠して営業所などまで同行させるなどの消費者にとって不意打ち的な取引が対象となります。
② 販売する商品・役務・権利の種類
訪問販売での規制対象は、すべての商品、役務の提供、特定権利です。特定権利とは、政令により指定されている以下のような権利をいいます。- ゴルフ会員権、リゾートクラブ会員権、スポーツクラブ会員権
- 映画・演劇・コンサートの入場券、スポーツ観戦チケット、展覧会・展示会などのイベントの入場券
- 語学教室でのレッスンチケット
なお、特定商取引法では、上記のような訪問販売以外にも、
- 通信販売
- 電話で勧誘して販売
- 来た人を販売員にして、さらにその人の周りの人にも勧誘させる販売方法(連鎖販売取引)
- エステや語学教室などに通う権利を高額で販売すること(特定継続的役務提供)
- 「仕事がある」といいつつ、その仕事に必要だからと言って商品を売りつける(業務提携誘引販売取引)
などについての規制を行っています。
2、返品したいときはクーリングオフを
訪問販売で不要な商品やサービスを契約してしまったときは、クーリングオフにより無条件で契約を解除できます。
-
(1)クーリングオフとは
クーリングオフとは、消費者がいったん契約の申し込み、または契約の締結をした場合であっても、一定期間は頭を冷やして考え直すことができる機会を確保することを目的とした制度です。クーリングオフ期間内は、消費者にとって「考え直すための期間」ですので、その期間内であれば、消費者から一方的に契約関係を解消することができます。
訪問販売により不要な商品やサービスを契約してしまったとしても、クーリングオフを利用することで、無条件での解除を行うことができます。 -
(2)クーリングオフの手続きの方法
クーリングオフをする場合には、事業者に対して、クーリングオフをすることを通知する必要があります。通知の方法は、口頭または書面のいずれでも可能とされていますが、口頭でのクーリングオフでは、後日「言った・言わない」の水掛け論になるおそれがありますので、必ず書面で通知するようにしましょう。その際には、後日の証拠とするためにも内容証明郵便を利用するのがおすすめです。
なお、事業者に送付する書面には、以下のような項目を記載します。- 契約年月日
- 契約者名
- 購入商品名
- 契約金額
- クーリングオフの通知を発送した日
-
(3)クーリングオフには期限があることに注意
クーリングオフは、一定期間内に限り認められた特別な制度です。そのため、期限経過後は、クーリングオフを利用することはできません。
クーリングオフの期限は、申込書面または契約書面をもらった日を1日目として、契約内容によりますが、8日間とされていることが多いです。民法の一般的なルールでは、初日は算入せずに翌日から計算することになっていますが、特定商取引法では、クーリングオフ期間の計算の際には、書面交付の日から計算することになっていますので、注意が必要です。
なお、書面交付がなかったり、交付された書面の内容に不備がある場合には、熟慮のための基礎情報が足りないため、クーリングオフ期間は進行しません。
3、クーリングオフの期限が過ぎてしまったら、どうすればいい?
クーリングオフの期限が過ぎてしまった場合には、クーリングオフを利用することはできません。しかし、そのような場合でも
- 特定商取引法
- 消費者契約法
- 民法
による救済を受けることができる可能性があります。
-
(1)特定商取引法による救済
特定商取引法では、クーリングオフ以外にも以下のような制度により、訪問販売による不当な契約を強いられた消費者の保護を図っています。
① 過量販売解除権
一般的に契約の解除をしたいと思った場合には、契約書に書かれている条件に従う、相手と協議するといった必要があります。
しかし、訪問販売により、通常必要だと思われる量を大きく超える商品・サービスの契約をしたときは、無条件で契約を解除できます。
この場合の解除権が使える期間は、契約を結んだ日から1年以内です。
② 不実告知などの取消権
事業者が勧誘の際に、本当ではないことを言う(不実告知)、または不利なことをわざと言わない(故意による事実不告知)ことにより、消費者が判断を誤って契約したときは、その契約を取り消せます。
この場合、取消権は、誤認に気付いたときから1年間行使しないときは時効により消滅しますし、また契約締結時から5年を経過したときは行使できなくなることに注意が必要です。
③ 適格消費者団体による差止請求
適格消費者団体とは、内閣総理大臣により認定された消費者団体です。適格消費者団体は、事業者が不特定かつ多数の人に対して、
- 契約を結ぶために、勧誘時に不実告知または故意による事実不告知をした
- 契約を締ぶため、または解除を妨げるために相手を脅したり困らせる行為をした
- 消費者に不利な特約や、契約解除に伴う損害賠償額が制限されているのにそれに違反する特約を含む契約を結んだ
この制度を利用したい場合には、まずは適格消費者団体に情報を伝える必要があります。 -
(2)消費者契約法による救済
消費者契約法では、消費者は、事業者から以下の行為を受けた場合には、商品やサービスの契約を取り消すことができるとされています。
- ① 重要な事項について事実と異なることを告げる(消費者契約法第4条1項第1号)
- ② 本当は不確かなことなのに、「絶対にこうなる」と断言する(同項第2号)
- ③ 消費者にとって不利益な事実を言わない(同条第2項)
- ④ 帰ってくれ」と言っても、事業者が帰らない(同条第3項第1号)
- ⑤ その場所を去ろうとする消費者を妨害する(同項第2号)
- ⑥ 消費者の不安をあおることを言う(同項第5号)
- ⑦ 恋愛感情に漬け込むデート商法(同項第6号)
- ⑧ 加齢や心身が弱っていて判断力の低下していることを不当に利用する(同項第7号)
- ⑨ 霊感商法(同項第8号)
- ⑩ 契約締結前にサービス提供をする行為(同項第9号及び10号)
- ⑪ 過量契約(同条第4項)
特定商取引法は、訪問販売については訪問販売の取消制度、電話勧誘販売については電話勧誘販売の取消制度、といったように適用対象取引が限定的に定義され、取引類型ごとにその特殊性に着目した取消制度が定められています。
これに対して、消費者契約法では、労働契約を除くすべての消費者契約に適用がありますので、間口の広い民事ルールであるといえます。
なお、消費者契約法による取消権は、追認できるときから1年間行使しないときは時効により消滅し、また契約締結時から5年を経過したときは行使できなくなります。 -
(3)民法による救済
民法では、以下のような取消制度が定められています。
① 錯誤取消
錯誤とは、簡単にいえば勘違いにより契約をしてしまった状態のことです。たとえば、Aという商品を購入しようとしたところ、Bという商品を購入してしまったケースが錯誤の典型例です。
勘違いした内容が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らし、重要なものであるときは、契約の取り消しができます。ただし、表意者に重過失があるときは相手方の保護が優先されますので、契約を取り消すことはできません。
② 詐欺取消
消費者が事業者にだまされて契約の締結をしてしまったときは、詐欺を理由に契約の取り消しができます。
ただし、事業者は、詐欺行為をしたということを簡単には認めませんので、訪問販売を受けたときは、録音や録画により事業者からの説明内容を記録しておくことが大切です。
4、訪問販売でお悩みの場合の相談先
訪問販売に関するお悩みは、以下のようなところで相談をすることができます。
-
(1)消費者ホットラインなどの行政の窓口
消費者ホットラインとは、消費生活センターなどの消費生活相談窓口の連絡先などを知らない消費者に対して、お近くの消費生活相談窓口の案内をしてもらえる電話相談です。訪問販売などの消費者トラブルに直面したものの、どこに相談すればよいかわからないという場合には、消費者ホットラインを利用してみるとよいでしょう。
-
(2)弁護士
消費者と事業者との間には、情報量や交渉力の面で圧倒的な格差がありますので、消費者個人で事業者との交渉を行うのは難しいケースが多いです。十分な知識や経験がない状態で対応しても、さらなる被害を招くおそれがありますので注意が必要です。
弁護士であれば、消費者被害にあった被害者に代わって、事業者との交渉を行ったり、裁判手続きを行うことができます。また、違法な勧誘行為があったときには、事業者を刑事告訴することもできます。お客さまのケースに合った解決方法の提案をすることができますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
訪問販売を受け、その契約を取り消したいと思っても、事業者にいろいろな手で止められてしまう恐れがあります。特定商取引法、消費者契約法などの法律では、消費者の利益を保護するためのさまざまな救済制度が設けられていますので、これらの制度を利用することで被害回復を図ることができるでしょう。
消費者被害は、早期に対応することで、被害回復できる可能性が高くなりますので、訪問販売などのトラブルにあわれた方は、お早めにベリーベスト法律事務所までご相談ください。
消費者トラブルへの知見が豊富な消費者問題専門チームの弁護士が問題の解決に取り組みます。
マルチ商法や霊感商法、悪徳商法などをはじめとした消費者トラブルでお困りでしたら、ぜひ、お気軽にご相談ください。