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クーリングオフの期限が過ぎたら、あきらめるしかない?
監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)では、クーリングオフの期限が過ぎてしまったら、もう契約を取りやめることはできないのでしょうか。実は、契約書の不備や事業者側の違法行為がある場合には、期限を過ぎてもクーリングオフができるケースがあります。また、クーリングオフが使えない場合でも、特定商取引法や消費者契約法、民法など別の法律を根拠に契約を取り消すことが可能な場合があります。
今回は、クーリングオフの基本ルールや契約ごとの期限、期限が過ぎても契約をやめられる方法、トラブル時に相談すべき窓口について、弁護士が解説します。
1、原則、クーリングオフには条件と期限がある
クーリングオフは、消費者保護のために設けられた強力な制度ですが、万能ではありません。適用できる契約や取引の種類、行使できる期間が法律で明確に定められており、条件を満たさなければ利用することはできません。以下では、クーリングオフの基本ルールや対象となる契約、取引、そして形態ごとの期限や例外的に延長されるケースについて説明します。
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(1)クーリングオフとは? 制度の基本ルール
クーリングオフとは、契約を結んだ後でも一定期間内であれば、理由を問わず契約を解除できる制度のことです。一般的に契約は一度結べば守る必要がありますが、訪問販売や電話勧誘販売などは消費者が冷静な判断をしにくいため、特別に「考え直す時間」が法律で保障されています。
特徴は、理由を問わない、違約金なしで解除できるという点です。消費者が一方的に契約を白紙に戻すことが可能で、原則として、すでに支払ったお金は返還され、受け取った商品も返品すれば済みます。 -
(2)クーリングオフが適用される契約の種類
クーリングオフはすべての契約に適用されるわけではなく、対象となる取引は限定されています。代表的なものは以下のとおりです。
- 訪問販売(キャッチセールス・アポイントメントセールスを含む)
- 電話勧誘販売
- 訪問購入(貴金属や着物の訪問買い取りなど)
- 特定継続的役務提供(エステ、語学教室、学習塾など)
- 連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)
- 業務提供誘引販売取引(内職商法など)
このほか、保険契約や不動産の宅地建物取引業法に基づく契約など、特別法でクーリングオフが認められるケースもあります。
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(3)契約形態ごとのクーリングオフ期限
クーリングオフには必ず期限があり、取引の種類によって日数が異なります。
契約形態 クーリングオフ期限 訪問販売 法定書面を受け取った日を含めて、8日以内 電話勧誘販売 訪問購入 特定継続的役務提供 連鎖販売取引 法定書面を受け取った日を含めて、20日以内 業務提供誘因取引 なお、クーリングオフ期間が開始する日(起算点)は、「契約した日」ではなく「契約書を受け取った日」になります。
また、必要以上に多い大量の物を購入した場合(過量契約といいます)は、クーリングオフの期間は1年間です。
なお、この過量契約の場合には、クーリングオフの期限が過ぎた後でも「契約解除」により契約をなかったことにすることができる場合があります。 -
(4)クーリングオフの期間が延長されるケースとは?
本来は8日や20日といった期限がありますが、事業者が不正な対応をしていた場合には期間が延長されることがあります。
たとえば、- 契約書に必要な事項が書かれていない
- クーリングオフができないと誤解させる説明をされた
- 書面交付や通知の妨害があった
といった場合です。
このように事業者がクーリングオフを妨害した場合には、消費者を守るために、期間は進行せず、クーリングオフの手続きを行うことができます。
2、期限制限がなく、いつでもクーリングオフができる場合もある
クーリングオフには通常8日や20日といった期限がありますが、例外的に、期限が進行しないため、実質的に無期限で権利を行使できるケースもあります。事業者側の対応に不備や違法性がある場合です。
- 契約書が交付されていない場合
- 契約書に必要な記載事項が欠けている場合
- 事業者の連絡先がわからない場合
上記の場合は、クーリングオフ期の期限が制限されません。
ただし、ご自身の契約書を見てどこに不備があるか確認するのは難しいと思いますし、事業者とご自身でやりとりすることに不安を覚えると言う方もいらっしゃるでしょう。
そういった場合は、有料とはなりますが、弁護士にご相談ください。
3、クーリングオフの期限が過ぎても契約を取りやめる方法はある
クーリングオフは、非常に強力な制度ですが、対象外の契約やすでに期限が経過してしまった場合には使えません。しかし、それでも契約を取り消したり解約したりできる方法は残されています。
以下では、クーリングオフ以外に活用できる主な法律上の手段について説明します。
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(1)特定商取引法による取り消し、中途解約
特定商取引法では、事業者が消費者に対して事実と異なる内容を告げて契約させた場合(不実告知)や、威圧的な態度や脅しによって契約を迫った場合(威迫行為)には、クーリングオフができる期間の後も契約を取り消すことができます。
これは、消費者が冷静な判断を妨げられて契約を結んだケースを救済するための規定です。取り消しの場合は、契約がそもそもなかったことになるので、お金が戻ってくる可能性があります。
また、エステ・語学教室・学習塾などの「特定継続的役務提供」では、法律で中途解約が認められており、一定の違約金を支払えば契約期間の途中でも解約が可能です。 -
(2)消費者契約法による取り消し
消費者契約法は、事業者と消費者との間の情報や交渉力の格差を是正するために制定された法律です。
この法律により、事業者が「必ずもうかる」などと断定的に説明したり、「今契約しないと大損する」と過度に不安をあおったりした場合には、消費者は契約を取り消すことができます。クーリングオフのように契約の種類や期限に縛られることはありません。
また、重要な事項について事実と異なる説明がなされた場合や、重要事項が故意に告げられなかった場合も同様です。 -
(3)未成年者による契約の取り消し
民法では、未成年者が親権者の同意を得ずに結んだ契約は、原則として取り消すことができると定められています。これを「未成年者取消権」と呼び、クーリングオフとは異なる仕組みです。
ただし、未成年者が年齢や親の同意を偽って契約した場合には取り消しが認められないこともあります。 -
(4)錯誤・詐欺・強迫・成年後見による取り消し
民法には、クーリングオフや特定商取引法・消費者契約法とは別に、契約の有効性を争う規定が存在します。
また、成年後見制度を利用している人など、判断能力が十分でない状態で結んだ契約は、取り消しを主張できます。
このようにクーリングオフの期限を過ぎても救済を求められる手段は複数あります。契約の状況に応じて、弁護士に相談し適切な主張を検討することが重要です。
4、クーリングオフや契約トラブルはどこに相談するべき?
クーリングオフの期限を過ぎてしまったり、契約の有効性に疑問があったりするときは、自分だけで判断せずに専門機関へ相談することが大切です。トラブルの内容や契約金額、相手方の対応状況によって、適切な相談先は異なります。
以下では代表的な相談窓口である「消費生活センター」「弁護士」「警察」について、それぞれの特徴を紹介します。
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(1)消費生活センター
全国各地に設置されている消費生活センターでは、消費者と事業者との間のトラブルについて無料で相談できます。
クーリングオフの対象になるかどうか、どのように通知を出せばよいかといった実務的なアドバイスを受けられるほか、事業者への連絡やあっせんをしてもらえる場合もあります。比較的少額の契約やまだ初期段階のトラブルであれば、まずは消費生活センターに相談するのが有効です。
なお、「188(いやや)」に電話すれば、最寄りの消費生活センターにつないでもらえます。 -
(2)弁護士
高額な契約や事業者が強硬に支払いを求めてくるケースでは、弁護士への相談が適しています。
弁護士は、特定商取引法や消費者契約法などを根拠に契約を取り消せるかどうかを法的に判断し、事業者への交渉や訴訟対応までお客様の代理人として対応できます。
また、クーリングオフの期限が過ぎている場合でも、詐欺や強迫といった民法上の取消事由を主張するといったことも可能です。
契約金額が大きい場合や、ひとりで事業者とやりとりするのが不安・難しいと感じる場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。 -
(3)警察
事業者が悪質で、詐欺罪や脅迫罪といった刑事事件にあたる可能性がある場合には、警察に相談することも有効な選択肢です。
たとえば「商品を送らないまま代金だけ請求された」「脅されて契約させられた」といったケースでは、消費者トラブルの枠を超えて犯罪行為として取り扱われる可能性があります。
ただし、警察は、民事的な契約の有効性について判断してくれる機関ではありません。契約上の問題解決は、消費生活センターや弁護士に任せつつ、明らかに違法行為がある場合には警察へ相談する、といった使い分けが重要です。
5、まとめ
クーリングオフは、消費者を守るための強力な制度ですが、対象となる契約や期間が限られているため、期限を過ぎてしまうと「もう無理だ」と思い込んでしまう人も少なくありません。
しかし、契約書に不備がある場合や事業者の連絡先が不明な場合は、クーリングオフの期間に制限がなく、後からでも手続きできることがあります。また、特定商取引法や消費者契約法を利用した取り消し、未成年者取消権、詐欺・強迫など民法上の無効・取消事由を主張することによって、救済を受けられるケースもあります。
大切なのは、期限が過ぎても諦めずに適切な相談先を探すことです。困ったときは消費生活センターや弁護士に相談し、最善の方法を検討するようにしてください。
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