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マルチ商法にだまされた! 弁護士が取り消し方法や相談先を徹底解説
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)マルチ商法の被害に巻き込まれると、金銭的な損害が生じてしまうだけでなく、家族や親族、友人などとの関係が悪化したり、社会的な信用を失ったりするかもしれません。
本コラムでは「マルチ商法」の最新の手口や法律の規制などに触れながら、マルチ商法から抜け出すための方法や相談先などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
(出典:独立行政法人国民生活センターホームページ)
お気軽にご相談ください。
1、これってマルチ商法? 典型的なパターンや最新の手口を紹介
「マルチ商法」の被害が絶えないのは、マルチ商法が信頼できる人と人との結びつきを悪用して拡大するからです。
相手を信頼するあまり、被害に巻き込まれている人自身もマルチ商法に巻き込まれていることに気づけないことが多く、気づいたときには後戻りできないほどの金銭被害が発生してしまうケースもめずらしくありません。
ここでは「マルチ商法」の典型的なパターンや最新の手口を紹介していきます。
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(1)マルチ商法とは? 典型的なパターン
マルチ商法とは、商品やサービスを契約して、次は自分がその組織における勧誘者の立場となり、次の加盟者を紹介して報酬などを得る商法です。
マルチレベル・マーケティング(MLM)とも呼ばれますが、日本の法律では「連鎖販売取引」という名前で定義されています。
マルチ商法は紹介によって拡大しますが、見ず知らずの人から商品やサービスの契約を取り付けるのは簡単ではありません。
そこで、多くの加盟者は、家族・親族・友人・会社の同僚・学生時代の同期生・サークルの会員など、親しい関係にある人に加盟をすすめます。
最初は「美容効果が高い栄養食品がある」「会員になれば非会員よりも格安で購入できる」といった誘い文句で勧誘し、さらに「会員価格で購入して友人などに販売すれば差額がもうかる」「友人などに加盟してもらえれば紹介料や販売マージンが支払われる」といったもうけ話につながっていくのが典型的です。 -
(2)近年は「モノなしマルチ」が増えている
近年のマルチ商法被害で多発しているのが「モノなしマルチ」と呼ばれる手口です。
モノなしマルチとは、商品などの「モノ」ではなく、ファンド型の投資商品や暗号資産、副業などのサービスを商材としたマルチ商法で、特に20歳代・20歳未満の若者を中心に被害が多発しています。
実際の事例をみると、海外の不動産投資や暗号資産・仮想通貨といった「もうかる」というイメージの強いフレーズが登場するケースが多いようです。
金銭的に余裕がない若者にも「今がチャンスだから消費者金融でお金を借りてでも投資すべき、すぐに配当金で埋め合わせできる」とたきつけたり、借金できない学生だと「結婚式の費用だと説明して借りればいい」などと借金の方法をレクチャーしたりといった悪質なケースも確認されています。 -
(3)マルチ商法は法律に違反するのか?
国民生活センターに多くの相談が寄せられているという現状をみると、マルチ商法には「違法な悪徳商法」というイメージがつきまといます。
しかし、法律の定めに照らすとマルチ商法そのものは違法ではありません。
マルチ商法=違法というイメージをもっている方の多くは、マルチ商法と「ねずみ講」を同じもののように考えているのでしょう。
たしかに、ねずみ講は「無限連鎖講の防止に関する法律」によって禁止されているので、違法です。
しかし、マルチ商法は、商品やサービスを扱わず会費などもっぱら金品を請求・分配するだけのねずみ講とは異なる取引なので、同じ法律では規制されないとされています。
現状、マルチ商法を規制するのは「特定商取引法」という法律ですが、この法律においても「マルチ商法は違法」とは明示されていません。
ただし、勧誘時には社名や氏名を名乗って連鎖販売取引であることを告げなければならない、うそを伝えたり都合の悪い情報を隠したりしてはいけない、広告を掲載する際は法律で定められた事項を表示しなければならない、契約の際には必ず書面を交付しなければならないなどの制限があります。
もちろん、これらの規制に違反する方法で勧誘すれば違法です。
また、一応は商品・サービスの取引はあるものの、会員の勧誘や金銭の配当がメインとなっている、いわば「ねずみ講まがい」のマルチ商法業者も存在しています。
過去には、商品・サービスの取引があっても違法とされた事例もあるので、安易にマルチ商法=合法だと考えるのは危険です。
2、マルチ商法をやめたい! やってはいけない4つのこと
マルチ商法の巧妙なところは、人と人との結びつきを根幹としているため「やめにくい」という点にあります。
また、気づいたときには多くの在庫を抱えてしまっていたり、金銭被害が大きくなりすぎていたりするケースも多いため「今やめると損をする」という感覚に陥り、やめることをためらってしまう方も少なくないようです。
ここでは「マルチ商法をやめたい!」と考えている方がやってはいけない4つのことを挙げていきます。
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(1)自分ひとりで対応してはいけない
マルチ商法をやめたいと考えたとき、すべて自分ひとりで対応するのは危険です。
業者に退会を申し込んでも「今やめてしまうとこれまでの努力が無駄になってしまいます」などと言いくるめられてしまう可能性が高いうえに、返金を求めても素直に応じてくれない業者も存在します。
まずは各種の相談窓口で今の状況を説明し、どのように対応すればよいのかのアドバイスを受けてください。
消費者問題に詳しい専門家にサポートを依頼するのが適切な対応が難しいケースもあるので、自分自身の状況を確かめるためにも第三者への相談をおすすめします。 -
(2)マルチ商法の仲間に相談してはいけない
マルチ商法に長く携わっていると、自分を勧誘した上位の加盟者、自分が勧誘した下位の加盟者など多数の人間関係が生まれます。
「お世話になった」という意識や「自分が勧誘したのだから責任がある」といった後ろめたさから、やめることにためらってしまう方も多いようです。
マルチ商法をやめたいと考えたとき、マルチ商法の仲間に相談するとほぼ確実に引き止められてしまいます。
特に、自分よりも上位の加盟者に相談すると、その人のもうけが減ったり、業務負担が増えたりするので「応援するからもう少し頑張ろう」などと親身になったふりをして引き止めてくるでしょう。
確実にやめたいと考えるなら、マルチ商法の仲間に相談するのは避けるべきです。
公的な相談窓口や、マルチ商法に携わっていない家族・友人など、冷静に判断できる人に相談しましょう。 -
(3)抱えてしまった在庫を放置してはいけない
特に商品を販売することで利益が生じるタイプのマルチ商法でもうけようとすると、商品を大量に仕入れてしまい、多くの在庫を抱えてしまうことがあります。
見込み違いで在庫を抱えてしまうと、仕入れ経費分の回収さえも難しくなるかもしれません。
このような状況に陥ってしまっても、マルチ商法がビジネスの一種だととらえて「自分が判断を誤った」「販売能力が低い自分が悪い」とあきらめてしまう方も少なくありませんが、放置するのは間違いです。
まだ契約から時間がたっていないなら「クーリングオフ」を利用することで契約を解除できる可能性があります。
また、クーリングオフが可能な期間を過ぎても、状況次第では契約解除が認められるかもしれません。
いずれにしても早ければ早いほど解決の可能性が高まるので、相談を急いだほうが利口です。 -
(4)借金に借金を重ねてはいけない
マルチ商法でもうけを得ようとすると、思い切って大量の商品を仕入れたり、高額サービスを契約したりといった場面が増えてきます。
当然、支払額も高くなるので、クレジットカードで決済したり、一時的に借金をしたりといった対応を取ることになるでしょう。
「儲かれば借金はすぐに返済できるし、それ以上の利益が得られる」と期待していても、そう簡単にはいきません。
特に、若者を中心に被害が多発しているモノなしマルチでは、うそをついて借金する方法までレクチャーして原資を用意させる手口が横行していますが、金融業者との契約を交わしたのは自分自身なので、マルチ商法業者の責任を問うのは困難です。
借金に借金を重ねてしまっている状況から自力で抜け出すのは容易ではありません。
マルチ商法が原因で過度の借金を抱えている状況なら、消費者問題とあわせて借金問題の解決も期待できる弁護士への相談をおすすめします。
3、誰かに聞いてもらいたい! マルチ商法の被害を相談できる窓口
マルチ商法の被害に遭っているのでアドバイスをもらいたい、返金を求めているが業者が相手にしてくれないなどの悩みがあるなら、これから挙げる相談窓口を積極的に活用しましょう。
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(1)消費者ホットライン
消費者問題の相談窓口としては、国が運営する国民生活センターと自治体が運営する消費生活センターとがあります。
どちらに相談すればよいか迷うかもしれませんが、消費者庁が開設している「消費者ホットライン」に電話をかければ担当者が適切な窓口につないでくれるので、まずは消費者ホットラインを利用するとよいでしょう。
消費者ホットラインの利用は、全国共通の「188」をダイヤルするだけです。
基本的には消費生活センターにつながりますが、消費生活センターが開所していない日などは国民生活センターで相談を受け付けてくれます。
どちらに相談した場合でも、消費者問題に詳しい相談員が問題解決に向けたアドバイスや情報を提供してくれるので、マルチ商法に関する悩みやトラブルも解決に向かうはずです。
また、必要に応じて事業者との間に入り話し合いを進める「あっせん」を受けられることもあるので、心強い味方になってくれるかもしれません。 -
(2)管轄の警察
警察といえば刑事事件の捜査や交通事故の処理などを担当するイメージが強い機関ですが、実はマルチ商法をはじめとした悪徳商法に関する相談も受け付けています。
一般的な解決法の教示やアドバイスにとどまるので「警察から厳しく伝えてお金を取り返してほしい」といった要望には応じてくれませんが、24時間いつでも相談できるという点では便利です。
なお、マルチ商法を装って代金を集めながら商品を送らないなどの被害があれば、詐欺事件として立件される可能性もあります。
「詐欺かもしれない」と感じる面がある場合は、警察に相談するとよいでしょう。 -
(3)消費者問題に詳しい弁護士
マルチ商法の被害を積極的に解決したいと望むなら、消費者問題に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
弁護士に相談して詳しい状況を説明すれば、マルチ商法の業者が正しく連鎖販売取引をおこなっているのか、それとも違法な勧誘やねずみ講まがいの行為がおこなわれているといえるのかの判断が可能です。
退会に向けた業者との交渉や返金請求なども依頼できるので、引き止めや人間関係のしがらみに悩まされることもありません。
自分ひとりでマルチ商法の被害から抜け出そうとすると、引き止めに遭って失敗したり、一方的に不利な条件を受け入れざるを得なかったりします。
確実かつ安全にマルチ商法との縁を切るためにも、弁護士のサポートは欠かせません。
4、クーリングオフすればお金を取り戻せる? 期限を過ぎた場合は?
マルチ商法の業者に対して支払ったお金を取り戻す方法として有効なのが「クーリングオフ」という制度です。
ここではクーリングオフ制度の内容や対象となる取引、クーリングオフができない場合の対処法を解説します。
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(1)クーリングオフとは?
クーリングオフとは、いったんは商品の購入やサービスの利用などの契約を申し込み、契約が結ばれたあとでも、一定期間に限って契約を再考できるという制度です。
条件に合致していれば、消費者側から無条件で申し込みの撤回や契約の解除が認められます。 -
(2)マルチ商法もクーリングオフの対象
クーリングオフは「特定商取引法」という法律に定められている制度です。
この法律は、違法・悪質な勧誘行為などを防止し、消費者の利益を守るために施行されたもので、クーリングオフの対象や条件なども定められています。
マルチ商法は連鎖販売取引に該当するため、クーリングオフの対象です。
契約書面を受け取った日または商品引き渡しが後であれば引渡日から20日間以内に通知すればクーリングオフが認められます。
クーリングオフをする方法には特に定めはありません。
書面で通知する場合は特定記録郵便や内容証明郵便などのように記録が残る方法で送付してください。
電磁的記録によって通知する場合は、マルチ商法の業者のサイトからクーリングオフ用のフォームに必要事項を入力・送信するか、契約書面に記載されている業者のアドレス宛てにメールを送信します。
通知の記録を残すために、フォーム送信前の確認画面のスクリーンショットや送信済みのメールを保存しておきましょう。 -
(3)期限を過ぎてもクーリングオフが認められる可能性がある
マルチ商法の場合、20日間の期限を過ぎても状況次第では契約を解除できる可能性があります。
まず、マルチ商法によくみられる大量の商品を購入してしまった場合です。
生活にあたって通常必要とされる量を著しく超える量の商品を購入する契約は「過量契約」にあたります。
過量契約に該当する場合のクーリングオフの期限は契約締結から1年間なので、20日間を過ぎてもクーリングオフが可能です。
次に、契約書に不備がある場合です。
契約書には、特定商取引法や省令によって定められた事項を必ず明記しなければなりません。
特にクーリングオフについては、契約書のなかで「クーリングオフの効力は通知した日に発生する」「違約金などは請求できない」「支払い済みのお金はすみやかに返還する」といった内容が、8ポイント以上の赤字で記載され、赤枠で囲っていなければならないという決まりがあります。
このような決まりを守っていない契約書は不備となり、不備のない契約書が交付されるまでクーリングオフの期間が進行しないので、20日間を過ぎてもクーリングオフ可能です。
そもそも契約書が交付されていない場合も同じ考え方で、有効な契約書が交付されていないのでクーリングオフの期間の1日目が訪れません。
これらに該当しない場合でも、業者から「クーリングオフはできない」とうそを伝えられていたり、脅されたりといった妨害行為があったなら、期限に関係なくクーリングオフできます。
5、家族や友人がマルチ商法に巻き込まれている! どうすれば解決できる?
マルチ商法の被害に遭うと、家族や友人といった周囲の親しい人を巻き込んでしまいます。
あなたの周囲にマルチ商法に熱中している人がいれば「やめさせたい」と考えるのは当然でしょう。
家族や友人がマルチ商法に巻き込まれている場合の解決法を紹介します。
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(1)未成年の家族が被害に遭った場合
モノなしマルチのように、マルチ商法の被害は若者の間でも広がっています。
18歳未満でも「学生ローンを利用すればよい」と半ば強引に消費者金融へと連れて行かれたうえで契約を強いられるケースもあるようですが、未成年者がおこなった契約は法定代理人である親権者の承諾がなければ無効です。
このようなケースでは、親権者からマルチ商法の業者に対して未成年者契約の取り消しを通知することで返金を受けられます。
各種の窓口で相談してアドバイスを受けたうえで、自力での交渉や解決は難しいと感じたら弁護士にサポートを求めましょう。
なお、令和4年4月の民法改正によって成年年齢が20歳から18歳に引き下げられている点には注意が必要です。
18歳になった後は、親が子どもの代わりに契約の取り消しなどはできませんので、下の(2)と同じように、本人を説得し、いずれかの相談窓口で相談し、クーリングオフなどをすることになります。 -
(2)成年の家族や友人が被害に遭った場合
マルチ商法の被害に遭っているのが成年の家族や友人などであれば、契約の取り消しをできるのは本人だけです。
たとえ本人の承諾があったとしても、家族や友人が代理として業者に契約の取り消しを伝えるのでは相手にしてもらえないでしょう。
成年の家族や友人が「もうかる」と信じ込んでマルチ商法に熱中しているときは、周囲の親しい人が冷静になって説得を尽くす必要があります。
消費生活センターや国民生活センターに寄せられた情報や事例、弁護士のアドバイスなどは、本人を説得するよい材料になるので、まずは各種の窓口で相談してください。
本人が納得して契約の取り消しや返金を希望したり、説得が難しいと感じたりしたときは、弁護士に相談して解決に向けたサポートを受けましょう。
6、まとめ
「マルチ商法」は、人と人との結びつきを悪用して拡大します。
断りづらい、「やめる」の一言がいいにくいなど、人間関係のしがらみにとらわれているうちに大きな金銭被害につながってしまい、さらに人間関係も壊してしまうといった事態に陥るかもしれません。
マルチ商法の被害から抜け出すために大切なのは「誰かに相談する」という心構えです。
日本には「消費者を守るため」の法律が定められているので、消費者問題を解決する法律の知識や経験をもつ相談窓口への相談を急いでください。
とはいえ、マルチ商法の悪徳業者は、法律の定めを盾にしても素直に従ってはくれません。
加盟者を使って契約解除を妨害したり、返金を求めても「クーリングオフの期限を過ぎている」などと拒んだりする可能性があるので、個人での対応は困難です。
契約を解除してマルチ商法の被害から抜け出したい、業者に支払ったお金を取り返したいなどのお悩みがあるなら、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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消費者トラブルへの知見が豊富な消費者問題専門チームの弁護士が問題の解決に取り組みます。
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